霊格(覚醒段階)

 
 「霊格」とは、人間や悪魔、物品、空間などの持つ霊的な力の大きさを、1〜7のレベルによって大まかにあらわしたものです。
 キャラクターとなり得る存在の持つ霊格は特に「覚醒段階」とも呼ばれ、0CPの特徴として扱われます。
 「覚醒段階」を上昇させるための手続きに関しては、次項「覚醒」を参照してください。
 
 
◇霊格の意味

 
 まず、霊格とそのレベルがゲーム的にどのような意味を持つのかを説明していきます。以下のルールは、人間以外のキャラクターについても同じように適用されます。
 
能力の制限
 キャラクターの獲得できる能力値や特徴のレベルが霊格のレベルによって制限されます。これが自由なキャラクター作成を妨げると感じられる場合、この制限は無視してもかまいません。
 能力値や特徴の上限は以下の通りです。
 
体力:13+「(霊格レベル+サイズ修正)の自乗」まで
その他の能力値および副能力値:13+霊格レベルまで
HP、FP:体力および生命力±「霊格」レベル×2まで
剥離装甲:+10×(霊格レベル+サイズ修正)まで
基本反応速度や基本移動力:能力値から計算される値+霊格レベルの半分(小数点以下も計算する)まで
 
「達人の指導」、「武器の達人」、「射撃の達人」、カルトマジックの「修得段階」のレベル:霊格レベルと同じ値まで
魔界魔法、超能力などによって得られる「特殊攻撃」のレベル:霊格レベル累積+1(1レベルで1+1=2、2レベルで1+1+2=4、3レベルで1+1+2+3=7…)まで
「特殊効果」のレベル:霊格レベルと同じ
超能力、魔界魔法などによる防護点:「特殊攻撃」と同じ
悪魔、マシンなどの持つ防護点:もっとも近い動物の外皮ボーナス×霊格レベルまで
超能力、魔界魔法などによる「テレキネシス」「拘束」レベル:13+霊格レベルの自乗まで
その他、レベルの存在する特徴:GMの判断。ふつうは霊格レベルまで
 
不利な特徴の獲得制限
 人が人の身のまま霊格を高めていくということは、様々な苦悩やしがらみ……“業”を背負っていくということでもあります。これを表現するために、「霊格」を持つキャラクターの獲得できる不利な特徴は通常より「(霊格レベル−1)×10」CPずつ多くなります。
 この増加分の不利な特徴は、覚醒したとき新たな力と同時に得るのが普通です。
 
感覚の拡大
 覚醒したキャラクターは、霊的な力やマグネタイト、マガツヒなどの流れに敏感になります。強力な悪魔が召喚あるいは送還される、異界への門が開く、強大な魔法が行使されるなどしてこれらに大きな動きが生じたとき、知覚判定を行ってください。成功すれば、そうした出来事が起こったこと、その大体の方向と距離を感じ取ることができます。 この感覚の働く範囲は「出来事の霊格レベルの自乗×100」メートルです。もっともGMはこうした判定を厳密におこなう必要はなく、もっと感覚的にPCたちへ情報を伝えてかまいません。
 
アイテムの霊格とその装備に関する制限
 キャラクターは、基本的に自らの持つ「霊格」以下のレベルの物品のみを身に付けることができます。「霊格」レベルがより高いアイテムを無理に使おうとする場合、そのアイテムを身に付けている1秒ごとに、自分とアイテムの「霊格」レベルの差と同じ点数の体力を消費していきます。
 また、一人のキャラクターが持てるアイテムの数も制限されます。「霊格」レベルが同じなら2つまでで、このとき「霊格」が1レベル低いアイテムは2つでひとつぶん、2レベル低いアイテムは4つでひとつぶん……として扱います。たとえば「霊格」が3レベルのキャラクターなら、3レベルのアイテムをひとつ、2レベルのアイテムをひとつ、1レベルのアイテムを2つ、それぞれ装備できるわけです。
 どのような状態が「身に付けている」にあたるのかはGMが決めてください。防具ならそれを着たとき、剣などなら鞘から抜いたとき、などとするのが妥当でしょう。
 
 
 
◇覚醒段階

 
 ここではそれぞれの覚醒段階について解説していきます。各覚醒段階に付された数字は霊格レベルを示しています。
 それぞれの覚醒段階の名称に、あまりゲーム的な意味はありません。以下はあくまで演出上の助けとするべきものです。プレイヤーによっては、より自分のキャラクターに合うような覚醒段階の名前を考えてもいいでしょう。
 
