ジャパニーズ・ドール

「ジャパニーズ・ドール……」
「え?」
「いや、お前の染めてない髪見てたらさ、いつか写真で見た、艶のある黒髪の人形を思い出した。なんとなくだけどさ、似てるよ、お前、あの人形に」
「あんまり嬉しくないなあ」
 は複雑そうに首をかしげ、マットを一瞥した。
「なんでだよ? すっげーきれいだったぜ。褒めてんだよ」
「いや、マットから見れば、日本人形は一種の異文化だから、きれいなだけだろうけど……。なんていうのかな、ああいう長くて艶のある黒髪には、霊力が宿ってそうな感じがするの。薄気味悪さが常に漂ってる」
「霊力?」
「そう。まあ、人形じゃなくても、女の黒髪って、それだけでひとつの情念だけどね。悲愴な決意を感じさせずにはおかない」
 マットは髪を指に巻き付けてつぶやいた。白と黒のコントラストが誘惑の香りをたてる。
「俺はエロくて好きだけどな。な、人形くらいまで伸ばしてみろよ。やってるとき首に絡みついてきて、エクスタシー増大しそうじゃん」
 マットのにやけた顔面に、冷たい視線が浴びせられた。
「すぐそっちに話を持ってくんだから」
「霊力より、精力、だろ?」
 マットは笑って首を伸ばし、会話になってないと抗議する、のくちびるを塞いだ。

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