法隆寺見ブツ記(2007.4.25 雨時々晴れのち雨)

00 : 序

毎年この時期には必ず法隆寺に行くという法隆寺友の会会員のゆみこに便乗し、法隆寺見物を決行。 本日の目玉ブツは、復元毘沙門天と吉祥天。育児休ブツしてた私にとっては数年ぶりの法隆寺、すごく楽しみだったのですが、 朝から生憎の雨模様;昼からの降水確率はかなり低い予報だったので、奈良に着いたら止むことを祈っていざ出発。
寒かったから温かい茶粥をいただきました。 しかし、見事に裏切られた上に気温も予報ほど高くならず、筒井に到着した後も、冷たい雨は降りやまず…。 これも仏の与え賜うた試練だと思い、「聖徳太子がいなかった、という説があるけど、じゃあ法隆寺は一体何のために建てられた寺なのさ?」 という我ら二人では絶対に答えの出せない問答をしながらバスを待ち、法隆寺門前に着いた時には更に酷い雨に。 太子には歓迎されていない模様だ、と思いながら、 ベタに門前の松鼓堂でお昼ご飯を食べたのでした。茶粥に、香の物とか小鉢が付いて950円。結構寒かったので、体が温まりました。 とりあえず、法隆寺周辺にもう少し食べ物屋さんが増えることを切に願います。修学旅行生用の食堂ばっかりでどうも芸がなくていかん。

01 : 法隆寺西院伽藍 〜流行り過ぎ、五重塔北面塑像郡

懐かしい風景 ご飯を食べている最中からすごく気になってたのですが、修学旅行生の数の多いこと!!ぞろぞろ出てくるわ入っていくわ、 こりゃーちょっと間の悪い時に来たな〜とか、雨の中かわいそ〜だとか話してたんですが、なんと、食べ終わって出たら、 見事に雨が上がっているではありませんか!これぞ法隆寺のブツたちのご加護!!さすが太子!!色んなものに感謝しました。

それにしても、法隆寺門前がすごくすっきりしてました;これが、あの数年前の「行政代執行」の賜物なのね…。 立ち退きを強要(ではないのかもしれないけど)された側はたまらなかったでしょうけど、寺を訪れる側としては、 清浄な雰囲気が増していいなぁ、とか思ってしまいました。そして南大門をくぐれば、平日だけあって観光客の数はまばらでしたが、 いるわいるわ修学旅行生の山!ちょうど正面で団体写真撮ってましたよ。

さて、拝観券を購入して久方ぶりの西院伽藍へ。『法隆寺 世界最古の木造建築』という本をゆみこから借りて読んだばかりだったので、 塔を見上げては「卍崩し!!人型(割柄)!!」と、いつもは興味を示さない「建築」に注目していました。 仏像もいいですが、建築も面白いものですね。法隆寺は本当に美しいお寺だと再認識。ステキです。
で、塔の南面から見仏開始。こちらも「最初は塑像郡を置く予定じゃなかったみたいだね」、と本から得た知識を互いに披露(笑)。 南、西、北と回ろうと思ったら、北面前には修学旅行生の大行列が出来ていました。 こりゃーいつになったら私達の番が回ってくるかわからないので、先に大講堂に入りました。

大講堂には薬師三尊と四天王(平安時代)がいらっしゃいます。かしこそうなお顔を好きだと言うゆみこと、 仏像に関する説明書きが一切ないことを気にする私。顔を見れば平安時代かな〜くらいはわかるけど、 自信がないので、どうしても探してしまうんですよね…。でもまぁ、「見たまま感じろ!」という薬師の思し召しかもしれないので、 これからはそうすることにしよう。
大講堂から塔と金堂を眺めると、やっぱり五重塔北面には行列が出来ていて、几帳面にも3〜5人ずつ順番に北面を覗いているのですよね。 私達の後ろでは、薬師仏の前を素通りして行く学生達…。修学旅行ならではの不思議な光景です。
そんな中五重塔を見上げるゆみこが、 「五重塔のてっぺんの四角い所に葵の御紋が入ってない?!」と言い出しました。が、視力0.8(矯正後)の私に見えるはずもなく、 カメラのズームもそこまでは届かず、でもなんとなく丸い御紋が見えるような…。
前にすごいズームで写真を撮った時に気づいたそうです。 大講堂の前にある燈篭は桂昌院(五代将軍綱吉のお母さん)さまの寄進らしいし、金堂の支柱に巻きついてる龍もその頃に付けられたものらしいから、 御紋が付いててもおかしくないですね。日本を牛耳ると最古の寺の塔の上に家紋を彫れるのですねぇ…。

塔の北面は譲ってもらえる気配がなかったので、金堂横の回廊を見ると、塔の北面を見終えたらしき修学旅行生がたまっていて、 金堂に入るタイミングを見計らってる感じだったので、奴らの先を越すべく金堂に入りました。入り口で掃除をしていたお寺の人に挨拶をすると、 「真ん中に懐中電灯が置いてあるので使ってください」というお言葉。法隆寺は準備がよくて大好きです。

金堂に入ると、いつも最初に見える多聞天の姿がありません。「どっか行ってるの?」「修復中かな」と話していたら、先ほどの方が 「多聞天は奈良国立博物館に出張中。天蓋も行ってます」と教えて下さいました。博物館だと天蓋もかなり詳しく見られるとのことでした。 平常展に出ているみたいなので、機会があったら見てみたいです。

それにしても法隆寺の金堂仏たちは、いつ見ても麗しい。アルカイックスマイル。リズミカルな衣紋。本尊にしては小ぶりですが、 その分親近感が沸くというか。天人や仏の壁画に囲まれた空間はまさに極楽浄土。そこでやっぱり思っちゃうんですよねぇ、「住みたい」って。 前述の本に書いてあった、天蓋落下事件でへし曲がったという釈迦三尊の後背も確認。面白い発見がいっぱいできました。 私も買おうかな…。なんて考えながら、懐中電灯を使ってかじりつくように仏像を見ている私達の後ろを、 修学旅行生たちがたくさん素通りして行ったのでございました。…ちょっとくらい、見ろよ!!