1.愚者
 愚者とは「知らぬ者」です。多くは悪魔の存在を知らず、人生の意味を知らず、自己のうちに眠る才能を知りません。平和な世界に暮らすほとんどの人間が、この段階にあたります。
 
2.異能者
 異能者とは自らのうちに秘められた資質に気付き、それを開花させつつある者を指します。何らかの霊的な訓練を受けた人間の多くがこのレベルに達しています。悪魔の存在は否定できないものとなり、日常生活の裏側で、信じがたい何かが確かに進行しつつあることを知ります。また、悪魔や超常的な存在も異能者に気付き、接触してくることがあります。
 
3.覚醒者
 覚醒者とは「目覚めし者」です。自分をめぐる特別な運命や力に気が付いたことを意味しますが、それがどのようなものであるかは未だ明確ではありません。
 このころから、神や悪魔といった存在がキャラクターの日常に干渉し始めます。キャラクターは自らが何者であるかも分からないまま、否応なしに彼らの思惑に巻き込まれていくことになります。
 
*このレベルから、キャラクターが覚醒していく道のりはふたつに分岐します。
 ひとつは人間として身に付け得る能力の限界を追求し、それを越えようとするもの。宿世の因縁にとらわれず、人間としての生き方を切り開いてゆく道です。
 もうひとつは自らの神性を自覚し、その運命を受け入れるもの。前世からの因縁に向き合い、やがては神としてのかつての姿を取り戻してゆく道です。
 上記のうち前者は−1、後者は−2という形で、それぞれの霊格レベルに付された数字によって表されます。
  これらの区分によるロールプレイへの影響について、それほど神経質になる必要はありません。神としての道を歩むことになったからといって、今までのキャラクターの生き方がまったく無視されたり、人間らしさを失ってしまうということにはならないのです(人間よりよほど人間らしい神々が存在することを思い出してください!)。
  結局これらは、あなたがあなた自身になるための道のりなのです。
 
4−1.達人
 達人とは、長い修行の結果、人と人の世についての真理の一端に触れた存在を指します。 これにより、人は「人と獣の間としての人間」を脱して「人に達した存在」となるのです。 キャラクターは自らの心と体とを意識によってコントロールできるようになりつつあり、常識からは考えられないような能力を発揮することが可能になります。
 この覚醒段階になるための必要条件は特にありませんが、「特殊能力の習得」に挙げた代表的な能力の持ち主はこの覚醒段階にふさわしいでしょう。何らかの技術を極めたものは、自然と悟りを得るものです。
 「達人」は他の達人を直感的に見分けることができるようになります。
 
4−2.転生者
 転生者とは、自分がかつて神であったこと、また、現在も神の一部であり神自身であることを自覚した存在を指します。ただし前世の記憶は未だ曖昧で、自分が何であったかを思い出すことはできません。前世の力のごく一部を取り戻すことができますが、神の力と呼ぶには、それはあまりに弱いものです。
 この覚醒段階になるには、PCが前世における自分の姿について、何らかの示唆を受けたことがなければなりません。PCがこの段階にあるうちに、プレイヤーはPCの転生神(前世での神としての姿)を決めておく必要があります。
 この覚醒段階を得ることで、転生神の出身地域の<言語>を知力レベルで得、<地域知識>を技能なし値で使用できるようになります。また、同じ神族のものや敵対する神族が直感的に分かるようになります。
 この覚醒段階に到達した際、望むならば転生神の持つ特徴のうち外見的な変化をともなわないものを30CPぶんまで得ることができます。一方、新たに不利な特徴を得ようとする場合は転生神の持つ特徴から選ばなくてはなりません。
 また、転生神としての特徴がキャラクターに現れることがあります。それが外見的なものにしろ内面的なものにしろ、出会った者の反応に影響を与えるほどではありません。これは−1の「くせ」として扱います。
 
5−1.超人
 超人とは文字通り、人としての限界を超えた存在です。肉体的にも精神的にも、あなたはもはや従来の意味での人間とは一線を画しています。
 かつては厳しい修行をくぐり抜けた一握りの人間だけが到達できたこのレベルの人間が、近年、悪魔の跳梁によって増加しつつあります。
 
