門を潜って奥に進むと、「本日拝観できます」の立て札が。そこでお堂の方へ向かうと、ちょうど係りの方の説明が始まるところだったので、 拝観料は後にして一緒に聞かせていただくことに。お堂の中を覗くと、大きな阿弥陀三尊像が鎮座していました。宋風だけあって、こちらの三尊は 鎌倉ブツの「写実感」はなく、貴族好みの優美さが感じられました。でも膝の辺りに残る「土紋」は鎌倉独特のものらしく、花の形の かわいらしくも素朴な模様が、鎌倉の仏像であることを物語っていました。美しかったです。 あと、他に「矢拾地蔵」という室町時代の地蔵がいらっしゃいましたが、これまた製作年が室町時代という割には鎌倉ブツに近い 繊細さのある地蔵で、なかなか美形でした。初っ端からいい仏像に出会たぞ! | |
三尊のいらっしゃるお堂の向こうに、大きな「やぐら(鎌倉時代のお墓)」があります。それを登ってゆくと、冷泉為相のお墓があるんですが、 そこから海を望むことができます。山がすぐ後ろなのに、海も見えるなんて。太陽を照り返してキラキラ輝く海をちょっと眺めてたかったんですが、 いかんせん「お墓」です;しかも草生していて昼間なのに雰囲気満点だったので、そそくさと降りて次のお寺を目指しました。 けど、鎌倉のお寺って大概「やぐらセット」なんですよね…;(写真は境内の様子) |
続いて海蔵寺。こちらは仏像よりも井戸が売りのお寺なので境内は無料、見ブツも無料。 境内は色んな植物が植わっていて、綺麗に整えられていました。左手のお堂に、 『啼薬師』の異名を取る薬師如来像がいらっしゃいます。少々遠いので見づらいのですが、 細身の日光・月光を従えてらっしゃいます。そして更に十二神将もずらりと並んでいるので、 お堂自体が「薬師眷属フィギュアフルコンプリートボックス」っぽかったです。サイズもそんな感じなので。 | |
やはり海蔵寺にもありました、やぐら…ぽっかりと暗い口をあけているのがそれ。意を決して撮影。 変なものが写ってなくてよかった!! |
亀ヶ谷切通しを徒歩で抜けて、続いては円応寺へ向かいました。大きな道沿いの「え、ここから?」という階段を上った先にありました。 直ぐ側に墓地の迫るお堂に入ると、そこはまさに立体地獄。京都の立体極楽浄土こと即成院とは正反対の空間です。 閻魔を初めとする荒々しい十王像が我らを迎え入れて下さいます。 浄光明、海蔵共に写実ブツではなかったので、ここでようやく「ああ、鎌倉だな!」という気分になりました(鎌倉ブツに対する偏見)。 順番に王の役割を読みながら、「地獄へ行ったらよろしくお願いします」と頭を下げるプロ学会。 仏像好きだから極楽に行けるなんて保障はありませんからね! |
次は円応寺の目の前にある巨大寺院・建長寺。ここはブツを見るためというより、「建長寺か円覚寺か、どっちかには行こう」ということで 選ばれただけなんですが、全ての巨大さに圧倒されてしまいました。京都の知恩院的イメージですね。とにかくデカイ。 だけどさすが禅宗の大本山だけあって華美ではない。まさに「THE・禅」。しかしこの写真の門は、足元が意外とスカスカなのが面白かったです。 あんなにスカスカに見えるのに、こんなでっかい頭を支えてるんだもんなぁ…建築ってすごい。 | |
本堂の巨大な黒い地蔵を見た後、その裏手にあった「法堂」というところへ行ったのですが、 ここが建長寺の中で最も異空間なのではないかと思われます。お堂の中央にはどこぞの国から贈られたという苦行シャカ像が鎮座し、 その後ろには妙に異形な感じの千手観音が控え、更に天井には龍がいて睨みを効かせている。一体何空間なのかここは。 不思議だ。 |
建長寺の休憩所でおにぎりを食べ、次は浄智寺の予定だったのですが、知らない間に通り越して東慶寺に入ってました。
