奈良の見ブツ記(2007.8.7 晴れ時々曇り)

00 : 序

前回、法隆寺で金堂西ノ間の天蓋と四天王像のうち多聞天が奈良博に出張しているという話を聞きつけたプロ学会は、 早速奈良博に行こうと企画したのですが、なんとそれが博物館の休館日(月曜)に当たってしまい、泣く泣く奈良を後にしたのでした。 そして今回、そのリベンジのため、プロ学会+最年少会員(青垣の娘)は再び残暑厳しい奈良へと繰り出しました。

当初企画されていたのは博物館と西大寺、そこから秋篠寺に足を伸ばそうという濃い目のプランだったのですが、 日付の変更や子連れの旅になったこと、更にあまりの暑さにそれは無理だろうという話になり、 結局、たまたま御開帳期間(8月1日〜17日)にぶつかった五劫院と奈良博だけ、という実にシンプルなプランに変貌していました。

11時前に奈良に到着した学会一行は、その足でもちいどの商店街に向かい、すっかり行き付けとなった「Be-Buddha」様にお邪魔し、 いきなり衝動買い&セミオーダー。その後、ひがしむき商店街内でとんかつを食べ、ようやく最初の目的地・五劫院を目指して出発したのでした。

01 : 五劫院 〜アフロですが、何か?

さて五劫院と言えば、かの有名な「五劫思惟阿弥陀」がいらっしゃるお寺です。非常に作例の少ない仏像で、 「長いこと考えてるうちに髪の毛が伸び放題になっちゃった〜」というファンキーな仏像には、かねてより会いたいと思っていたので、 特別開帳を知った時にはかなり嬉しかったです。それにしても、全国に16体しかいらっしゃらないというのに、 この五劫院と東大寺の勧進所という実に近い場所に2体もいらっしゃるなんて、奈良ってすごいなぁと改めて思った次第であります。

近鉄奈良駅前から青山住宅行きバスに乗り、およそ5分。バス停今在家で下車し、そこから少し戻った道を西へずんずん進めば 五劫院が見えてきます。住宅街なんですが、古いおうちが多くて実に閑静です。
そんないい雰囲気の住宅街に連なって、五劫院はたたずんでいました。 門前の掲示板にご本尊の写真が飾られていました。そして、俳優の榎木孝明氏が来訪されたという記事も貼られていました。 見仏の趣味があるんでしょうか、榎木さん。

本堂は結構にぎわっていて、なにやら和やかな雰囲気が。 どうやら本気の人…つまり、檀家さんとかそんな感じ…が訪れてらっしゃったようでした。 その中へ堂々と入ってゆく大人2人に幼児1人はさぞ異様だったと思うのですが、 檀家さんのために設えられた受付に座っていたお姉さんはにこやかに「拝観ですか」と迎えてくださいました。 しかも、何故か拝観料は取られませんでした。…観光寺院ではない、ということなんですかね…! こんな珍しいブツを無料で一般人にも見せてくれるなんてこれぞまさしく仏の功徳!!我々はありがたくご本尊の正面に陣取ったのでした。

早速鐘に興味を示してカンカン叩きまくる娘にとりあえず合掌をさせて、我々はじっくりとアフロ仏の見仏に取り掛かりました。
新しく修繕されたらしいお堂の中の、光り輝く装飾具群に比べて、実に簡素なお厨子の中に、そのファンキーなブツはおわしました。 頭はもっさり、顔もぽっちゃり、いわゆる如来の持つ、超越した者としてのオーラというか、緊張感というか、厳しさというか、 そういうものが一切感じられない、実に癒し系なブツでいらっしゃいました…! 言うなれば、やわらかな大福もちをさえ連想させるそのぽっちゃり感に、私は少々驚いていました。 なぜなら、失礼ながら彼を見た瞬間、絶対爆笑するに違いないと思っていたからです。
しかし、ブツ世界では異色なはずのアフロ仏からはその異色さが一切感じられないのです。実にかわいらしいのです!! さもアフロであることが当然のように、自然(じねん)のままそこに座ってらっしゃるのです。 ああ、癒される…!!
是非、この癒し系アフロ仏をモチーフにした大福もちを開発していただきたいと心から思いました。

あと、このアフロさまを主尊にして「癒し三尊」を(勝手に)作り上げたいのですが、脇侍が1人決まりません。 (1人は、法隆寺の夢違観音に決定しています)どこかに癒し系の観音はいませんでしょうか。 お心当たりのある方は、是非お申し出下さい(爆)。
すっかりアフロ仏のファンになってしまったので、できれば東大寺勧進所におわす方にも会いたいと思います。 こちらは年に1度、10月5日のみ衆生に公開される秘蔵っ子らしいので、忘れないようにしなければ。

02 : 奈良国立博物館本館 〜やはり法隆寺はイイ!

帰りもやはりバスに乗り、押上町というバス停で下車し、そこから徒歩で博物館に向かいました。
余談ですが、地下道に北西角の入口から入ったのですが、階段中央のスロープがすごく狭い上に結構急で、 ベビーカーの幅ギリギリで実に怖かったです;自転車用のスロープだから仕方ないんですが、 もしベビーカーで行かれる方は気をつけて下さい。

それにしても本当に暑かったです。そこから博物館へのわずかな距離でさえ汗だくになりましたから。 鹿もほとんど姿を見かけませんでした。ヤツらはどこで涼を取っているのだろうと思いながら、 まずは博物館の無料コーナーに入りました。
そこでしばらく暑さを凌ぎ、更に新しいブツグッズは出ていないかとミュージアムショップで物色。 結構イケてるグッズも増えてきてるみたいでした。透かし彫り調のしおり(正倉院柄と仏像柄アリ)が結構手が込んでていいなと思ったんですが、 しおりって実際そんなに使わないので結局買わず。 定番になるつつある「元気がでる仏像」シリーズのボールペンをお土産に仕入れたのでした。