5−2.顕現者
 顕現者とは、その身を以て神の力を顕現することができる存在を指します。これはキャラクターの肉体が神性を帯び、神と近い存在になりつつあることを示します。キャラクターは自らの転生神をはっきりと自覚し、その記憶をおぼろげながら辿ることができるようになります。
 この段階にあるキャラクターを、神々はもはや無視することはできません。自らの陣営に引き入れようとしたり、逆に抹殺しようとしたりと、超自然的な力によるさまざまな介入がなされるでしょう。
 得られる特典は「転生者」とほぼ同じですが、転生神の能力から得られる特徴は+10CPされて40CPになります。
 またこのレベルから、1シナリオに1回、命運を1点支払うことで、転生神の姿と能力を一時的に借りることのできる「転生神顕現」という能力を得ます。この状態にあるときに消費したヒットポイントや疲労点は、変身前と変身後の最大値に比例するように適用します。この状態の持続時間は、それぞれ転生神の霊格レベルがPCより2高い場合は2D秒、1高い場合は1D分、同じ場合は3D分です。
 
6−1.導師
 さらに肉体と精神の鍛錬を深め、人間が望むことのできる最後の到達点へと進みつつある状態です。かつて多くの達人たちが、この段階を最終到達点と考え、その先を見ることなく生涯を終えてきました。この最後の壁を超えることができるのは、才能と努力と幸運とを兼ね備えた、ほんのわずかな者だけです。
 
6−2.神人
 さらに神と人との和合が進んだ状態です。不利な特徴のうち半分までが、転生神のものになります。CPによる取得制限に引っかかるようなら、もともと持っていた特徴のうちいずれかと置き換えてください。
 転生神の能力から50CPまでの特徴を得ることができます。また、「転生神顕現」の能力が1シナリオにつき2回使用できるようになります。
 
7−1.超越者
 人が生物としての限界を超え、進化の到達点に立った姿です。もっとも、あなたの歩みがこれで終わるわけではありません。あるいはほんの始まりに立っただけかもしれないのです。
 
7−2.神
 あなたは神としての記憶と能力を取り戻しました。とはいえ、実はまだあなたは本来の力を発揮することはできていません。
 神は自らの属する神話世界において、はじめて本来の力(霊格レベル+2)を発揮します。神話世界から遠く離れた現世において、この本来の力を発揮するための唯一の手段……それが人間へと転生し、覚醒を重ねながらゆっくりと力を取り戻すことです。
 あなたが今まで覚醒を重ねてきたのはこのためです。さらに言えば、あなたはまだ真の覚醒を迎えてはいません。本当の意味で神の力を取り戻す(転生神の霊格レベルに2を足した値に到達する)まで、道は続きます。
 転生神の能力から60CPまでの特徴を得ることができます。また、「転生神顕現」の能力が1シナリオにつき3回使用できるようになります。
 
 
さらなる道のり
 
 霊格は通常1〜7までであると冒頭に述べましたが、人間の持つ霊格に関しては、これを超えてもかまいません。あらゆる神、あらゆる悪魔を凌駕する可能性を、人間は秘めています。
 「神ならぬ身」である人間が神を超える時、その先には何が見えるのでしょうか。コンシューマの『真〜』シリーズのような、とてつもなく壮大なキャンペーンになるでしょう!
 
 
覚醒段階をデザインする
 
 上に挙げた2タイプの覚醒ルートは原作『真・女神転生TRPG』における技能覚醒と神族覚醒(転生覚醒)の再現です。これはあくまで例にすぎません。「覚醒」の解釈が様々であるように、もっと様々なタイプの覚醒段階が存在してもいいでしょう。
 各GMとプレイヤーは、上の覚醒段階を使用しても構いませんし、自作しても構いません。自作の際は、そのキャラクターが究極的にどういった存在になろうとしているかを念頭に置くと分かりやすいでしょう。
 俗界との交わりを断ち、天界と地界を自由に行き来する「神仙タイプ」、太極の理を会得し自然のままに過ごす「得道者タイプ」、人の身にして神々の末席に加えられた「英雄タイプ」、輪廻の環を脱した「覚者タイプ」、神の化身「アバタールタイプ」、人としての能力を突き詰めた新たな人類「新(真)人タイプ」、肉体の揺りかごを捨て、より大きな自我を会得するに至った「純粋知性体タイプ」、信仰にその身を捧げた「聖者タイプ」、俗界の人間たちとともに暮らすことを選んだ「愚者タイプ」……あらゆる可能性が考えられます。
 
 
 
◇その他の「霊格」

 
 冒頭に述べたとおり、「霊格」の概念は、悪魔や物品、空間などについても適用されます。ここでは、そうした存在の持つ「霊格」がゲームの中でどのように扱われるのかを解説していきます。
 
