※名前変換の『保留』部分に友達の名前を入れてください。
*君じゃなきゃ*
「、次移動教室だよ」
「おっけー」
に言われて、私は荷物を手早くまとめた。
必要なのは筆箱と教科書と、ノート…
一通り確認して、私は教室を出た。
廊下で私を待ってくれていたのところまで走る。
「ごめんごめん、お待たせ!!」
「じゃあ行こうか」
「うん」
一歩、二歩、三歩と生物教室へ向かって歩き始める。
でもその後から先、四歩目を私は踏み出せなかった。
「ちょ、ちょっと!?」
横からにゅっと伸びてきた手は、あろう事か私の腕を掴んだ。
はきょとんとした顔で、私を見つめている。
でも一番驚いたのは私だった。
そしてもう一人、切原の前にいる女の子も驚いているようだ。
「ちょ、きり「なぁ、これでわかってくれた??」
切原の言葉が誰に向けられたのか、私には最初よくわからなかった。
でも状況からして、きっと私でも友達でもない。
だとすると、切原の目の前の女の子に言ったに違いなかった。
みるみるうちに強張っていく女の子の表情からも、それは何となくわかった。
でも私とその女の子に一体何の関係が??
私は何故切原に腕を掴まれて、足止めを食らってるの??
私は助けを求めるようにを見たけど、は切原と女の子を見つめていた。
「私、赤也くんに彼女がいたなんて聞いたことない」
小さく切原の目の前の彼女が呟いた。
私はやっぱり話が呑み込めなかった。
でもここは間違いなく修羅場だ。
だって、彼女の目にうっすらと光るものが見えたから。
だとしたら何、私に仲介人でもしろって??
そうだとしたらいい迷惑だ。
彼女の小さな呟きに、切原は半ば呆れたような態度で返事を始めた。
「当たり前だろ、言ってねぇんだから」
「でも…」
「でも、何??何度言ったらわかるわけ??」
ごくり、と彼女が唾を飲む音が聞こえたような気がした。
切原はそんな彼女にも攻撃的だ。
「さっきから言ってるっしょ??コイツが俺の彼女だって」
「え、「なぁ、??」
私の突っ込みは、切原の言葉によって掻き消された。
確かに、私は切原とそれなりに仲がいい。
でも特別な関係じゃないし、教室で会ったら楽しく喋る程度。
メアドだって知らないから、切原とは学校でしか関わりがない。
それなのに、いきなり彼女に昇進??
しかも何あれ、いきなりあいつ私のこと呼び捨てで呼んだんですけど!!
横を見ると、私のが案の定ぽかんと口を開けてこっちを見ている。
いやいや、これは大きな誤解で!!
そう叫びたい気持ちでいっぱいになって、私は切原を見た。
最初は冗談を言ってるのかと思ったけど、切原の顔は真剣だった。
と同時に、彼女の視線が私に突き刺さる。
これは誤解です!!
この台詞が、どうしてか口から出てこなかった。
「本当…なんですか??」
彼女が私を睨むようにして言う。
ここで私はやっと確信が持てた。
切原は彼女に告白された。
でも断っているのに、なかなか彼女は理解してくれない。
そこに偶然現れたのが、私。
じゃあ何、切原は私に彼女のふりをしろって言うの??
俺を助けてくれ、とでも??