そこから地上へ上がるのに、悪いなと思いつつも身障者用エレベータを使わせていただきました…すいません; ベビーカーだからって甘えるなと叱られそうですが、どうぞ見逃してください;
窓口でチケットを求めると、「お子さんと一緒に来てくださっているので、割引になります」といわれました。 これは予想してなかったので嬉しかったです!親子割引は500円→400円(平常展のみ)になりますので、是非お子さんと一緒に 博物館へ行きましょう!!
新館側の入口から入場すると、真正面に多聞天が!!
しかし順路は左手へと延びていましたので、とりあえずそれに従うことにしました。

ガンダーラ仏とか、等身のおかしいブツとか(手が大きすぎたり足が大きすぎたりする仏像)がずらりと並ぶまさにここはブツゾーンなんですが、 なんか雑多だなという気がしないでもありません。
特筆すべきは1体、襟を立てたカッコイイ地蔵がいたのです。
襟の立ち具合から冬を連想したのですが、胸元は何故かはだけていて、この地蔵が一体何を意図して造られたのか是非知りたいと思いました。 (地蔵じゃなくて、誰か聖人の像のようでしたが、「もしかしたら地蔵かも」とも書いてあったので、ここでは地蔵ということで。)
あと、途中で中国青銅器ばかりを展示した部屋へ抜けられるのですが、そこへ入った途端、娘が「ブツいないねぇ!」と言ったので思わず笑ってしまいました;

さて、中央の間に戻り、心待ちにしていた法隆寺金堂西ノ間の天蓋とご対面をすることにしました。
我々の目線より少し上、でもいつもよりはかなり低い位置に天蓋は飾られていました。ぱっと見は実に地味です。何しろ全部木で出来ており、 透かし彫り等の技巧もさして施されておらず、飾りと言えばプリティな天人たちと鳳凰くらい…でもそれもやっぱり木で出来ていて、 実にシンプルなイメージを受けました。でも、よく見れば実に精巧に作られています。特に、フリルの部分。 仏像の衣紋と同じく、規則正しくリズミカルに並んでいます。
天蓋の中を覗けば、お寺の格天井と同じく蓮などの天井画が施されているのが確認できます。この下にもぐりこんで阿弥陀ポーズで写真を撮りたいと どれだけ思ったことか!!
ボランティアガイドの方の話によると、天蓋の裾にずらりと垂れている飾りの部分のうち、 木のビーズのつなぎ目の玉の硝子と、一番先に下がっている魚の形をした飾りが金属、それから、それらの飾りと天蓋の裾を繋ぐのに針金が使われているだけで、 あとは全て木でできている、とのことでした。 復元予想図も見せていただきましたが、赤や緑…青丹を中心とした色使いで、緻密な模様が描かれていたようです。 当時はさぞ華やかだったのでしょうねぇ…是非タイムスリップしてみたい。

続いて中央の間に戻り、多聞天をじいっと眺めていると、またもボランティアガイドの方のお話を聞くことができました。 多聞天の乗っている邪鬼は実は女性だということ(おっぱいがあるんですよ!)、また、彼女は踏まれているのではなく、 多聞天を乗せてあげているのだということ(ちゃんと背中にクロスが掛かっている)、 百済観音等に代表される飛鳥仏はスリムなのに、この多聞天は意外と肉付きがいいということなど、 色んな話をしてくださいました。
多聞天は、法隆寺では金堂に入ってすぐ目の前にいるんですが、実に見づらい位置でもあります。 なので、彼を見上げるという位置も新鮮でしたし、何より背面まで見られるなんて、やはり博物館に展示される仏像というのも なかなかいいものだなと感じました。お寺じゃ後ろまでは見られませんし。 (ちなみに後背が頭に刺さってました…なにかのまじない?!(←梅原説))
この多聞天も、ぱっと見は本当にシンプルで手が込んでいないように思っていたのですが、やっぱり緻密なんです。 冠の細工も見事ですが、やはり衣装。なんでここだけこんなに、と思うくらい、天蓋同様フリルの表現が素晴らしいのです。 シンプルだけど緻密――飛鳥仏ってステキ。何よりこんなブツをたくさん抱えている法隆寺ってもっとステキ。 プロ学会は改めて法隆寺への愛を確認したのでした。

03: 終幕 〜夕方ににぎわうカフェ

博物館を後にする頃には、曇っていたせいか気温も少々落ち着いたようで、鹿の姿がここかしこに見られるようになってました。
そこからもちいどの商店街へ赴いて注文の品を受け取った後、お茶をすべくひがしむき商店街にある カフェに入ったのでした。
そこがまた意外とにぎわっていてびっくり。既に4時を回っており、ティータイムという時間ではないはずなのに、 老いも若いも集っているのです、そのカフェに。なかなか不思議な光景でした。
そこで「美肌パフェ」なるものを注文してみました。ヒアルロン酸やらカルシウムやらコエンザイムQ10とやらが 摂取できるパフェで、ベリー系の酸味の強いアイス(シャーベット?の割には結構粘りがありましたが)にヨーグルト、 アロエにナタデココに…というところまではなかなか美味しくいただけたのですが、 一番下に入っていたシリアル(かなりの確率で「フルーツグラノーラ」だと思われる)が結構曲者でした…量が多いんです; 2人して途中でギブアップしました。もう少々量を減らしていただければありがたいなぁ。

いやはやしかし…夏の奈良は暑かったです。
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