*愛に跪け*
「侑士…今何て?」
「…もう一回言わせるんかいな」
ベッドの上で寝転びながら雑誌を読んでいたが、上半身だけ俺のほうに向けて目をぱちぱちさせている。
俺は溜息をつくことしかできなかった。
平気で言ったように見えるかもしれんけど、これでも結構勇気いったんやで?
「やから…」
「…だから?」
は天井に伸ばした膝から下の足を組みなおして、俺をじっと見つめた。
嗚呼…その動き、絶対俺のこと挑発してるんやろ、わざとやってるんやろ。
それに絶対に俺の言ったことは聞こえていたはずや。
でも俺の言ったことを認めたくなくて、疑っているから俺にこうして確かめているに違いない。
「もう一回言わなあかん?」
「言ってほしい」
の視線からは期待とか喜びとか、そういうものは一切感じられんかった。
俺に注がれている視線からひたすら感じられるんは、軽蔑とか拒否とかそういう類のものでしかない。
それでもその視線を浴びている俺のほうは、それが嬉しくて気持ちいいといった謎の感覚に浸っていた。
今まで我慢していたもんが爆発したというよりは、端っこのほうがプチっと音を立てて千切れてそこからじわっと時間をかけて何かが出てくるような、そんな静かな理性の終わりだった。
「…の足舐めさせてくれへん?」
「…舐めてどうするの?」
もう一度言った言葉には息をのんで、それから当然の如く俺を問い詰めた。
今までそういうようなことはに話したことがない。
そういうことに興味があるとは言わなかったし、は俺のことをただの脚フェチ男と思っとるやろう。
でも実際に俺は、そんなことが頭を支配しているおかしな中学生男子にすぎない。
「どうするとかそういうのはわからんのやけど」
「侑士はそうすることによってどういう気持ちになるの?」
「やったことないからわからんけど、気持ちいいんちゃう?」
「そっち系?」
そっち系ってどういう意味やねん。
まあ多分俺はの言うそっち系の男で間違いないんやろけど。
は少し眉間に皺をよせながら、読んでいた雑誌を手でずらしてベッドに座り込んだ。
俺はベッドの下に座っているから、少しだけの目線が高くなる。
「でも私、侑士の好きなタイプの足ではないよ」
「どういう意味やねん」
「綺麗とか細いとかそういう足じゃないもん」
ほら、とは俺の鼻先に自分の足を突き出した。
思わず触りたくなったけど、きっとここで触ると我慢できんくなるやろうからなんとか踏みとどまる。
こうなるとわかっててがわざと俺に足を突き出しているなら、は相当女王様や。
「形だけが重要なんちゃうやん。俺はの脚可愛くて好きやで」
「はいはい、綺麗な足じゃないですよー」
「そういう意味ちゃうやん。のこと好きやから、の脚も好きやねん」
「…」
「やからの脚がいい」
はゆっくりと脚を戻して、自分で自分の脚を見つめていた。
の脚は太くも細くもないけど、すべすべで可愛らしい形をしていて、それだけで俺の興奮材料になった。
ずっとしていた我慢をどうにかするため、俺はに食い下がる。
「あかん?」
「だめって言うんじゃないんだけど、イマイチ私には理解できないっていうか…」
「理解してくれんてもええよ」
「今回だけでもいい?」
「構わへん」
欲を言うなら今回だけなんて言って欲しくない。
でもそれでもいいと言ってしまうくらい、今の俺は気持ち的に切羽詰っていた。
冷静でいられる間に、なんとかしてほしい。
犬に成り下がった後では俺は俺でいられへんような気がする。
「…じゃあ、今回だけね」
「おおきに」
はベッドのふちに寄ってきて脚をぶらさげるようにして座った。
俺はに嫌われたくない一心でに抱きついた。
を困らせているという罪悪感があるのか、口から出たのは謝罪の言葉と愛しているという鎖の言葉。
こんな言葉だけでの心を繋ぎとめておけるなら、俺は一日に何百回でも愛してると呟くやろう。
俺はの前に王子様のような形で座った。
そのままに微笑みかけて手の甲にキスすると、がはにかんだ。
こういう初々しい反応を見せてくれることろが可愛くてたまらない。
「今からお姫様の足を舐めるわけだね」
「お姫様じゃなくて女王様かもしれんけどな」
「えー…」
そういうのは好きじゃないと言って、は俺に脚を差し出した。
自分の太ももの上に脚を乗せてから、優しく脚を撫でる。
「タイツ履いたままだけどいいの?」
「最初は履いたままでええで」
黒いタイツを履いたの脚は、光沢があってもちろんさわり心地もすべすべとしていた。
俺は両手でのかかとと土踏まずの辺りを支えて、とうとう新境地に達した。
ゆっくりと指を口の中に含んでいく。
上目遣いでを見ると、思っていたよりも温かな目で心配するようにこっちを見ていた。
