この小説を読む前に新世紀エヴァンゲリオン本編を見ていることをお勧めします。
親バカここに極めたり
ここはとある組織の司令室。
一人の男が落ち着きなく部屋をうろついていた。
右へいったり左へいったりと、普段見慣れているものにとっては驚きを隠せない姿だ。
「碇、少し落ち着いたらどうだ」
「う、うむ。問題ない」
隣にいる初老の男に指摘され椅子へと腰掛ける。
これで落ち着くかと思われたが、今度は座るなり足を揺らしはじめた。
その様子を見てため息をつく初老の老人。
「碇……シンジ君に会えるのが嬉しいのは分かるが…」
「何、シンジだと!?」
突然立ち上がり周りを見渡しはじめるサングラスをかけた男。
視線はせわしなく動き続ける。
「い、碇…」
日頃とのギャップに長年の付き合いであっても引きはじめていた。
関わりたくないと思いつつ、今更だとなんとか気を持ち直す。
だが、もう一人の男はそんな気持ちに気づかない。
「冬月、シンジがいないではないか!」
「来ているなどとは一言も…」
「さては貴様…シンジに会わせない気だな!」
一人で盛り上がり、勝手に決めつけはじめる。
まるでだだをこねる子供のようだ。
顔をしかめ、初老の男―――冬月は最後の手段をとることにした。
「落ち着けというとるだろうが!」
渾身の右ストレート。
この年齢になってまで使うと思わなかった必殺の右が、騒いでいる男の頬へと吸い込まれるようにして入る。
ゴス!
「げふっ…おのれ冬月めが……」
呪詛の言葉を吐きながら崩れるように床に倒れこむ男。
ようやく静かになり動かないことを確認すると、冬月はその男を引きずりながら部屋から出て行った。
「素敵ですわ…司令」
いつの間にいたのか、部屋の隅で今までのいきさつを見ている女がいた。
つねに白衣をまとう女。
通称マッドリツコ。
今までのできごとで、どこを素敵と感じれるのか常人には分からない。
しかしリツコは頬をほんのりと染め、うっとりしていた。
この話は二人の男と影からそれを見守る一人の女の話である。
「はっ……」
冬月に倒され気絶していた男、碇ゲンドウは目を覚ました。
「知らない天井だな」
視界に入る天井。
それは見たことがないものだった。
「そんなわけないだろ」
が、横からつっこまれる。
声に反応してかゆっくりと体を起こす。
痛む頬を抑えながら現在の場所を確認することにした。
「ここは…発令所ではないか!」
驚愕に目を見開く。
そしてゲンドウにとってさらに驚愕の事実を知ることになった。
「初号機が地上にいる……」
もはや呆然といってもいい状態になっている。
ゲンドウの脳が今の状況を理解するためにフル回転をはじめた。
(初号機…ということは誰が乗っている? レイは無理なはず…ということから…シンジ!?)
隣にいる冬月を見ると、ニヤリと笑い返された。
そして自分の考えが確信へと変わる。
「おのれ冬月…」
悔しさから唇を強くかむ。
呪い殺さんばかりの目で冬月を睨むが、冬月は平然としていた。
「おまえが気絶している間に、シンジ君は出撃してしまったぞ。まったく…もう少し司令としての自覚を持ってもらいたいものだ」
この男も自分で気絶させておきながらよく言うものだ。
ゲンドウが掴みかかろうとしていると叫び声が音声から聞こえてくる。
「うわぁぁぁぁぁぁ」
「シンジ!」
急いでモニターを確認すると、そこには腕を折られた初号機の姿が映っている。
だがゲンドウが見ていたのはシンジが映っているほうのモニターだ。
「シンジ〜〜〜〜!」
ゲンドウの悲痛な声が響き渡る。
その時、発令所の時が止まったような気がした。
気持ち悪い男の絶叫に加え、それがゲンドウというのならなおさらだろう。
固まる発令所とはよそに戦闘は最悪の結末を迎えた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
一際高い絶叫と共に初号機が崩れ落ちる。
使徒の光のパイルに貫かれている姿は痛々しい。
初号機が動かなくなるのを確認すると使徒はパイルを抜き取る。
傷口からは壮大にエヴァの体液が飛び出した。
「頭部破損! 損害不明!」
「制御神経が次々と断線していきます!」
「パイロット、反応ありません!」
次々ともたらされる報告。
吉報は一つもない。
そして、最後の報告を聞いたときゲンドウの中で何かがキレた。
「おのれ貴様〜〜〜〜よくもシンジを!」
トレードマークであるサングラスを床に叩きつける。
かん高い音と共にレンズが破片となって飛び散った。
「ユイ、何をしているんだ! シンジのピンチだ! はやく目覚めるんだ!」
「お、おい碇…」
「素敵ですわ…」
特S級の情報を口走るゲンドウに冬月が止めに入る。
一名ほど関係のないことをいっている人物がいるが。
だが、ゲンドウは止まらない。
反応を見せない初号機に対して苛立ちは臨界点に達した。
「だめなのか…分かった」
言葉は冷静だが顔は全然冷静ではなかった。
「こうなったらシンジを殺して私も死んでやる! もちろん貴様も道連れにだ!」
どこからかボタンがついている機械を取り出すと、躊躇なくそれを押す。
瞬間、発令所にアラームが鳴り響いた。
「メルキオールが自律自爆を提訴しました!」
「なにぃ!?」
戦慄が走る。
そんなことは本来起きないはずなのだ。
誰かが操作しない限りは。
誰かが…そう思った瞬間、先程ゲンドウが押した機械が思い出された。
「碇、何をした!」
不気味な笑みを浮かべながらゲンドウはそれに答える。
「これは自爆を促す装置だ。それを押しただけだが?」
「バカな…そんなものでMAGIが操作できるはずがなかろう!」
「それはどうかな?」
意味深な言葉を投げかけると、機械を放る。
機械を拾い上げよく見てみると裏に猫のマークが記されていた。
この世界においてこのマークはただ一つ。
それは赤木印と呼ばれている。
「ま、まさか…」
ゆっくりと視線をその印の人物へと移すと……
「素敵過ぎですわ…司令。リツコはもう…もう……!」
自分の体を抱きしめてもだえていた。
視線はゲンドウを見つめ瞳は潤みまくっている。
「も、もうダメだ…」
がっくりと膝をつく冬月。
発令所にいる連中はもうそれどころではない。
自爆の瀬戸際なのだ。
だが、無情にもそれは訪れた。
「バルタザール、カスパーとも可決しました!」
「シンジ、これでお前は私だけのものだ〜〜〜〜〜!」
「んなわけあるか〜〜〜」
ドーン
ネルフ本部とともに第3新東京市は跡形もなく消えさった。
それでも世界はかわらない。
他のところは至って平和だった。
これは一人の親バカがもたらした話。
あとがきというなの戯言
O:10000HITです。
G:ふ…問題ない。
O:これは没ネタだったんだけどね。
G:シリーズなのか?
O:それは感想しだいかな?
G:書け! 書かないなら帰れ!
O:じゃあ、帰ります。
G:なにぃ!
O:さよなら〜(フェードイン)
G:おのれ…ヘボ作者め、覚えていろ!
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