4時に水月観音を拝観させていただく予定だったので、とりあえず先に松ヶ岡宝蔵に入ろうと、本堂にお参りだけしてそちらに向かいました。
しかし尼寺だけあってお庭には本当にたくさんのお花が植えられてあって、女性の人気が高いのも頷けました。
が、十月桜だのボケの花だのが狂い咲きしていて、季節はどこへ行ってしまったのかと思わなくもなかったです; さて、宝蔵には聖観音立像がいらっしゃいました。薄暗い空間にぽつりと立つ、土紋の施された聖観音。 下から見上げると、玉眼が僅かな光を映して、瞳が潤んでいるように見えました。そんな目で見られたら立ち去りにくいじゃない、と思いつつ、 しばらく眺めてから次の部屋へ。そこには水月観音によく似た観音座像がありました。 この観音座像、非常にリラックスして座ってらっしゃいます。ていうかむしろお疲れのように見えます。 ケースの底が畳張りだったので、「自室で寛ぐ観音」にしか見えませんでした。まあ、ずっと背筋を伸ばして人々の視線を浴びてたら、 疲れもするわよねぇ…。 | |
いい時間になったので水月観音の拝観に向かいました。自分で門を開けて入っていくので、バックステージパスな気分です。
呼び鈴を鳴らすと、鎌倉マダムが出てこられました。翌日に結婚式を控えている新郎新婦も一緒でした。多分4時まで打ち合わせだったんでしょう。
その方たちを送り出した後、我々も上がらせていただくことに。先ほど外から拝んだ本堂の中を通り抜け(まさにバックステージパスじゃないか)
水月堂に入りました。…と言っても普通の和室なんですが。お線香をお供えし、鎌倉見ブツの目玉である水月観音に見入りました。
丸くくり抜かれた窓の向こうに、その小さな像は座っていました。小さいのです、本当に。びっくりするくらいに。
しかし細かいのです、顔も非常に美しい。青年くらいの年まわりに見えて、でも衣から覗く手や足がふっくらとしていて、
まるで子供のようでもあり…惹き付けられる仏像です。右から見たり左から見たり、近寄ってみたり遠ざかってみたり、
そんなことをしながらも目は水月から一切離せませんでした。「右からと左からと、どちらか好きですか?」と聞かれましたが、
正直どっちとは選べません…!これは予約をしてでも見る価値のある仏像です。 それにしても、まるで水月観音のためにあつらえられたかのような場所なのに、なんとそれは加賀の国の殿様が使用していた仏間だというではありませんか。 それがぴったりと水月観音に合ったのだそうです。別々で作られたものなのに、こんなにしっくりくるってすごいなぁ…! |
水月フィーバーを胸のうちに抱えながら、道を確かめながら浄智寺へ向かいました。 こんな風に奥まってしまってるから見逃していた模様です(笑)。 | |
中国風の門をくぐった向こうに曇華殿があり、そこに三世仏がいらっしゃいます。 阿弥陀、釈迦・弥勒の三尊。贅沢な並びですよね。漆が剥げてしまったのか、左から顔が黒・赤・黒色をしていました。 仏像を眺めているとおばさんがお堂に入り、台の上に上がって火を入れ始められました。 距離はそんなにないのに、仏像との隔たりを感じました…いいなぁ、私も仏像の側近くに仕えたい。 | |
布袋尊を見に行こうとお堂の裏手に伸びる「拝観順路」を行ったら、そこは墓だらけでした。 しかもやぐらの前が墓地化していて、墓の上塗り状態。目の前を若いカップルが歩いてましたが、 デートコースには不向きだと思われます。そのうちトンネルが現れまして、その前にこんな立て札が。 おちゃめです。朗らかな布袋さんに挨拶をし、巡回コースを終えました。と、そこにもおちゃめな立て札があって、 「こちらは逆コースです。それでもよかったらどうぞ」と書いてありました。うーん、自由だ。 |