 
悪魔の霊格
 悪魔といえど、その能力は霊格レベルによって制限されます。能力値などの制限は人間とわずかに異なります(特に人間型以外の悪魔の場合)が、特殊的・超常的特徴の取得に関しては上記「霊格の意味:能力の制限」にある基準に従います。
 それぞれの霊格レベルにどういった悪魔が属するかを以下に示します。
 
「霊格」なし:種族「マシン」、および他者に操られた物体など。人間を含めたあらゆる生物がこのレベルになることは(基本的に)ない。
1.妖精や精霊といった、神話世界において最下層に位置する存在。ほとんどの「幽鬼」や「屍鬼」、「外道」、誕生時の造魔など。多くは個体名を持たない。
2.妖精や精霊、妖怪といった雑多な存在の中でもそれなりに力のあるもの。最下位の天使。
3.雑多な存在のなかではもっとも力あるもの。どうにか神格を持つと言える悪魔。
4.伝説的な(人間の)英雄。神々のヒエラルキーの周延に位置するほとんどの神々。
5.世界観におけるある機能や職能を担う有力な神。半神的な英雄。有名な神仙。
6.その神話世界の構造の、中心的な位置を占める神々。戦闘や豊穣、死、病気などの基本的な機能を司る神々のなかで、もっとも高位にあるもの。最強クラスの天使。神に匹敵する力を持つとされる英雄。神々の主権を脅かす可能性のある怪物。
7.多神教における主神クラス。大地や海、自然現象そのものを具象化したような怪物の類。もっとも強力な天使。
8〜.その神話世界において、他と比較できない存在。世界創造の神、閑職神(神々のヒエラルキーから外れた、より古い神)、一神教の神、神秘主義宗教や流出論における絶対者。こうした概念を持たない神話も多く存在する。
 
アイテムの霊格
 何らかの謂れがあったり、特殊な材料で作られたりしたアイテムも、霊格を持つことがあります。
 神話に登場する武器などの霊格は、その正統な持ち主のそれと等しくなります。何らかの理由で持ち主の霊格が変動したら、武器の霊格もそれに準じます。
 以下、それぞれの霊格レベルにどういったアイテムが属するかを示します。
 
「霊格」なし:何の霊的・魔術的・宗教的・歴史的背景も持たない(つまり、この世界に存在するほとんどの)物品。粗製の武具。
1.何らかの霊的な謂れや背景を持つ物品。長く使い込まれた武具。霊木から削り出された木刀、名工の手になる銘刀。
2.それなりの由緒や背景を持つ物品。歴史上の有名人によって使用された武具、銘刀の中でも非常な業物など。
3.歴史のある一場面において重要な位置を占めたような物品。ひとつの伝承圏を代表するような物品など。
4.半ば伝説化した、数々の由緒を持つ物品。伝説的な英雄によって振るわれた武器など。
5.数々の伝説や逸話を持った神話的な物品。神々や半神的な英雄たちが用いたとされる武具など。
6.有力な神々や最強クラスの英雄が用いたとされる武器や、ひとつの歴史や文化を代表するような物品。
7.その神話世界の中でももっとも力あるもののひとつで、他に代わるものがない物品。主神の持つ武具など。
 
場の霊格
 ある場所も霊格を持ち得ます。宗教的に清められた空間や呪術の効果範囲となった場、異界化した空間、神話世界などがこれにあたります。
 霊格を持つ場を考えるとき、重要になるのが「どういった力がその空間に働いているのか」です。たとえばある神話世界は特定の神族の力を弱めますし、敵対する神の力が働く空間に入ることを、普通の悪魔は嫌がるでしょう。
 こうした場に関するルールは設けていません。シナリオの舞台作りに直結する部分ですので、あまり詳細に決めてしまうとやりにくくなると考えるからです。各GMはあまり神経質に考えず、感覚的に「ここは○○の神の力が働いているので、霊格3レベル以下の××神族は入れません」などとすればよいでしょう。
 
攻撃の霊格
 ある攻撃手段の霊格レベルが問題になる場合もあります。これは主に、呪術や特徴による障害を打ち破ることができるかどうかや、命運消費によるダメージへの係数の計算に使用されます。
 素手や超能力、呪術、「特殊攻撃」といった攻撃の霊格レベルは、攻撃者と等しくなります。武器を用いた攻撃の場合はその武器の霊格レベルを使います。銃や弓矢などの場合、射出するものとされるもののうち、どちらか高い方になります。
 

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