ヴァイオレット奇譚2

Chapter3◆「暗い森の晩餐会―【1】」




 廊下ですれ違うと、詩織はおもむろに俯いて万莉亜の視線を避けた。
――守屋さん……
 万莉亜は、開きかけた口を閉じて立ち止まる。その横を、足早に詩織は通り過ぎていった。
 どうやら、随分と嫌われてしまったらしい。
「…………」
 
 万莉亜と待ち合わせをしていたという名前の思い出せない男。
 記憶が抜け落ちているという初めての体験は随分奇妙なものだったが、自分がその男とメールで やりとりし、待ち合わせをしていた事は、残った携帯のデータから薄っすらと理解できる。 問題なのはここからだ。
 そのやりとりのきっかけは、詩織が教えてくれた 掲示板に記載されたアドレスからだった。彼女も同じアドレスにメールを送信している。彼女があの男と接触している可能性は十二分にある。
 あの団体の裏には、人間ではないものが大きく関わっている。
 それを知っていたから、万莉亜は何度も詩織に詰め寄り、関わってはいけないと口をすっぱくして繰り返した。
 詩織は「関わらない」と繰り返したが、彼女の言葉を信用できなかった万莉亜は、 相手がうんざりするくらい彼女にしつこく付きまとった。
――……やりすぎたかな……
 おかげでこのざまだ。
 詩織はもう万莉亜の顔を見ようとしない。何度繰り返しても信用してもらえないのだから、当然かもしれない。 顔を合わせるたびに嘘つき呼ばわりされるのはさぞつらいことだろう。
 けれど万莉亜には確信があった。
 彼女は嘘をついている。



「どうしてそう思うの?」
 寝起きのクレアが、テーブルに頬杖を付きながら尋ねる。
 半分しか開いていない瞳を窓の外の景色に向けている彼は、あまりこの話題に 乗り気ではないらしい。それでも万莉亜はめげずに話を続ける。
「だって、夜はほとんど学園を抜け出しているし、休日も、守屋さんアルバイトもしていないのに しょっちゅう外泊するんです。最近は学校も休みがちだし……」
「彼氏でも出来たんじゃないかな」
「守屋さん、男の人には興味ないって言ってましたよ」
「あっそう。じゃあ、彼女かな」
「……真剣に聞いてください。あの団体に関係してるに決まってるじゃないですか。 時期もちょうどぴったりだし、それしか考えられません」

 眉を吊り上げて言い切った万莉亜を見て、クレアはため息をついた。
 毎日毎日、顔を合わせれば彼女の口から出てくるのは守屋詩織の話題だ。 その女の何がそんなに万莉亜を夢中にさせているのかは知らないが、いい加減面白くない。

「そうだとして、別にいいんじゃないの。好きにさせておけば」
「そういうわけにはいきません。クレアさん本当は知っているんでしょう? 守屋さんは、 その団体と関わっているんですよね? もう嘘はなしですよ」
「君に嘘をついたことなんてただの一度も無いよ」
「……そんなに堂々と嘘つかないでください」

 呆れて脱力する万莉亜に彼は微笑んで、それから頬杖を付いていた腕を伸ばし、 指先を万莉亜の細い指に絡めた。
 正面に座っている彼女が、突然身を固くする気配がしたが、そんなものはお構い無しに彼女の指先を 弄ぶ。二人の貴重な時間を、守屋詩織にはもう十分潰された。これから先一秒だってその女生徒にくれてやるつもりはない。

「万莉亜。君は僕と幸せになる事だけを考えていればいいんだよ」
「……私の幸せに守屋さんの安全は不可欠です」
「…………あ、そう」

 ざっくりと切り捨てられてクレアが落胆する。
 彼女は申し訳無さそうな顔をしながらも、一歩たりとも引かない姿勢を見せた。
――まったく……
 本当に、何がそこまで彼女を固執させるのだろうか。 正義感では説明の付かない執着が垣間見える。いつものように適当にお茶を濁すことも出来やしない。

