*清く、正しく*



白石がの家に遊びに来るのはこれが初めてではない。

もう何度も家に来ているし、家の中でしかできないようなことも、家ですることをためらうようなことも既に終わらせている。

白石はそれはもう、の家族にバレてはいけないようなことをごまかすのが上手かった。

それはタイミングであったり単なる工夫であったり、時々白石に自分の家族の行動が全て見透かされているのではないかと思うくらい、完璧な無駄のないごまかし方だった。



「なぁ」

「ん?」


二人して顔を寄せ合いながら雑誌を見ているだけでも、彼らの間では幸せに満ちる時間へと変換される。

けれどそんな時間は長く続いたり続かなかったり、簡単に言ってしまえばそんなものはその場の雰囲気なんかでどうにでもなってしまうのだ。

よりも大きな身体の白石がにすり寄るように近付き、甘ったるい声で囁く。

イケメンだとかテニスが上手いだとか勉強ができるだとか、そんなことはの前には一切関係なく、そうなった白石はただの男子中学生だった。

白石がそうなる意味を知っているは返事を返しつつもごくごく自然に、白石との間に距離をとる。



「なんで逃げるん?」

「にげてなっ」


最後まで話すことは許されなかった。

は白石が軽く押しただけで後ろに転げ、着地した顔の周りにはご自慢のぬいぐるみの山がある。

座っているのとも寝転んでいるのとも違うおかしな角度を保ちながらは転がされていて、余裕なんて少しもない彼女とは逆に白石の表情にはたっぷりと余裕の色が表れていた。

イケメンは何したって許されると思っているのかと感じながらも、は白石を落ち着かせるべく体身体を起こそうと必死だ。

けれどそんな彼女の姿を白石が優しく見守っているなんてことは0%に近いことで、実際に両肩を押されたはあっけなくぬいぐるみの山に再び突っ込むはめになった。



「嘘つきやなぁ、今やって逃げようとしたやんか」

「そ、そんなことない!」

「なぁ、


駄目だ駄目だ、このままじゃまたいつもみたいに流される。

白石のことが嫌いだとかそういうことは一切ない、むしろ白石と付き合っていてキスしてセックスまでする仲だということは女としてとても名誉なことだと思わずにはいられなかった。

だからと言っていつどんなときでも「はい、どうぞ」と自分を差し出せるほどは余裕のある人間ではない。

理性を失うほど動物的でも情熱的でもない、どこかで冷静な自分と常に見つめあっていた。

けれどそんなの思いは彼に通じることはなく、迷いも拒絶も許さない鋭くも優しい視線で彼女を見つめながら白石は呟く。



「なぁ、シたい」

「こ、この前やってシたばっかりやんか」

「それはこの前の話やろ?」


この前の話だからなんだって言うんだ。

そう言ったところできっとまた反論の難しい返事をされるに決まっている。

でも、とくぐもった声を出すを無視して白石はどんどん彼女に接近して行った。

親が家にいるとかいないとかそんなことは関係ない、毎回間近で白石の顔を見るのは心臓がもたないのではないだろうか。

キスされる前に急いで息を吸った。








寝転がされているのとは違う、おかしな体勢でと白石は向き合っている。

曲げられた両足がマットレスにつくことはなく、お尻と腰のあたりで身体を支えていた。

足を閉じようと試みるもののそれは白石の大きな手によって阻止され、下着が丸見えの状態でこれでは「見てください」と言っているようだと気付くと彼女は恥ずかしくなり、どんどん顔が熱くなっていくのを感じていた。

