サードインパクトにより人類、いや生物は一つになった。
傷つけあわない心地のよい世界。
その世界で人々は補完され、戻ってきた。
もちろん全てのものが補完されたわけではない。
ある日突然、一つになっていた世界は崩壊をはじめる。
結果、人々は全員戻ってきた。
―――――― 一人の少年だけを残して。
かけがえのないあなたへ
プロローグ
聞こえる波の音。
見渡す限りの紅い海だった世界は、何事もなかったように戻っていた。
むしろ、サードインパクトが起こる前よりはるかに綺麗になっている。
汚水により濁り、透明感を失っていた海は美しさを取り戻していた。
まるでグレートバリアリーフのような透き通る色。
「う……」
そんな海の浜辺で一人の女性が横たわっていた。
綾波レイ…その姿を思わせる。
違うのは茶色の髪、黒い瞳。
その姿はレイではないことを表していた。
「ここは…?」
頭を振って周りを見渡す。
体の感覚をまだ取り戻していないのか、緩慢な動作で立ち上がった。
自分はどうしてここにいるのだろうか、その女性―――碇ユイは思考をめぐらせる。
(私は…初号機の中に……)
自分が消えた瞬間は覚えている。
(サードインパクト…起こったの?)
ぼやけながらもそんな記憶が残っていた。
夫にそこで再会した。
そして、世界は一つに……
そう、一つになったはず。
ならどうして肉体があるこの世界にいるのか、見当がつかなかった。
「ユイ!」
遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。
目を細めて遠くを眺めると、懐かしい人物が近づいてくるのが分かった。
随分老けたとはいえ、面影を残すその姿。
夫の姿を。
「あなた…」
ゲンドウのように自らも駆け寄っていく。
触れ合い、抱きしめられる体。
ひどく懐かしかった。
けれど、いつまでも身をゆだねているわけにはいかない。
今は現状を知りたかった。
「わたしはどうしてここに…」
「私にも分からん、なぜここにいるのか。とりあえず発令所へと向かえば何かわかるかもしれない」
夫を見上げるユイ。
ゲンドウの顔には動揺と困惑がある。
分からない、それは嘘ではないようだった。
発令所に向かうゲンドウは困惑していた。
ユイがいるということもあったが何よりも戦闘の傷跡が見られない。
N2の直撃をくらい、空を見上げられるような大穴が空いたはずのジオフロントは何事もなく佇んでいる。
それどころか衝撃の余波を受けたはずの場所も何も変わっていなかった。
ジオフロント内部に入り込んでも戦自との戦闘の跡は見られない。
死んだはずの人間は生きており、血痕もなかった。
(どういうことだ…?)
疑問はつきない。
だが、発令所に行けばなんらかのヒントは得られるかもしれない、そう感じていた。
いつもは上から見下ろしていた発令所に足を踏み入れる。
目に映る面々。
自分と同じ様に発令所に何かを求めて来たのだろう。
そこには驚くべき人物がいた。
「キョウコ君に、ナオコ君……?」
遠い昔に死んだはずの二人。
その存在がいた。
「久しぶりねゲンドウ君」
「久しぶり、碇所長…といっても今は司令みたいだけど」
にこやかに話し掛けてくる。
キョウコはともかく、ナオコにまで暖かく出迎えられるは思っても見なかった。
あれほど陵辱した存在なのに。
動揺が広がる。
「どうして…って顔をしているけど、私たちにも分からないの。気がついたら私もナオコさんもここにいたから」
心のうちを見透かしたように言い出す。
内心動揺しているが、伊達に司令を勤めているわけではなく、無表情を作る。
改めて見渡すと二人の人物が欠けていることに気づいた。
「シンジとレイはどうした?」
その言葉に発令所が静まり返る。
戦いに貢献した二人の人物がかけていた。
一人は依代に、もう一人はリリスとして覚醒した存在。
「二人は現在捜索中です。諜報部のほうにも命令を出しておきました。MAGIによるサーチも行っていますが依然見つかっていません」
MAGIへと目を向けたままのリツコが報告をする。
ナオコ同様にその様子からは負の感情は感じられない。
一心不乱にMAGIへと集中するリツコにゲンドウは軽い驚きを覚える。
シンジとレイの二人のためにこれだけ取り込むリツコを。
(せめてもの罪滅ぼしだろうか?)
