ふたりぼっちのクリスマス

「ねえ、L」
 クリスマスツリーに鈴の飾りをつけながら、そう呼びかける。
「はい」
「はじめて一緒に過ごしたクリスマスのこと、覚えてる? 雪が降って、ホワイトクリスマスだ、神様からの贈り物だって騒いだのはいいけど、どんどん降雪量増えていっちゃってさ、コートは濡れちゃうし、髪なんかもう真っ白」
「そうでしたね」
 朗らかに振り向く彼女に、淡い微笑で応じた。
「でもね、不思議と左手は冷たくなかったの。どうしてだかわかる?」
「どうしてでしょう?」
「あなたからもらった指輪をつけてたから。ほら、これ」
 言葉通り、左手の薬指にダイヤモンドがきらめている。雪の結晶など遠く及ばない輝きだった。
「だからこの手は冷たくなかった。今はひとりきりだけど、やっぱりここだけは、暖かいままだよ」
「ひとりじゃありません。私がいます」
「……そうでした。すみません、ニア。変なことに付き合わせて」
「いいえ。私からのクリスマスプレゼントです。存分にLと呼んで下さい」
 はわずかに目を伏せ、微笑みを浮かべた。悲しげな微笑だった。
 しかし次に顔を上げたときにはもう、晴れ渡った青空を連想させる、すっきりとした表情をしていた。
「そうですね。じゃあ、L。次はそれ取って下さい」
 今日一日だけのLは、彼女に指示された通り、ツリーの頂点に飾る大きな星を手にした。

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