私はまた彼とめぐり合った。
あの時以来…5年ぶりに。
それは運命?
いいえ、やっぱり偶然。
また、逢う日まで 終劇
中庭のベンチに座り、レイは風に身を任せていた。
いつもならそれで落ち着く。
でも、今日は違った。
隣に一緒に座っているアスカの一言のせいだ。
『碇シンジって言う人なの』
それは自分が気になる、もしかしたら好きかもしれない存在。
その名が出た時にひどく動揺してしまった。
でも、改めて考えれば同姓同名な人なのかもしれない。
そう思いたかった。
だからアスカに確認するためにここに呼んだ。
「ね、アスカ。その人とはどういう出会いをしたの?」
「出会い? え〜と、考え事をしながら歩いていたら道端でぶつかっちゃったのよ。それで頭にきたからどこ見てんのよ! って怒鳴った」
そこまで聞くとてもいい出会いとはいえない。
むしろ、男性のほうにとっては同情さえ感じてしまう。
「それで?」
「私が悪いはずなのに、シンジは素直に謝ってくれたの。今考えてみたら、そのときに向けられた笑顔に魅了されたのかもしれない」
恥ずかしそうに顔を赤らめている。
アスカがそんな顔をしているのはすごく新鮮だった。
それよりも私が気になったのがシンジと呼び捨てにしていること。
なぜか胸がズキリと痛んだ。
「で、シンジは道に迷ってたの。久しぶりに来たって言ってたわね。だから、目的地まで案内してやることにしたの」
「アスカが?」
「なによ〜私だってたまにはいいことするわよ。それにぶつかったのは私のせいだったんだし、それくらいはしないと悪い気がしたのよ」
同じ。
私の時と同じだ。
やっぱり碇君なのかな?
心に暗い闇が入り込んでくる。
「……ねぇ、聞いてるのレイ?」
「アスカ!」
「は、はい!」
いつもの私では考えられない勢いでぐっと迫る。
考えていてもしょうがないよね。
「その人と会わせてくれない?」
なんか今日のレイはすごい迫力あったわね。
鬼気迫るっていうか。
勢いに押されて頷いたけど、シンジに連絡しないといけないよね。
携帯電話を取り出し、登録してあるシンジの番号を押す。
短いコールのあと、すぐに返事が返ってきた。
『はい』
「あ、シンジ」
『アスカか、どうしたの』
「明日あいてるかな?」
用件だけずばっと言うのはアスカらしい。
もう少し説明をつけたほうが無難なのだが。
『明日か……う〜ん大学にいかないとダメなんだよね』
「シンジって大学生だったの?」
そういえばぜんぜんシンジのこと聞いてなかった。
大学生ってことは同じくらいの年齢なのかな。
年上に見えるんだけど。
『明日から大学に行くことになったんだよ。手続きも終わったし』
「どこの大学?」
『第三』
「第三…って、私と同じ大学じゃない」
『へぇ〜そうだったんだぁ』
驚きの声が聞こえる。
同じ大学ってことは毎日会うことができるんじゃない。
なんか運命を感じちゃうわね。
そういうことならさっそく待ち合わせしよ。
「じゃあ、中庭ってどこにあるか分かる?」
『一通り見てきたから大丈夫だよ』
「それなら昼に待ち合わせね」
『うん、分かったよ』
「遅れてきたりしたら承知しないわよ」
『はいはい、それじゃあね』
携帯電話を切り、バックにしまう。
余韻にひたってしまっていた。
シンジと話していると普通の女の子になっちゃうのよね。
明日かぁ…楽しみね。
ん……?
なにか気になることがあったんだけど、まぁいいか。
翌日。
「あの親父、講義が長すぎるのよ!」
隣で一緒に走っているアスカはご立腹だ。
もちろん私もだけど。
私の知っている『碇シンジ』かもしれない人物との待ち合わせなのに、講義が長引いたせいで遅れてしまった。
約束を取り付けた自分のほうが遅れてきては相手に失礼だ。
アスカはきっとそう思ってる。
だから急いでるんだけどね。
こういうときは中庭までの距離が長く感じるなぁ。
長い廊下を駆け抜けて、中庭を目指す。
室内から抜け出すと新鮮な空気の香りに満たされた。
(いつもと雰囲気が違う……)
外へ出た瞬間感じた。
この時間帯は昼時もあってか騒がしい。
だが、今日に限っていつもより喧騒が少なくなっていた。
中でも女性たちの視線が一つのベンチに注がれている。
ベンチに腰掛けている男性。
目を閉じて風に身を任せている様子はどこか幻想的で目を引くものがある。
そして何よりもレイの目を惹きつけた。
背丈や体格は変わっているけれど、あの頃の面影を残す顔。
それは間違いなく自分の知るシンジだった。
「碇く……」
「シンジ!」
私よりも早く声をかけるアスカ。
すっかり出鼻をくじかれてしまった。
声に反応してゆっくりと目を開けてこちらを向く碇君。
「遅い到着ですね、お姫様」
茶化しながら笑顔を向ける。
懐かしさを覚えながらアスカの後を追った。
「悪かったわよ…」
うわ…アスカが素直に謝っている。
天変地異の前触れね。
「で、どういう用件なの?」
「シンジに会わせろってうるさい奴がいるからさぁ」
後ろを振り返る。
つられるようにシンジもアスカの視線を追う。
二人の視線がレイに向かってきた。
「もしかして…綾波さん?」
私は驚いてしまった。
たった一月しかいなかったのに私のことを覚えていたから。
すごく…嬉しい。
「うん」
「5年ぶりだね」
「5年ぶりだよ? それなのにどうして分かったの?」
「綾波さんの外見を忘れるわけないだろ?」
蒼銀の髪に紅い瞳。
確かに他にはめったにいない。
昔ならその言葉にコンプレックスに持っていた。
知らない人に言われたら結構傷つくもの。
でも、コンプレックスをなくしてくれた碇君になら言われても大丈夫。
「そうだね」
だから笑って応えられる。
「知り合いなの?」
アスカが驚いている。
まさか、知り合いだとは思っていなかったみたい。
「中学生の時に一月だけ一緒のクラスだったんだ」
「そう…なんだ」
「そういうこと」
あれ、どうしたんだろ?
