樹脂の溶解性 (溶解度パラメーター; SP値)の求め方

目的

有機高分子材料は有機溶剤で膨潤作用 を受けます。之は 有機溶剤が高分子材料の構成内部に浸透して 相互の溶媒和によって 高分子と結 ぶ付き、高分子相互間の凝集力を引き離す事に起因します。

  このため この膨潤効果を最大限に活かすには 有機溶剤と高分子材料の凝集エネルギ−が   近似している事が必要です。

一般に凝集エネルギ密度の評価値としてSP値(Solubility Parameter; 溶解度パラメータ;δ) が適用されます。

このSP値 δ の似たもの同士の溶剤と高分子を使用すれば溶解性の良い塗装ワニスや除去 したい高分子の洗浄などに 有効となります。
  一般に有機溶剤のSP値はすでに求められていて表1に整理されています。


 表1ここから。Paking Land から 引用しました。


1. 高分子材料のSP値(δi) の 算出法

一方高分子材料は多種多様で その分子構造から SP値を独自に計算して求めなければ いけません。 その計算法を 次に示しましょう。 その計算法は最近では 下記の Fedors の計算式が便利です。

  δi = [ Ev / V ] ^(1/2) = [ Δei / Δvi ] ^(1/2)  ・・・・・・・・@

Ev   :   蒸発エネルギ
V   :   モル体積
Δei  :   i 成分の原子 または 原子団の蒸発エネルギ
Δvi : i 成分の原子 または 原子団のモル体積
高分子(δi) と有機溶剤 (δ)が相互に膨潤するにはこれらの混合熱(ΔH)がゼロに近い事が望ましい。  すなわち

ΔH =  K (δi - δ ) ≒ 0  という事は  δi  ≒ δ  である。
そこで  @式を元に 高分子材料のδi を求める。
今  δi = δ1 ( i = 1 )  の 1成分系高分子として 一般的に用いられている エポキシ樹脂 EP1001について 求めて見ましょう。

エポキシ樹脂 EP1001 の 分子構造は次のようです。

之は ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル(ビス系エポキシ樹脂)といいます。



   2.エポキシ樹脂 単独成分のSP値の具体的計算例

まず  Fedorsの提示する、 原子 及び原子団の蒸発エネルギ  Δei と モル体積  Δvi を 表2 に 示します。



ここで  Tg ≧ 25℃ の化合物の主鎖骨格原子数 n によって 以下の定数を加える。
n < 3  の場合には   Δvi に  4 n を加える。
n ≧ 3  の場合には   Δvi に  2 n を加える。
又  25℃以上の温度では δ(T) = δ(25℃)[ 1 + 1.3*α*(T−T1) ]
α ; 体膨張率
T1,T ;絶対温度

それでは Ep1001 の 分子構造を分解して Δei  と  Δvi を求めてみましょう。
  
Δei , Δvi 累積和 (覇i , 牌i ) の具体的な計算結果はこちらに示します。

@式から   δ =  (89940/765 )^(1/2)=10.78665267  が 解答です。