「仮にそうだとして、君に何が出来る……いや、君は何もしなくていい。僕に出来ることだって 何も無い。簡単に曲がるような意志でないのなら、折れるまで外野は見守る事しか出来ない」
「……何か出来るはずです。取り返しが付かなくなってからじゃ遅いんです」
「自業自得だろ」
 さりげなく返されたクレアの一言に、万莉亜が目を丸くする。
 彼女はほんの少し悲しそうに目を伏せてから、クレアの手元にあった自分の指を引き抜いた。

「……自業自得なんかじゃ……そんな冷たい言い方しないでください……」
「万莉亜?」
「守屋さんがどうしてこんな事するのか私には分からないけど、でも、きっと理由があるはずなんです。 心が弱っているんです。彼女はそこにつけこまれたんです。自業自得なんかじゃありません。心が 弱っている人に、……迷ってる人に、そういう事をしたらいけないんです。……絶対に」

 膝の上で拳を強く握りながらそう言うと、彼女はおもむろに立ち上がり、理事長室を後にする。
 小さな背中は、悲哀に満ちていた。随分と冷たい恋人にがっかりしたのかもしれない。
 そんな彼女と入れ替わりに、立ち聞きしていたルイスが何食わぬ顔で部屋に入る。 案の定テーブルに突っ伏していた主を見て、彼は苦笑しながら彼女の飲んでいたカップを下げ始めた。

「まだこだわっている様子ですね。万莉亜さんは」
「……こだわるも何も……何であんなにむきになるんだろう」
 頭を持ち上げて再び頬杖を付く。
 こんなことなら、寝ていればよかった。 「相談があるんですけど」と扉をノックされて素直に起きたことをクレアが後悔する横で、 ルイスは手早くテーブルを片付け、それから小さなメモ用紙を胸のポケットから取り出した。
「瑛士からの伝言です。今夜の集会の場所と時間。それからメンバーの名前。何でも今夜は ”謝肉祭”と銘打った特別な催しがあるそうで」
「パレードでもするのかな。楽しそうだね」
「……だといいのですが。メンバーには守屋詩織の名前も載っています」
「またその名前か……」
 うんざりしながら呟いて受け取ったメモ帳を手の平の中で丸めてしまう。
「どうしますか? 念のため、瑛士に見張らせることも出来ますが……」
「死にたいやつは勝手に死ねばいいさ」
「分かりました」
「……瑛士は今どこに?」
「さぁ、友人の家に行くと言ったきりですね。その足で集会に向かうようですよ」
「あ、……そう。友人ね」

 頷いてから部屋を出ようとするルイスを呼び止める。

「瑛士に伝えろ。くれぐれも、死にたいやつは死なせるようにと」
「はい。ですが、重々承知していると思いますよ、彼は」
「まぁ……一応」
「分かりました。伝えておきましょう」

 そう言ってルイスは静かに部屋の扉を閉める。
 一人残されたクレアは、窓の外のまだ明るい空を見上げて目を細めた。
 何か考えなければいけないような気がするのに、どういう訳か頭が回らず、 上手いアイディアの一つも出てきやしない。



