近鉄奈良駅からバスに乗り込み、般若寺停留所で下りてから「般若寺」の看板を見ながら住宅街を歩くことしばし。
般若寺の門が見えてきます。が、この門からは週末しか入れないそうで、「入口は50m先」になっていました。
この門前に牧場があって、カフェが併設してありました。お昼はここでもいいね、などと言いつつ寺域内に入ると、
途端に砂利だらけになってベビーカーが進まない。まあ、これは宿命なんで仕方ないんですが…。
受付でベビーカーをどこかに置いてもいいかと尋ねると、近くの柵の後ろにどうぞとおっしゃってくださいました。ありがたや。
で、娘をベビーカーからおろしているうちに、観光バスに乗った団体さんが到着され、境内は一気に賑やかになったのでした。
コスモスは今を盛りと咲き誇っていて、立ち並ぶ石仏を華やかに彩っていました。石仏にはそこまで興味ないんですが(失礼)、
こうして見ると赴き深いものだなと思えるから不思議です。
コスモスの回廊を進み、「顔出しパネル」で写真なんかを撮りつつ本堂へ向かったのですが、団体さんでごった返してて見ブツどころじゃない。
一応上がりこんで順番を待ってみたんですが、団体さんは檀家さんの集まりなのか、般若心経の合唱が聞こえてくるではありませんか。
こりゃー長くなるなと思ってたら、なんとその中に、子供の声が混じっている。しかも完璧に般若心経を暗誦している!!
たまりかねてこっそり覗いていたら、小学校にも満たないような男の子が、おばちゃんの間に混じって手をあわせ、お経を唱えている姿が。
門前の小僧とでも申しましょうか、あの年で般若心経をマスターしているとは脱帽です、完敗です。あれぞまさしく仏童。
このまま順調に育っていただきたいものです。
檀家さんの集団だとしたら、多分お坊さんのお説教もあるだろうから、先に境内をもう少し探索(散策ではない)しようということになり、
再びコスモス畑へと紛れ込みました。
十三重塔が青空に向かって高く聳えていて、やはりお寺はいいなと思わずにはいられませんでした。そのままお堂の裏手に向かうと、
なんとも美しい釈迦如来が座しておられました。まだ新しい像なのかもしれません。白い石が太陽を反射して眩しいくらいです。
娘に合掌を促すと、見事なまでに深々とお辞儀をし、「まんまんちゃんあん」を披露していました。
そのうちに団体のおばちゃんたちがお堂から出てきた気配があったので、ここで気を取り直して見ブツに入ることにしました。
左右に四天王像、不動明王像などを従え、中央のお厨子の中にご本尊の獅子乗り文殊(鎌倉時代)がいらっしゃいました。顔の辺りがカーテンで見えづらいので、下から
覗き込むようにしてみると、髪の毛にたくさんお団子を作った、童形文殊でした。
運慶作の八大童子のうち、制多伽童子がこんな髪型をしてましたが、何か関係があるのかしら。
それはともかく文殊は知恵のホトケさま、どうか娘に(悪戯以外の)知恵をお授け下さいましとお願いしておきました。
御朱印をもらっている間に、娘はゆみこに数珠を買ってくれとせがんでいたようで、ターコイズブルーの数珠をゲットしていました。
彼女の見ブツグッズとして、見ブツの際には腕に巻いてあげようと思います。
バスで県庁前まで戻り、意気揚々と南円堂へと向かったのですが、何やらお堂の中から畳を叩くようなバタバタという音と、
お坊さんのお経を唱える声が聞こえてくるので、何事かと思っていたら、「今、法要中なんで…」とのこと。
拝観再開の時間まで30分ほどあったので、餅飯殿の”いつものお店”に先に立ち寄ることにしました。
そしてそこで散々おしゃべりをしてから”瓔珞ネックレス”を購入し、南円堂へ戻ったところ、
拝観が再開されていたのですが、不空の目の前のアリーナ席には既に人がたくさん陣取っていた上に結構な観光客がいたので、
その流れに逆らうことなくブツたちを見上げながら堂内を歩くことにしました。
巨大な不空羂索観音は、東大寺三月堂のものとはまた雰囲気が違い、観音を越えて如来の如き力を持っていそうな、そんな雰囲気。
そして何と言ってもその四方を守る四天王がイイ男揃いでたまりません。実に劇的に躍動的でマンガっぽい。
煩悩を絶つというよりむしろ煩悩が沸き上がってきます。この四天王になら刺し貫かれてもいいなぁ。
信仰の祈りもありますが、他にも色んな力が満ち溢れているような気がして、一度入ると本当に離れがたいお堂です。
そういえば、お堂に入る前、四角い柱のような巨大な木製の物が置いてあったのですが、「仏具に座らないで下さい」という貼り紙がしてありました。
これは一体何が入っているのだろうと思っていたんですが、不空羂索観音の背後…お堂の西側に巨大な不空羂索観音図が掛かっていまして、
多分これの入れ物じゃないかという結論に達しました。幅3mはあったような気がするんですが(2m
てことはなかったと思う)、
あれをこの日のためだけに運んだりするのって大変なんだろうな、とか思ってみたり。
でも寺子さんと言うのだろうか、南円堂法被を来た人もたくさんいたから、大丈夫なのかな。
