私は彼と出会った。
その時からは私は変わることができた。
運命の出会い……?
運命なんてものじゃない。
私が彼にあったのはただの偶然だもの。
また、逢う日まで
私こと、綾波レイは淡白な少女だといわれる。
何事に対しても関心を示すことがなく、愛想が悪いらしい。
友達も少なく声をかけてくるのも一握りの人だけ。
他人の言うことなんか別に気にしないけれど、それがまた愛想が悪いといわれる。
周りの人たちが言うように物事に対して関心がないわけじゃない。
私の関心を引くものがないだけだ。
愛想が悪い?
上辺だけの付き合いなんて長続きしないのに?
私に対して深入りしないのに、周りの評価だけで私という人物像を勝手に決め付ける。
そんな人たちを私は友達と呼びたくない。
嫌な存在。
だけどそれ以上に私という存在が嫌い。
物事を客観的に見て、分析する。
結局周りの人たちが言うような存在なのかもしれない。
ガラガラ
教室の扉が開き教師が入ってくる。
「静かにしろ〜今日は転校生を紹介する」
別に転校生なんか珍しくもない。
どうせ、興味がないもの。
「碇シンジです」
担任の呼び声とともに一人の少年が登場し、自己紹介を始める。
「松代から来ました。趣味はチェロの演奏。この町には一時的に滞在するだけなので、1ヶ月ほどしかいませんが、よろしくお願いします」
女子の間からため息が漏れる。
確かに、美形の部類に入るだろう。
だから?
外見がよければそれでいいの?
ああ、またこういうことを思ってしまう。
だから淡白だなんて言われる。
「それじゃあ、碇は綾波の隣へ行ってくれ。一番後ろの空いている席だ」
「はい」
私の隣の席へと向かってくる。
いつも空いている席。私のことが苦手だから、いつも隣は空いてしまう。
「よろしく、綾波さん」
彼は微笑みながらあいさつをする。
「……よろしく」
愛想もそっけもない私。
だいたいはこれで離れていくみたい。
? なんだか、私のほうをじっと見ている。
「何?」
「綾波ってかわいいね」
「な、何を言うのよ……」
不覚にもどもってしまった。
普通いきなりそんなこと言う?
褒められて嬉しくないわけじゃないけど…
周りの女子がキャーキャーうるさい。
「なんだ碇、初日でいきなり口説きか?」
男子がからかい始める。
「別に、思ったことを口にしただけだよ?」
きょとんとした顔で彼は言った。
本当にただそれだけみたい。
天然?
けど、その反応は誰も予想していなかったみたいで追撃をこころみることはできなかった。
予想通り、彼はすぐにクラスに慣れた。
持ち前の明るい性格に、ルックス。
嫌う理由はない。
午後になると、引越しの後片付けがあるようで帰っていった。
私の彼への第一印象は変な人。
だって、初対面の人物にいきなりかわいいなんていうんだもの。
ヒカリ…私の友人にもそのことについてからかわれるし、もぅ……
あれから女子の視線が痛いから、学校が終わってすぐに帰った。
「ただいま…」
「あら、おかえりなさい」
綾波ユイ、私のお母さん。
いつも優しく出迎えてくれる。
「今日は早かったのね」
「うん、何もなかったから」
「それじゃあ、夕食の手伝いしてくれる? あの人もそろそろ帰って来るから」
「分かった、着替えてくるから待ってて」
階段を上り、自分の部屋へと向かう。
簡単な私服へと着替え、母のもとへ。
そろそろお父さんが帰ってくる。
「……ただいま」
「お帰りなさいあなた」
「お帰り、お父さん」
綾波ゲンドウ…お父さんはちょっと外見が怖いといわれる。
あの髭とサングラスがマイナスね。
「ご飯ができてますよ」
「うむ、分かった」
どかっと席に腰を下ろす。
亭主関白に思われがちだけど、実際はお母さんに頭が上がらない。
…私もなんだけどね。
食事が始まり、たわいもない日常会話を交わす。
変わらない毎日。
これが私の一日。
変わらなくてもいい。
そんなものじゃない? 毎日なんて。
日曜日。
ちょっと外行きの恰好にして街中をぶらつく。
家の中にこもっていてもつまらないし。
ただ歩くのも暇つぶしにはなるわ。
歩いているうちに開発地区へのほうへ向かっていた。
いつのまにか人影もなくなっている。
辺りには工事の機械音だけが響き渡る。
あれ? 誰かいる…なんかきょろきょろしてるわ。
……碇君?