******



 学生の一人暮らしにしては随分と上等なマンションの一室。
 瑛士はそこで、浴槽の中ドライアイス漬けになっている死体を眺めていた。大柄な男だ。 これを殺しここまで運ぶのは、細身の恭士郎にとってさぞ重労働だったことだろう。そんな事を考えていた。
「馬鹿だな」
 その一言しか出てこない。違法な薬の売人だというこんな分けのわからぬはみ出し者を手にかけたせいで、 手塩にかけて育てられた秀才の人生はおしまいだ。
「毎日毎日、コレを冷やすことばかり考えてるんだ」
 隣で黙っていた恭士郎がぽつりと呟く。
 そうだろう。腐敗し始めれば、腐臭は恐ろしいほどのスピードでもってマンション内に広がる。 腐り始めた人の肉は、涙が出るほどにひどい悪臭を放つ。
「……お前の罪だろ。背負って歩けよ」
 無駄だと悟りつつも、口ではそう言い、頭では別のことを考える。死体の一つや二つ、 クレアに頼めば隠蔽は可能かもしれない。引き受けてくれるかどうかは別として、可能か不可能かで考えれば、 おそらくそれは可能だ。そうすることで、少なくとも今の恭士郎は救われる。しかし、目の前の息絶えた男を 見ていると、それを言い出す気にはなれなかった。薬の売人であろうと、たとえ世間から見放されたならず者であろうとも、 彼には生き続ける権利があった。何人たりとも奪えない彼の権利。
「背負って歩くさ。ただ、加瀬川家に迷惑をかけるわけにはいかない。僕はこの社会から姿を消し、 罪を背負いながら一人歩く。だけどそのためには、力が必要なんだ」
 低い声で恭士郎が言う。強い意志を持った彼の言葉は、最早正否などに関心はなく、 忠告に耳を傾けるつもりも無さそうだ。
「時間だな」
 そう言って彼が風呂場を後にし、瑛士は黙ったままその後に続いた。小さな浴槽の中、窮屈そうに 体を折り曲げていた男の顔を見ていると、声にならない男の恨み辛みが聞こえてきそうで、居心地が悪かった。「許すな」と 彼が言う。
 去り際、「分かっているよ」と瑛士は心でそっと囁いた。