見下してくれたほうが興奮したかもしれんけど、これはこれでらしいからいいかもしれん。
「ん…はぁ…、どない?」
「んー…」
俺はこれだけでもかなり興奮してるけど、は時々くすぐったそうな声を上げただけだった。
感想を聞いてみても首を捻るばかりで、ここに性感帯がないのか女王様の素質がないのか、どちらにせよ本題はまだまだこれからだし前向きになろうと思う。
「ほなタイツ脱がすわ」
「…うん」
に立ってもらって、タイツを脱がすことにした。
タイツを脱がす間は俺の首に抱きつきながら、じっとしていた。
タイツを脱がし終わって再びさっきみたいな形でお互い向き合い、座る。
触れたの足先はやっぱり冷たかった。
この状態で上目遣いすると普通にのショーツもばっちり見えて、普段の俺やったらそれだけで上機嫌になるところやろう。
でも今日は何も思わないというか、俺の自身は反応しなかった。
「…パンツじろじろ見ないでよ」
「あ、バレとった?」
は口をとがらせた後、脚を組んでから俺に突き出した。
結果オーライとはこういうことを言うんやと思った。
「…ほな」
「…」
布がないせいか部屋にはくちゅくちゅと唾液の音が響いて、さっきよりもずっと卑猥な感じになった。
俺はの脚を丹念に舐めたり、指は口に含んでみたり甘噛みしてみたり、とにかく自分のしたいようにした。
「んんっ…ん…」
「侑士の声、エロい」
「いつもエロいやろ」
「いつも以上にエロいよ」
「には負けるわ」
を見てみると、会話のせいなのか脚を舐められているせいなのか耳まで真っ赤になっていた。
ちょっと潤目なところは女王様っぽくないけど、これもこれでアリやな。
「は気持ちよくないん?」
「よくわかんない…」
「声だしてええで」
「…うん」
はぁとが大きく息を吐き出した。
それは溜息ではなく甘さを含んだ吐息で、それを聞いて俺の興奮度がまた上がる。
「んっ…」
「はぁ…可愛いなあ、ほんまに」
「…ばか」
が俺の手から脚を引っ込めた。
思わずあ、という声が口から漏れる。
は一瞬冷ややかな視線を俺に向けたあと、先ほど舐めていたのとは逆の脚を俺に突き出してきた。
今度はこっちの脚をと思って手を伸ばす。
「違う」
「ん?」
はその脚をそのまま俺の股間へと伸ばして、勃起している俺の自身の先端を軽くかすめた。
心臓の鼓動が早くなるのを感じたのと、あまりのことに驚いて俺は立ち上がりそうになる。
「立っちゃだめ」
「え、ちょ、?」
「私の脚舐めて感じてるんだね、侑士の変態」
かすめただけだった脚に今度は力が入れられて、俺の自身が一瞬擦られた。
それからは器用に指や土踏まずのあたりを使って、俺の自身を責める。
「気持ちいい?」
「ちょ…、んッ…、ってこういうキャラやっけ…?」
「違うよ、こんなことしたの初めて」
言ってからは可愛いけどいつもより冷たい笑顔で笑った。
ほんまに才能あるんちゃうんか?
それから快楽に何度も襲われ、なんどもイキそうになるのを抑えた。
このままやったらあかんと、俺は少し姿勢を崩してのショーツに手を伸ばした。
予想外のことに驚いたは一瞬脚を引っ込める。
ショーツの上を撫でるとじんわり湿っていて、それが嬉しくなった俺は何度かそこを撫でたあとに直接秘部を触った。
「俺も相当キテるけど、もヤバいやん」
「やっ…!ちょっ、んッ!」
「いつもちゃんと濡れるけど、今めっちゃぐちょぐちょやで?」
「ん…あッ…」
「俺だけ気持ちよくなるんもずるいしな」
とは言え、脚舐めてたときからずっと俺こんなやし相当ヤバいんやけど。
最初は秘部に指を一本入れて中をかき回して、の好きなところを突いた。
負けず嫌いなは快楽に溺れるだけじゃなく、ちゃんと脚を使って俺を責めることも忘れなかった。
次にもう一本入れて何度も出し入れしているとの中がヒクつき始めた。
でもその頃にはが立派な足コキを覚えていて、ぎこちなく強弱がつけられるそれに俺自身限界が近づいていたようで、終に俺は本日の中に一回も入れることなく、欲を吐き出した。
気だるくなりながらも俺はにキスして、そのままの秘部を責め続けた。
すぐにも指を締め付けながらイって、俺たちはベッドに倒れこんだ。
「すごいね侑士、足だけでイケちゃうんだね」
「まさか自分でも脚だけでイケるとは思わんかったわ」
「変態だもんねー」
「よう言うわ。俺のちんこ脚でいじってアソコびしょびしょにしてたんどこの誰やねん」
「うーわー!」
俺らいろいろと相性いいやんと言うと、にすごい引いた目で見られた。
さっきまであんなに楽しそうにしてたんは同じやん…。
またしようなと言うと、はくるりと反対方向を向いてしまった。
照れ隠しの肯定ということでいいんやんな?
あとがき
Mな忍足とSなヒロイン!
2011.11.26