碇君も私に気づいたらしく、近寄ってくる。
「こんなところでどうしたの、綾波」
それはこっちのセリフなんだけどな…
「…ただぶらぶらしていただけ」
「そうなんだ。僕は道に迷っちゃってさぁ、困ってたんだ」
頬を掻きながら、恥ずかしそうに笑う。
以外。
なんでもできそうにみえたんだけど。
だから、なんだかその様子がおかしくて…
「笑うことないじゃないか……」
笑ってた? なんだか久しぶり。
「ごめんなさい」
とりあえず、謝っておこう。
「でも…」
でも?
「笑ってる綾波もかわいいね」
「えっ」
またそういうことを言う。
「普段も、もう少し笑っていたらいいのに」
別に笑わないわけじゃないわ。
笑えるようなことがないだけ。
「綾波が笑ったのを見たの今日が初めてだよ。なんだか得した気分だ」
「な、何を言うのよ」
うう〜、照れちゃうじゃないの。
そういえば、碇君とはよく話している気がする。
隣の席だということも歩けど。
違う、碇君が私に話し掛けてくれるんだ。
どうしてだろう。
聞いてみようかな。
「碇君は、どうして私に話し掛けてくるの?」
一瞬驚いたような顔をする。
「話すのに、理由が必要なの?」
「……」
「話したいから話す。それだけじゃいけないのかな」
「…そうね」
なんて、あたりまえのことを言うんだろう。
だけど、私は人とは違うから。
赤い瞳に人より色素が薄い肌に薄い水色の髪。
いつも好奇の視線にさらされる。
小さい頃はよくいじめられた。
守ってくれるのは両親だけ。
大きくなるにつれて私は綺麗になったといわれる。
それからは手のひらを返したようにみんないじめなくなった。
都合のいい人ばかり。
だから、わたしは他人を信用することができない。
「もしかして、自分のこと気にしているの?」
私の表情を見て、見透かしたように彼がいってくる。
「そうよ」
「自分が他人とは違うから、一線を置く。他人が自分のことを分かってくれないから、深くかかわらない。
外見ばかりで判断することが気に食わない。そんなところ?」
「ええ」
「別にいいんじゃないの、君がそう思ってるなら。それは他人がどうこう言うものではないからね」
彼も私に深入りはしてこない。
嬉しくもあるが寂しくもある。
「僕もあまり深く人と関らないからなぁ。転校が多くてさ、友達ができたと思ったらまた転校の繰り返し。
だから、転校するまでの間は楽しくありたいんだよね」
「上辺だけの付き合いでも?」
「それでも、だよ。損得ばかりで付き合うわけじゃないし。付き合いなんてそんなものだと思うよ。いちいち深く考えたら疲れるよ」
理屈では分かってるんだけどね…
「だめなのは綾波さんのほうだよ」
私?
「自分が他人とは違うということを言い訳にしている。そして、それを受け入れている」
「……そうかもしれない」
「ダメとは言ったけど、悪いことじゃないよ。ひとそれぞれだし、他人には他人の事情がある」
「…………」
「綾波さんは自分のこと好き?」
どうなんだろう?
私はたぶん…
「あまり好きじゃないかもしれない」
彼は笑った。
何故?