アスカが大人しくなっちゃった。
久しぶりの再開に会話が弾む。
だが、遅れてきたせいかあまり時間はなかった。
すぐに昼の終了を告げられ、午後の講義に行くことになる。
アスカは悩んでいた。
レイがシンジと知り合いだったと言うことに。
まさかレイの言う「碇君」がシンジだったなんて……
『どこにいるんだろうなぁ…碇君』
この時に言ってたじゃない。
ああ〜私ってバカだ。
少しは疑っておけばよかった。
友達の好きな人は絶対に好きにならないって決めてたのに……
隣に居るレイをちらちらと見ながらため息をついてしまう。
諦めきれないのよね……
あんなに人を好きになったのは初めて。
私にお世辞を使ったりもしてこないし。
「ごめんね、レイ……」
「何? アスカ?」
「シンジのこと……」
言わないとダメだよね、やっぱり。
「レイが好きなのってシンジなんでしょ?」
「えっ…」
「私もシンジのことは好き……分かったの。レイがシンジと仲良く話しているのを見てたらむかむかした。なんか嫌な気持ちになった」
視線を落としてため息をつく。
そして意を決して告白をした。
「その時分かったの……やっぱりシンジのことが好きなんだなぁって。だから、諦めない。レイには負けないから」
初めてそう思えた相手。
目の前で私の宣戦布告を聞かされたレイは呆然としていた。
ドサッ
ベットに体を倒す。
精神的に今日は疲れた。
アスカからの宣戦布告は私の心に強く残っている。
『その時分かったの……やっぱりシンジのことが好きなんだなぁって。だから、諦めない。レイには負けないから』
好き……か。
それは…私も同じ。
アスカと碇君が仲良くしているのが嫌だった。
自分のほうを向いてほしいって思ったもの。
でも、
でも、アスカが相手じゃかなわないよね。
男の人ならアスカみたいなタイプのほうが好きだもの。
仕方……ないよね。
枕に顔をうずめる。
自然と涙がこぼれてきて、枕に染みを作り出した。
はじめは少しだけ……
しかし、諦めようと思うたびにその量は多くなっていく。
やっぱり…嫌。
出逢ったのは私の方が先なんだよ…?
5年間分からなかった気持ちがようやく分かったのに。
諦められない。
私も諦めない。
明日言おう、今の気持ちを碇君に・・・
そして、ゆっくりと夢に沈んでいった。
目元は腫れてないよね…?
起きるなり自分の顔を確認する。
泣いていた顔なんて見られたくない。
パン!
頬を軽く叩いて、気合を入れる。
伝えよう。
いつもより早めに出て、碇君の到着を待つ。
この時間が待ち遠しく、また辛い。
胸の鼓動が止まらない。
顔を上げて思い人が来るのをひたすらに待つ。
いつもと違うレイの様子に周りの関心が集まる。
どのくらい待っただろうか?
ようやく望むべき人の姿が目に映る。
静かに駆け出し、その人の下へ。
高鳴る鼓動を押さえつけ言葉を紡ぐ。
「おはよう、碇君」
「おはよう、綾波さん」
そして、思いを伝えよう。
「碇君あのね……」
5年間分からなかったこの気持ちを。
「私は…」
また出逢えたあなたに。
「碇君のことを…」
言葉に乗せて……
伝えます。
あとがきというなの戯言
O:9000HITで〜す。
あ〜やっぱりはっきりしない終わりっていいねぇ。
R:どこが?(怒)
O:想像力をかきたてられるっていうか・・・
R:またそうやって逃げるのね・・・
O:はっきりとしたものなんてありきたりだし〜
A:それで、私はたんなるレイの引き立て役?
O:はぅ!
A:LASな予感をさせておいてオチはこうなのね・・・(怒)
O:いいじゃん…今回は視点変更してみたかっただけだし
A:余計たち悪いわ!
O:それにさ、分かったんだよね。
原作設定のアスカは書けないけど、こういうアスカは書けるんだよ。
R:それはサルの出番が減っていいことだわ。
A:言ってくれるわね。
O:ま、属性なしが一番いいけど。
R&A:死ね!
O:や、やっぱり…LRSが一番だ……
BACK
INDEX