この時、もちろん吉祥天と毘沙門天の姿も確認したのですが、この時はまだ、この夫婦の「復元像」が、これまで見た仏像の姿を、 全て飛ばしてしまうほどのインパクトを持っていることを、知る由もなかったのでした…。

02 : 大宝蔵殿 〜異形だけど、異形じゃない。

西院伽藍を後にし、聖霊殿をパスして(太子の怒りの声が聞こえそうだ)、大宝蔵殿を目指しました。この時、「車椅子、ベビーカーは スロープをご利用下さい」という看板を見つけ、改めて見回すと、法隆寺は素晴らしくバリアフリーで、ママ見仏人にも優しい寺であることが判明しました。 うむ、さすが世界遺産。このくらい対処してくれないとね!!(金堂、塔の石段にはスロープはありませんが、そのくらいは許せる。) 他の寺もこのくらいやさしいといいなぁ。

大宝蔵殿に入ると、法隆寺の宣伝部長(当サイト設定)、夢違観音(白鳳時代)がお出迎え。この像の大ファンである私達、ケースの前で彼女を褒めちぎります。 この像ほど、傍に置きたいと思わせる像はないなぁ。かわいいし、サイズ的にも問題ないし。いつか模造が欲しい…。
続いて左側に居並ぶ六観音(白鳳時代)に注目。これもまた可愛らしい顔をしているのですが、意地悪な私は再びここを突きたくなる。
「これさぁ、文殊って書いてあるけど、何を以てして文殊って言ってるわけ?」
「横の観音と見分けつかへんよなぁ…。」 「宝冠に化仏がついてないからかな?」
「でも、取れただけっぽいよ」
「それにしても、この日光と月光は他の4人に比べて全然違うな」
「造った人が違うんちゃう?」
「衣の長さも違うし、身長も違うし、頭とか適当っぽい。」
夢違に比べて、酷い言われようです。この時は疑問の答えはわかりませんでしたが、後ほど入手した本で、 「観音以外は全部推測、6体あったから、便宜的に六観音として名前がついてるだけ」だということが判明しました;

夢違の後ろに、塑像の吉祥天(天平時代)が立っていらっしゃいました。確か金堂にいたはずなのに、知らない間に大宝蔵に移されたんですね。 金堂では暗くてはっきり見えたことがなかったので、初めてこんなに近くで見たことになるんですが、一言で言うなれば「おっかさん」。 本当にふっくらと肉付きが良く、どんと構えていらっしゃる。 別のケースに並んでいる面白い顔の塑像四天王の多聞天とは、 なかなかお似合いの夫婦でございますよ!! 梵天と帝釈天は漫才コンビに見えるし…。

別ケースに移り、九面観音の精緻さを褒め称え、隣の如意輪観音を見て、こんな古くから如意輪観音という概念があったのか、とか言ってみたり (不勉強丸出し;)、地蔵の懐が深そうだと言った後、聖徳太子の諸像を見仏。掛け軸に描かれた、すごくかわいい2歳像の絵があるんですが、 娘にこの髪型をさせたいと言ったところ、「既に髪の毛の量がこの絵を越えてて無理」と言われてしまいました…無念。

それから玉虫厨子を見上げ、金堂の建築との比較を(本の受け売りで)話してたんですが、でもやっぱり、これを見ると、 どうしても「一体何匹の玉虫が羽根をむしられたんだろう」ということばっかりが気になってしまいます; できた当初は玉虫の羽やら飾りの金やら四面に描かれた絵やらでものすごくきらきらしかったに違いないですが、 その裏で犠牲になった玉虫のことを思うと…すごいもの作ったよね、と思わずにはいられない、玉虫の冥福を祈ります…。

続いて現れるのは、言わずと知れた百済観音(飛鳥時代)です。この、身長が2メートルあって8頭身の仏像、 ある意味異形だと思うんですよ。体に凹凸はないし、寸胴だし、顔は溶けてるし…。でもなんかひきつけられるんですよね。 何故なんでしょう。すごく不思議です。真っ直ぐで動きはないクセに、手の表現はものすごく美しい。 でも顔を見たらやっぱり溶けてる(しつこい)。溶けてるのに、やさしそうに見える。不思議。異形の怖さはひとつも感じない。 造った人の、気持ちがこもってるのかな。それとも、百済観音の気持ちの表れなのかな。これ、いい仏像だな…。

前から横から百済の姿を眺めていると、再び修学旅行生の波に巻き込まれました。その流れのままに次の間に移ると、 バスガイドさんの声が。
「○×中学のみなさん、ここから先は自由ですので、見学が終わったら出てきてくださ〜〜い」
やっぱりこの先はパスなのね。ま、仕方ないよね。私たちも素通りだし。
天蓋の天人像だけ見仏し(これがまたかわいい!)、出口近くにある建材を見て再び本の受け売りの話をし(雲斗雲肘木、という単語を覚えた)、大宝蔵殿を後にしました。
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