十一面観音さんのある一日<記録>


太子:「皆のもの、今日は心ならずも聖林寺の十一面観音のオフの日を紹介いたす。」

ゆみこ:「ちょっと、心ならずってどういうことですか? ちゃんと職業意識を持って仕事してくださいね。」

太子:「うるさいな、ちゃんと進行してるところに口をだすな。 以下は十一面に依頼して、ある一日の記録を書いてもらったものである。」

07:00 起床、45分間の散歩
08:00 朝食
09:00 テレビ「日曜美術館」
10:00 警視庁・警察庁長官との会議
12:00 昼食と食後の読書
14:00 ラジオでクラシック モーツァルトのピアノコンツェルト
15:00 全国蓮池を守る会の定例会に名誉顧問として出席
19:00 奈良国立博物館館長と夕食
21:30 縁側で星空眺めながら深呼吸
22:00 就寝

太子:「なかなか知的だな。だが笑いに欠けるな。」

ゆみこ:「いや別に笑いをとるのが目的じゃないんだから。ところで気になることがあるんですが・・・。」

太子:「なんだ?」

ゆみこ:「まず、警視・警察庁長官との会議って何ですかね。変な組み合わせ。厳格って意味じゃ共通性有りそうだけど。」

太子:「十一面ほど真理を追究してるものはいないからな、それを人間界にも広げようってことじゃないのか、それも行政を利用して。」

ゆみこ:「なぁるほどね。読書ってあるけど、十一面さんはどんなジャンルが好きなんでしょう。やっぱり真理関係かな。」

太子:「そんな怪しげな本読むわけなかろう。真理を悟った者はそのような書物を読みはせぬ。」

ゆみこ:「そうかも。クラシックはぴったりですね。知的精神まっしぐらって感じで。蓮池守る会の顧問に就任してるのはやっぱ手に蓮を持ってるからなんでしょうね。ブツは誰でも蓮と関わり深いけど、役職を任せるならこのブツがふさわしいかもしれませんね。」

太子:「なんで奈良国立博物館の館長と知り合いなんだ?」

ゆみこ:「あぁ、それはね、奈良博は大和路のブツを集めた展示会をよくやってるからだと思う。たしか98年の「天平展」では十一面さんが出演してたよ。面識はあっても不思議じゃないですよ。」

太子:「ふうむ。奈良博は我が法隆寺も世話になっておる。百済観音を一時期泊りにやったこともあるし、法隆寺の国宝展を開催したこともあるしな。確かに大和の寺とは関わりが深いな。どうでもいいが寝るのは早いな。」

ゆみこ:「健康的でいいじゃないですか。十一面さんの深呼吸っていいな。夜の空気を澄んだものに変えて、それが翌朝までつづいて、まさにすがすがしい気持ちになりそう。 それにしても、今日の太子はおりこうさんだったね。いままで散々十一面さんに対抗してたのに、今日は十一面さんを立てて。大人になったね、太子、私はうれしいよ。」

太子:「仕事だからそれなりに言っただけだ。本心のわけないだろう。だいたい星空見上げて深呼吸って、かっこつけすぎだ。本当かどうかあやしいぞ。真理だってつかんだ振りして実はそれ関係の本を読んでるんじゃないのか。だいたい観音は修行中だからまだ真理も悟りも会得してないはずなんだ。それなのになんであんなに知ったような表情なんだ。なにより腹立たしいのは、本当はこの日、私も奈良博館長を夕食を誘っていたんだ。断られたのは十一面のせいだ。それに、常々奴は・・・・・・」

ゆみこ:「また始まった、この人の愚痴・・・。みなさま、本日も見苦しいエンディングですみません。ではまた次回お目にかかりましょう。」

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