「綾波さんは自分のことがよく分かっているんだね。だけど、ちょっと素直じゃないね」
ム、余計なお世話…
「あははは、ゴメンゴメン。お説教みたいだったね。僕の一方的な意見だから気にしなくていいよ」
「…別に気にしていないもの」
気にしているけど。
「綾波と話せてよかったよ。それじゃあね」
「あ…」
行ってしまった。
なんだったんだろう? 結局何が言いたかったのかな?
あれ、戻ってきた。
「どうしたの?」
「道に迷ってたんだ…帰り道が分からないよ」
また頬を掻いて苦笑い。
ホントに変な人。
ちょっと好きになれるかもしれない。
「住所どこなの? 案内するわ」
「えっ、案内してくれるの? ありがとう」
碇君は私に笑いかける。
とても、優しい笑み。
顔が赤くなってしまう。
この笑顔は要注意ね…
それをごまかすため、私は顔をそむけると早足で案内を始めた。
あれから私はよく碇君と話をするようになった。
彼の新鮮な意見は聞いていておもしろい。
閉じこもっていた自分の考え方に新しいものがうまれる。
最近はお母さんに「学校で楽しいことがあったの?」ってよく聞かれる。
そんなに楽しそうにしていたのかな?
雰囲気が柔らかくなったっていうけど…ヒカリもそんなこと言っていた。
彼のおかげかもね。
もしかして、好きになったのかな。
…よく分からないなぁ、好きになったことなんてないから。
会えば分かるかもしれない。
でも、彼は明日でいなくなってしまう。
一ヶ月、たった一ヶ月しかここにいない。
これほど時間を短く感じたのは初めて。
もっと、いろんなことを話せばよかったな…
「本日で碇は転校する、碇」
担任の呼びかけで、碇君は教壇へと立つ。転校してきた初日と同じ光景。
「一ヶ月という短い間でしたが、楽しくできました。いろいろありがとう。ここでの思い出は忘れることがないと思います。…なんて、堅苦しいかな?」
真面目に言ってたのに、急に茶化し始める。
ホント碇君らしい。
お別れか…見送りにはいこう…
確か16:00のリニアで行くって言ってたよね。
はぁ、なんとか間に合った。えっと、碇君は……・いた。
「碇君!」
「あれ、綾波さん? もしかして、見送りに来てくれたの」
「うん」
「ありがとう、誰も来ないと思ってたのに」
なんか、嬉しいな。
碇君にお礼を言われると…
「…………」
「…………」
沈黙が続く。
何か話さないと…
あ、リニアが来ちゃったよ…どうしよう……
「お別れだね」
つぶやくようにして碇君が言う。
お別れ…なぜかひどく悲しい響き。
もう二度と逢えなくなるような気がする。
「さよなら…じゃないか。また会うかもしれないからね。またね、綾波さん」
何か言わないと……!
「い、碇君!」
「うん?」
「また…また逢えるよね?」
彼は笑顔を見せてくれた。
「そうだね、またきっと逢えるよ」
だから、
「「またね」」
碇君は行ってしまった。
また、逢えるそう言っていた。
だから、次の行き先も電話番号もメールも何も聞かないでおいた。
結局彼が好きかどうかはっきりとは分からない。
でも、もしこの気持ちが好きというものなら彼に次に逢う日まで取っておこう。
忘れないでいよう。
また、逢う日まで。
あとがきというなの戯言
O:はっはっはっ<壊れ気味
またシリアスになっちまったぜぃ
……なんでだぁ〜
R:碇君とは結局どうなの?
O:知らん。運よければ、また逢えて結婚。もしくは、もうすでに彼女がいてだめだった。
R:はっきりしないの。
O:あいまいさがいいのだよ。ラブラブなら他の所にもあるだろう。
R:でも、RYOさんからのリクエストはラブラブなの。
O:それについてはきっちりかかせてもらう。
確かに今まではラブラブな物を書いていなかったし。
R:嬉しいの…
O:期待しておきなさい。
それでは、また次回の作品で。
R:またなの。
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