「本当にあなた…赤也くんの彼女なの??」
いえ、違いますけど。
こう言ったら切原は再び彼女に言い寄られるのだろう。
そんなこと、私には関係ないはずだ。
もう一度切原を見た。
今度はフォローを入れようとしてこない。
これ以上先は、私次第ってことですか。
「、待っててくれたのにごめん」
「え??」
「先に生物教室行ってて」
「…??」
戸惑うを横目に、私は言った。
「私切原の彼女ですけど、何か??」
* * *
結局、生物の時間はサボった。
私はと連絡を取り合って、お弁当を食べるために待ち合わせ場所に急いだ。
あれから切原とは、一言も話していない。
切原とはっていうか、切原と二人っきりで話してない。
常に彼女が一緒だったから、私は嘘をつき続けていた。
でも今は切原の本心を聞きたいっていうのが、私の本音だ。
なのにふらりと消えてしまった切原を探す方法が、残念ながら私にはなかった。
「ちょっと、どういうことあれ!!」
待ち合わせ場所に行くと、は怒っているというより楽しそうだった。
「いつから切原くんと??」
「あのさ、聞いて欲しいんだけど」
「でも確かに二人仲よかったもんねー。そうかそうか、そういうことだったのか」
「話聞けって!!」
暴走するに、私は真実を話した。
はその真実にまた驚いていた。
「何それ!?もよくやるねぇ…」
「だって仕方ないじゃん!!切原の顔、真剣だったんだもん」
「真剣だから、何??」
「助けてあげたほうがいいのかなって、思ったの!!」
ふぅん、と意味有り気には私を覗き込む。
そんなに面白いことですか。
そう言いながら卵焼きを口に運ぶ私を無視して、は続けた。
「でも、助けてあげるって信頼関係がないとできないよね」
「信頼??切原と私はそういう関係じゃないよ」
「でも切原くんはそう思ってないんじゃない??」
「やめてよねー、勝手なこと言うの」
「だって、きっと心のどこかではそう…」
は途中まで言って、急に咳払いをした。
今度は私がの顔を覗き込む。
「、どうしたの??」
「、切原くんがお呼びですよ」
改まった声で、が言った。
の視線の先には、切原が立っていた。
(コノヤロウ…!!)
無言のまま切原に着いて行って、もう5分ほどが経つ。
なのに切原は一言も話さなかった。
私も自分から話を切り出していいものか、迷いに迷ってずるずるきてしまった。
この沈黙、痛すぎる。
「嫌だった??」
「へ??」
空を見上げていたら突然切原が話し始めて、私は間抜けな声を出してしまった。
その様子を見て、切原が噴いた。
「人の顔見て噴くとか失礼すぎ!!」
「悪ぃ悪ぃ。だって、口がぽけーっと開いてるんだから」
笑いを抑えようとしていたのか、クククという音が聞こえた。
思っていたより、切原は普通だ。
「で、さっきの続きだけどさ」
「あー、えーっと何だっけ??」
「だから、あんなこと言われて嫌だっかどーか聞いてんの」
悪いのは切原なのに、堂々どしているのがちょっとムカついた。
「困ったよ、そりゃ。人が少なかったのが幸い」
「でも友達には勘違いされた??」
「されたけど、にはちゃんと言っといた」
そこで何故かまた切原が黙り込んだ。
おいおい、そこは会話続けるところだろう!!
私、何か変なこと言った??
「何でさ、嘘吐いてくれたの??」
「何でだろうね。あそこで違いますって言ったら、切原に潰されると思って」
「それ、本気で言ってんの??」
台詞は残酷だけど、切原の声と表情は笑っていた。
「嘘です。なんか、切原困ってるみたいだったから」
「アイツ、ずっと前からあれなんだぜ??ちゃんと断ってるってのに」
「ハイハイ、モテる男は苦労するねー」
どうやら切原は本当に彼女には困っていたようだった。
これに懲りるかわからないけど、少しでも切原の役に立てたのかな。
それも全部は、今後の彼女の行動次第かー…。
「そういうこと言いにきたんじゃねーよ」
「そうだよね。そういうの、いつも教室で散々聞かされてるもん」
「あのなぁ…」
呆れた表情をする切原に、私は軽く笑って見せた。
「俺、あん時嬉しかった」
「私が嘘吐いたとき??」
「そう」
「お役に立てて光栄です」
「そういう意味じゃなくって」
「ん??」
「俺、のこと信じてた」
遠くを見つめながら切原は言った。
何、その台詞。
今すごいぐっときた。
「丁度が見えてさ。だったら、わかってくれそうな気がして」
「嘘吐いてくれそうだって??」
「助けてくれるっていう、自信があった」
切原が真っ直ぐ私の目を見る。
逸らそうとしても、どうにもできない。
「じゃなかったら、俺あんなことしてねぇから」
「助け求めなかったってこと??」
「そ」
今私は、いつも通りに振舞えているだろうか。
うるさいくらいに鳴っている心臓の音が、切原に聞こえてはいないだろうか。
何これ、こういうのが青春??
「だからもさ、俺以外にあぁいうことすんなよ」
いつもならちょっとカチンとくる命令口調。
でもそれが、たまらなく嬉しかった。
あとがき
うわー、青春。いいなぁ、青春。
ささやかなアピールをする赤也と、それに引っかかったさん。
こういうスチュエーションに、管理人弱いんです。(笑