*王様の仰せのままに 8.5*



最初はビビリにビビリきっていたものの、持田さんは案外優しかった。
連れて行ってくれたのはおしゃれなお店で料理もとても美味しかったし、何より一緒に食べた相手が持田さんだったから余計に楽しかったのかもしれない。
沈黙が続くかと思いきやそれも車に乗っていた数分の話で、その後は何かしら話していた。
途中非常にマズい展開になるかとヒヤヒヤした場面もあったけれど現在持田さんには彼女がいないらしく、そういうことは気にしないでいいと言われてしまうし、車をボコボコにされようと気にしないとか言い出すし、人は見かけとオーラと雰囲気で判断しちゃいけないな!と思わずにはいられない。

俺と一緒にご飯食べたって言ったら彼氏焼きもちやくだろ!って言われたときは思わず私も噴出しそうになった。
多分次元が違いすぎて普通の男は焼きもちどころかテンションあがっちゃうと思うけど、持田さんがナチュラルに自慢気だったからそこには触れないでおく。
話の流れと勢いで年齢=彼氏いない歴だということを暴露してしまって持田さんは確実に引いていたのにそれすらも引いてないの一点張りで、なんだかんだで可愛い人だと思った。


帰りは私の緊張がほぼゼロになってしまったせいか爆睡、持田さんを大いに困らせた。
目が覚めたら車がクラブハウスに停めてあって、横には気だるげにスマホをいじってる持田さんの姿、車のかわりにボコボコにされるかなと覚悟を決める。
恐る恐る声をかけたら「寝たら家わかんないじゃん!全然起きないしさー寝るなら家の場所教えてからにしなよ」って謎の機嫌のよさでデコピンをお見舞いされ、結局クラブハウスから自宅まで送ってもらってしまった。
その上何かあったときに連絡したいからと連絡先を聞かれ、私はサッカー日本代表選手の番号とアドレスをゲットするという奇跡まで起こす。
意味の分からないところで私の貴重な男運を使ってしまった気がした。
連絡先を知ってしまったからにはお礼が必須になるわけで、超定型文でご馳走様でした美味しかったですとメールをする。
すると光の速さで持田さんから着信があって、ビビりすぎて携帯を思い切り投げ飛ばしてしまった。心臓に悪すぎる。


「も、もしもし?」
『もしもしー?なんですぐ出ないの』
「え、あ、いや、ちょっと」


電話に出た持田さんはやたら連絡を取りたがる彼女みたいな反応を返してきて、なんだこの人と思わずにはいられなかった。


『まあいいや、さんご飯作るの得意?』
「料理ですか?」
『そうだよー料理、ねーどうなの?』
「普通だと思います。まずくもないし美味しくもないです多分。レパートリーはないですけどレシピみたら作れるんじゃないでしょうか」
『ふーん、わかった。じゃあおやす』

ブチッ ツーツーツー

おやすみの「み」の途中なのに電話は一方的に切られてしまう。せっかちさんですか。
唖然としながらただただ携帯を見つめているとまた携帯が光って、今度はメールを受信し始めた。
これはまさかもしかして……

受信メールを確認するとやはり「持田蓮」の名前。
メールで電話をサンドイッチってどういうことですか!現代っ子か!
イジメを疑いつつも今度は何の用だと受信したメールを開いてみる。


『こんどいつひま?』


さっきの電話で聞いてください!!!!!
















2016/08/27