南円堂を後にし、いよいよ今まで何故か縁のなかった西大寺へと向かいます。これだけ奈良市内の寺はリピートしているというのに、
西大寺というそれなりにメジャーな寺(なんせ駅名にまでなってる)に行く機会がなかったことを不思議がりながら、
件の大和西大寺駅に到着。駅を出たところの商店街にあった「モダン」という名の喫茶を見て、
「モダン」という言葉自体が既に「レトロ」だ、などとしょうもないことを言いつつ、有名スイーツ店「ガトー・ド・ボワ」を過ぎたら、
西大寺というには少々狭い門が見えてきます。車に注意しながら横断して(本当に車が多いので危ないです)その門をくぐると、
まず四王堂が見えてきました。
共通券を買うには少々魅力が足りない気がしたので(秘仏の愛染もギリギリ公開されてなかったし)、とりあえず四王堂だけの
拝観料を払って入ると、お堂の側面には「百万塔陀羅尼」がずらーっとならんでいて、一種異様な雰囲気に包まれていました。
(勿論本物じゃないです、レプリカ。本物は法隆寺にあります。個人で奉納できるんだと思います。)
さすが彼女(=称徳天皇)の建てたお寺、ていうかまさしくそのため(=恵美押勝の乱で亡くなった人たちの魂を慰めるため。
百万塔陀羅尼も同じ目的で作られた)に建てられた寺です。御見それしました。
そして何と言っても中央に直立してらした十一面観音がデカイのなんのって!こんなところ(失礼)にこんな巨大ブツがいるとは知りませんでした。
いとうせいこう氏が恋をしたという文殊菩薩ばかり気にしていたので…。
こちらの十一面観音は所謂「長谷式」で、錫杖を持ってらっしゃいました。奈良と鎌倉の長谷寺とは違い、こちらの十一面は足の先まで見ることができます。
霊験のあらたかさ度(?)は、奈良の長谷寺の方が上っぽい感じではありましたが、とにかく圧倒されました。
そして何と言っても十一面が従えている四天王ですが、これがまた実に味のある、ほかでは見られないユニークな像です。
彼らの踏みつけている邪鬼だけが創建当初のものだと言われているらしく、ゆみこはしきりに首を捻っていましたが
(白鳳時代と天平時代、さほど時が経っているとも思われないのに、
法隆寺金堂の邪鬼のあのシンプルなつくりからどこをどう経てこんな妙な動きをする邪鬼になったのか、
その変わりようが不思議で仕方ないらしい。法隆寺の金堂のブツたちは飛鳥時代だと言われていますが、最近では
天武・持統の時代に造られたものかも、という説もあるんだそうです。)
私はとにかく四天王のうち多聞天が蓄えてらっしゃった「カイゼル鬚」が気になって仕方なかったのでありました。
だってカイゼル鬚の四天王なんて見たことないし…!!
続いて本堂に向かいました。堂内に入ると、受付のおじさん(おじいさん?)に子供に周りのものに触れさせないよう、お堂の中を走らないよう(床が滑るから)言われたので、
ちょっとびくびくしながら内陣へ入りました。内陣を囲うように据えられた棚に奉納された透かし彫りの美しい燈篭に光が点されていて、
外からは分からない幻想的な世界が広がっていました。そしてまた内陣が結構広いのもなかなか驚きでした。
弥勒像や釈迦如来像の横に、例の文殊菩薩像が、4人の従者を連れて鎮座ましましていました。
室町時代の像ですが、流れは鎌倉ブツのような、海竜王寺の十一面観音を思わせる繊細な雰囲気で、なるほど心底惚れる人がいてもおかしくない、
綺麗な文殊さまでした。また、財善童子が特に有名なようで、灰谷健次郎さんの『兎の目』での記述がこの像の周りのいたるところに掲示してありました。
西大寺としても、この財善童子は自慢の種なんでしょうねぇ…。兎の目をしているかどうかはわかりませんでしたが、
確かに優しい目をしていらっしゃいました。
見ブツを終えてお堂を出る際、受付近くで荷物の整理をしていると、先ほどのおじさんが「ちょっとおいで」と娘を呼びました。
何事かと思ったら、西大寺と書かれた袋に、ビスコ(チョコバナナ味)と散華を1枚入れてくださるではありませんか!
子供に対しては厳しいおっちゃんだと思っていたのに!!(いや、仏童パワーか?)
本日の見ブツを幸せな気持ちで締めくくることができました。ありがとうございました。
最後にガトー・ド・ボワに立ち寄って遅めのお茶にすることにしました。
こちらのケーキは非常においしいのですが、少々サイズが小さいように思うんですね。で、「いくつ食べる?」と戯れに聞いてみたところ、
「…2つとか無理」と言われてしまいました。おいしく食べられないそうです。そうよね…私達…もう若くないしね…。
お茶をしている最中に娘がことんと寝てしまったので、しばらく時間をつぶす事に。
しかしその時点で週末に予定している湖北に心は飛んでいたりして、
今年の秋は本当に色々と盛りだくさん過ぎて幸せだと思わずにはいられなかったのでした。
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