白石も白石でそんな体勢が新鮮だったのか単に可愛らしいと感じたのか、少し眉を下げながらの頭を撫でる。



「こんなん、嫌や」

「なんで?」


振り絞った一言は首を傾げながら質問してくる白石に太刀打ちできる言葉ではなくて、わかっているくせにと唇を噛んだ。

まだキス1回しかしていないのに、下半身の不快感と言うか違和感というか、そういったものを感じ始めていて彼女はもっと恥ずかしくなる。

今はこうして優しく頭を撫でている白石だけど、そのうちにこんな優しいスキンシップも終わって、白石が男になる。

手元のシーツを握りしめながら数日前の行為を思い出して、再び心臓が高鳴るのを感じた。



「うわ、すごっ」

「!?」

「何で嫌やとか言うん?もう邪魔やからこれ脱がすで」


頭の中の白石とは違って、こっちの白石は黙々と準備を進めていた。

長くて細い指が布越しに秘部に触れて、優しくいったりきたりを繰り返した。

白石が感想を漏らしたようにすぐに下着が液体を吸って、みるみるうちに下着の色が変化する。

「邪魔」だなんて言葉とは逆に優しく下着を脱がし、今度は直接指を滑らせた。



「んっ…」

「こうやって触っとるだけやのに、すごいんやけど」

「ぁああ、ゃんっ、ちょっ」

「指欲しいん?」


返事も聞かずに白石は指を入れ始める。

ゆっくりと侵入してくる指をはすんなりと受け入れて、尚且つきゅっと締め付けた。



「あっ、ゆ、びっ」

「そやで、俺の指や」

「んっ、あ、あぁっ、やぁああ」


指を入れられたと思ったらそのまま中の壁を引っかかれて、面白いくらいに声が漏れだした。

指を折り曲げてひっかけるようにしながら擦られたり、小刻みに動かされたり、どうしてこうこんなところまでも無駄のない、完璧なルートで快楽まで招待できるんだろうか。

反対の手で突起の部分をつままれて、は抑えながらもひときわ大きな声をあげた。

腰だって動くし下半身に力が入っているのか先ほどよりも中が指に吸い付いている気もする。

恥ずかしい嫌だ、そう思っていても身体は正直で自分ではどうもコントロールができない。

白石が指を引き抜いて再び顔を近づけてきた。

は目を閉じて受け入れると同時に、白石の身に着けていた服が秘部の入り口を擦る。



「んくっ!」

「?」


白石は意味がわからなくて唇を離し、何があったのかとを見た。

彼女はキスの邪魔をしてしまったことを謝りながらも、なんとか何が起こったのかを説明する。



「蔵ノ介くんの服が、ね、擦れて…」

「なんやそやったんか。びっくりしたわ」

「ごめん、ね」

「で、気持ちよかったん?」


思わぬ質問には懸命に首を振り、ちゃうもんと言い訳をしようとする。

白石はその場に似合わない爽やかな笑みで笑ったけど、は同じように笑う気持ちには到底なれなかった。

直後に白石が体勢を低くしながら再び秘部に触れてきたので、もう嫌な予感しかしない。



「指だけやったらもう満足できん?」

「そんなことない…」


白石が話す度に入り口に熱い息がかかって、それだけで声が漏れそうになった。

それを必死に我慢しながら首を振って、白石をそこからなんとかどかそうとする。

この体勢では自分が何をされているかも丸見えで、こんな体勢のままこの後何が起こるかなんては考えたくなかった。

けれどそんな思いは彼に届くことはなく、足の間に入っていく白石の頭を押すことしかもうできない。



「っあああ、ちょっ、あか、んっ」

「ザラザラしとって、気持ちええやろ?」

「はっ、あぁぁあ、もぉ…やっ」


ぐいぐい頭を押しても少しも動いちゃくれない。

舌で突かれたと思えばその後表面全体をぐりぐりと押し付けてみたり、それだけでも気持ちいいのに吸われたりもする。

いつもなら天井を見ているのに今は目の前に白石の頭があって、何をしているかまでわかってしまうから余計に込み上げてくるものがあった。

快楽と羞恥心、その二つに勝つことができずは涙を流す。

これだけでも消耗しているのに遂に白石がベルトを外し始めて、これはもうやる気なんだと思う他ない。



「やっぱいつもと違うと興奮するん?」

「…聞かんといてよ」

「すまんすまん。でも俺やって同じやで」


キスをされると同時に下半身がくっついた。

白石はまだ中に入れないように、細心の注意を払いながら、でも確実にその部分を擦るように身体を抱き寄せる。

の秘部が吸い付くように白石のものを包み込んで、白石はすぐにでも入れたくなった。

でももう少し、このままでいたい。



「あ、あぁぁっ、う」

「んっ…」


まだ入り口にいるだけなのにじれったいのか、が声を出す。

白石は小さく声を漏らしながら自分のものを掴み、更に強く入り口に押し当てた。



「ゃあっ、ん、あぁっ」

「もうそろそろ、やな」


ゆっくり入れるということはしなかった。

そのまま一気に奥へ奥へと突き進める。

ひときわ大きな声と同時にの腰が浮いて、同時にきゅうきゅうと中を締め付けた。

白石は全て入りきってからにキスして、おでこをくっつける。



「も、くらのすけくんの、いじ、わるっ」

「そないなこと言うたかて、しゃあないやろ」

「ああぁあ…、だめっ、動いた、ら、いややっ」


一番奥を押し付けるようにして回すと、身体が震えた。

出し入れは繰り返しながら、白石はの服をまくり上げて下着も一緒に押し上げる。

包み込むようにして膨らみを揉むと中が一層キツくなって、白石が声を漏らした。



「ちょお前に、ヤった、とこやったけど」

「んっ、なぁに…?あ、うっ、…あっ」

「これ、ほんまっ、中毒…やな」


耳にキスしながら言うと、の身体が跳ねる。

その様子が可愛いかったらしく白石はキスした耳を甘噛みして、揉んでいた胸の突起を摘まんだ。

白石にも余裕はないけれどほどではない。

は白石の背中にがっちりと腕を回してしがみつくように、快楽に耐えていた。

そんなことすらできなくしてやろうと白石は自分のものを引き抜くと、そこからまた一気に中へと突き刺した。



「あぁああぁっ、らめ、くら、の…くんっ、あぁっ」

「やっば…あ、っく」

「う、あぁあ、やぁ!あぁああっ、ぉくっ、ら、めぇ」

「これ、好き?きもちえ、え?」

「これちゃ、あぁあっ…ちゃうっ、すき、なんは…くら、のすけくん、やもんっ」


こんなことを言われてどうしたらいいんだろうか。

シーツを掴みながら、涙目で訴えた彼女に白石は何も言えず、無言のままに口を塞ぐ。

一気に余裕がなくなってしまって、気持ちいいやら嬉しいやらで気持ちが高揚する。

嗚呼、もう、この子は本当に、どうしようもない子だ。























あとがき

正直に白石視点で書けばよかった。
ちょっと白石S…?


2012.04.29