夢想夜
・・・久し振り。珍しいな、お前が出てくるなんて。
前に出てきたのはいつだっけ。忘れちまったよ。
そうか、最近あそこには行ってないもんな。
でも忘れたわけじゃないからな。安心しろ。
また今度、暇が出来たら行ってやるよ。
は?あいつと?
あそこは遠いからなぁ・・・あいつは無理じゃないか?
まぁ・・・できたら、な。期待しないで待ってろ。
なぁ、俺さ。
あ、絶対に笑うなよ。面と向かって言うのは結構恥ずかしいんだからな。
・・・俺、今すげぇ幸せかもしれない。
やっぱさ、ずっとこのままいるわけにはいかないけど。
いつか、離れるか話すかしなきゃいけないんだけど。
幸せ・・・なんだよな。
友達っていうのは、いいものなんだな。
俺がこんなこと言うのは、お前にしてみれば変かもしれないけど。
だから笑うな・・・っ。
ああ、やっぱり言わなきゃ良かった。
・・・・・・いや、お前には言わなきゃいけないよな。
俺は幸せだって、言いたかったんだよ。
俺に言う資格なんて、ないかもしれないけど。
・・・あれからずっと後悔してるんだ。
多分、今が一番後悔してる。
どうして今のようになれなかったんだろうって。
ごめん。気付くのが遅すぎた。
お前の存在がどれほどの救いだったかなんて、あの時の俺は知らなくて。
お前がくれたものを、俺は少しも返してない。
ごめん。ごめんな。
お前にちゃんと向き合えなくて、逃げてばかりで、ごめんな。
あいつを友達だって言えるのも、お前のお陰なんだよな。
繰り返したくなくて、だから俺は今こうしてる・・・。
だけどそれだと、お前が可哀想だ。
誰よりも俺が、可哀想だって、思うんだ。
あ・・・おい・・・何で泣くんだよ?
可哀想って言ったからか?
それともアレか。怒ってるのか?
お前の時は笑わなかったくせに今更俺があいつと笑ってるのを、赦してないのか?
・・・いや、お前はそんな奴じゃないよな。
じゃあ、何でお前が泣くんだよ。
俺は逃げてないし、ちゃんと人と向かい合えるようになってるんだ。
大切な人も出来たし、もう一人じゃないんだ。幸せなんだ。
お前だってそれを望んだんじゃないのか?
お前なら喜んでくれると思ったから、俺は言ったんだぞ?
なぁ、黙ってないで何とか言えよ。
ほら、笑え。お前は泣いてるより笑ってる方がいいんだって。
俺が笑ってるんだぞ?なのにお前が泣いてどうすんだよ。
あの時だって、お前は笑っていたじゃないか。
だから笑えって。
ああもう、本当にお前は厄介だな。
「・・・・・・っ」
朝の日差しが差し込むにはまだ早い時刻、テッドは薄く目を開けた。
久し振りに見た夢は、何故かやけに切なかった。
自分の目に涙が溜まっていることに気付く。
一度瞬きをすると、目尻から一筋の滴が零れた。
本当に泣いていたのはあいつじゃなくて。
「・・・俺か」
はは、と苦笑混じりに呟いて指でそれを拭う。
そして身体を起こして伸びをすると、大きな欠伸を一つだけした。
今日は確か釣りの約束をしていたんだっけ、と思い出す。
こんな些細なことの繰り返しの日常が、何よりもかけがえのないものだと実感する。
右手に目を遣ると、いつものように紋章が浮かび上がっている。
テッドは紋章を眺めながら、複雑そうに顔を顰めた。
彼が泣くのを見たのは二度目だ。
最初の時は、泣きながら、笑っていた。
「そういえば、言えなかったな・・・」
今度会った時には、ちゃんと伝えよう。
ありがとうの言葉を、君に。