そう考えてしまう自分に苦笑する。
物事を善意としてとらえきれない。
醜い裏の世界へと踏み入れたせいもあるだろう。
ピーーー
MAGIからのコールが思考を消す。
通信回線を開くと諜報部の報告が飛び込んできた。
「綾波レイらしい人物を発見しました」
「らしい人物?」
リツコはその言い方に疑問を感じる。
そんな人物なはずはない。
レイという存在はその外見からして一人しかいない。
似たような人物はいないはずだ。
クローンはすべて壊した。
代わりなどいないのだ。
「どういうことなの?」
「それは病室へと来てもらえば分かります」
用件だけを伝え、通信をきる。
納得できない…なら自分の目で確かめればいい。
椅子から立ち上がり、白衣をひるがえしながら司令室を出て行く。
残された面々も慌ててその後を追うのだった。
無機質なベットの上にいる少女。
その姿はリツコを驚かせるには充分すぎた。
「レイ…なの?」
「……そうですが? 赤木博士、何を言ってるのですか」
自分自身のことは分かっていないらしい。
だが、その口調は間違えようもなく彼女であったことを示した。
「レイ、自分の姿を鏡で見た?」
「いえ」
ポケットに入っているコンパクトな鏡を取り出し、レイの手に乗せる。
「よく見てみなさい」
リツコに促されて、鏡に目を向けた。
そこに映る自分の姿にレイは驚く。
濡れたような黒髪に茶色の瞳。
よく見てみれば自分の肌の色もまだ普通の人より薄いとはいえ、明らかに普通の人に近づいていた。
それはまるで普通の『人間』のように。
遅れてきた人たちもその姿には驚く。
「あ、あんたほんとにファースト?」
なかでもアスカは一番強烈だったらしい。
見慣れたと思ったらこれである。
「そう……」
本人はどうでもいいようだが。
話もかみ合っていない。
「碇君は?」
いつもいると思われていた少年がいない。
それがレイには気がかりだった。
答えあぐねるリツコに代わってゲンドウが答え出す。
「シンジはまだ見つかっていない」
「そう…ですか」
明らかに落胆の表情を見せる。
彼女自身もなぜこんなに落ち込んでいるのか分かっていない。
そんなレイの様子に誰も声をかけることはできなかった。
気休めになる言葉さえも。
シンジは見つからない。
それでも時は刻み続けていく。
それぞれの思いとは別に。
あとがきというなの戯言
O:6000HITおめでとう〜
A:っていつのこと言ってんのよ!
あんた今現在カウンタ21000いってのよ!
O:忙しかったんだよ…連載で。
A:私がぜんぜん出ていないやつなんか書くな!
O:でもかなり好評だよ。
記念いいから続き書いてっていうのも来たくらいだし。
A:まぁいいわ…それよりこれはどういう話にする気?
O:EOEだね。
これで本編再構成、逆行、本編SS、EOEと出るものは出た。
これ以上やることはないだろ。
A:……まだあるわよ。
O:えっ? 何?
A:LAS書きなさい!
O:いいよ。
A:…えっ?ほんとに?
O:omiはアスカちゃんのこと嫌いじゃないよ。苦手なだけだし。
A:なんか都合のいい言い訳に聞こえるけど…あんた頭でも打った?
O:むぅ…なんか勘違いしている人が多いなぁ。
omiはレイじゃないとダメという極端な人じゃないよ。
LASな話も好きだし。どちらかといえば、LRSよりなだけ。
A:以外……
O:だからレイちゃん今回の座談会には出してないよ。
そのうちアスカのFFも書く気あった。あまりベタベタなのはしないだろうけど。
A:き、期待しているわよ。
O:うむ、それでは次回で
A:そ、そうね。
R:omi……そのうち殺すわ。
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