 集会は、午後十一時から、学園とは随分離れた場所で行われた。
 人里離れた山奥にバスやタクシーを乗り継ぎどうにかたどり着くと、目の前に現れたのは 大きな白い洋館で、見上げた瑛士が思わずあんぐりと口を開けて呆ける。ご丁寧に、ライトアップまでされているが、 一体誰の趣味だろう。例えばこれがハリウッドスターの別荘ならまだしも、怪しい宗教団体の総本山となると、かなり悪趣味に 思えてくるから不思議だ。
「三井さん、加瀬川さん。お待ちしていました」
 呆然と立ちすくむ二人に、屋敷の入り口に立っていた黒服の男が声をかける。ニコニコと愛想のいい 男性に、瑛士も作り笑顔で対応する。スパイだとばれたら一環の終わり。八つ裂きにされて食われるのが落ちだ。 最悪ばらされて海に沈められるかもしれない。胸ポケットに入った小さな鏡を取り出し、コンタクトレンズが ずれていないか何度も確認し、黒服には見えないようにさりげなく強い匂いの香水を手首に吹きかけていると、隣の恭士郎に「ナルシストだ」とからかわれた。
 黒服の男に通された一階のパーティーホールには、すでにアルカードのメンバーが数人揃っていて、 中にはあの日湿ったビルで瑛士や恭士郎を面接した幹部らしき人物の顔もあった。
「あのババァ……面接のときの」
 恭士郎にそう耳打ちすると、彼が小さく頷いた。
「五條慶子(ごじょうけいこ)だよ。知らない?」
「は?」
「一応芸能人だよあの人。どっかの会社の社長かなんかで、たまにテレビでご意見番みたいなことしてる。 俺は面接のときにすぐ気付いたけど、翔太くんテレビとか見ないの?」
「……あんまり」
「きつそうな顔してるよね」
 恭士郎の言うとおり、ガリガリの体にギョロリとしたきつい目つきの五條は、体こそ小さいものの他者を威圧するような 雰囲気を纏っていて、瑛士も第一印象はあまり良くなかった。 しかし今日の派手な衣装と濃すぎるメイクを施した彼女を見て、その第一印象が揺るぎないものへと変わる。
 ただそれ以上に気になるのが、彼女の隣に立っている小太りの中年男性だ。 グレーの背広を着たその男は、一見平凡そうなサラリーマンを装ってはいるが、瑛士はその場にいるほかの誰よりも 彼を警戒した。
 サングラスだ。
 この場にいる彼だけが、サングラスをかけている。それも、出で立ちとは明らかに不似合いな漆黒のサングラス。 似たようなものを、自分やクレアも愛用している。
――最悪だな……
 テスト合格者の顔合わせを兼ねた食事会だと聞かされていたので、幾分軽い気持ちでやってきてしまったが、まさか 同胞がいるとなると、事情が一気に変わってくる。もし彼が第四世代ならば、香水程度で匂いが誤魔化せるものか。 ばれるのは時間の問題。いや、瑛士がタクシーに乗ってこの敷地に近づいてきた時点で、すでにばれていると 考えていい。同世代の鼻は誤魔化せない。個体差はあっても、そう簡単にはだませない。
――引き際、か……?
 バレているのは間違いない。それとも同じ幹部のフリをしてみようか。この団体の裏に第四世代がいることは 間違いない。それがどの程度の規模かは分からないが、幹部同士熟知しきれていない人数ならば誤魔化せるかもしれない。 面白がって面接を受けたといえばいい。言い訳なんてどうとでもなる。手土産もなしにノコノコと帰るわけには行かない。
「俺、挨拶してくる」
「え! ちょ、ちょっと、翔太くん!」
 先手必勝。動揺する恭士郎を置いてスタスタとフロアを突っ切った瑛士は、壁際でシャンパン片手に談笑する 五條とサングラスの男の前に立った。
「あら、あなたは……」
 先に口を開いたのは五條慶子だった。肩の出た赤いイブニングドレスに身を纏った彼女が、面接の時とは 比べ物にならないにこやかな笑顔を瑛士に向ける。まるで媚を売るようなその笑みに瑛士は寒気すら感じたが、 それを顔には出さずに口元だけでにっと微笑む。
「三井翔太さんね? 私が面接したのよね。可愛い男の子だったから覚えてるわ」
「ありがとうございます」
「こちら春川さん。三井さんは知らないでしょうけど、彼はアルカードでも特別な存在なの」
「……というと」
 そうに違いないだろうなと思いつつもさりげなくちらりと隣の男に目をやる。春川と呼ばれた男は、 真っ直ぐに瑛士を見つめていた。サングラス越しでも、目を見られているのだと分かる。心臓がどきりと 音を立て、額に汗が浮かぶが、瑛士は何てことない風を根性で装い続けた。
「春川さん、たった一人の成功者なのよ」
「……え」
「選ばれた方なの。五番目の血にね。あなたにもそのうちに意味が分かるわ。今日はそのための 親睦会だもの」
「…………」
 含みを持たせた五條の言葉だったが、そのうちどころか瑛士にはその言葉が意味するところがすぐに 分かった。
――第五世代……こいつが……
 たった一人の第五世代。
「到底理解の範疇を超えた超能力を持っているの。ね、春川さん?」
 五條の言葉に、春川が少し恐縮したように微笑みながら頷く。
――……超能力。やっぱりな
 ふざけんな、と瑛士は内心毒づいた。
 順当に考えれば、ほとんど無力で生まれるはずの第五世代が、超能力を使えるという。 分かっていたが、実際事実を突きつけられると苛立った。運命はとことん第四世代を小馬鹿にしたいらしい。
 だがしかし、個人的なねたみさえ除けば、そこそこ望んだとおりの結果といえる。
 彼が万莉亜の記憶を自力で消したのなら、その方がいい。アンジェリアやらヒューゴやらが絡んでいないという 僅かな希望にも繋がる。第四世代が勝手に奮起し、勝手に立ち上げた宗教まがいの団体ならば、潰すのも容易いし、 クレアたちにとって大した脅威にもならない。放って置いたっていいくらいだ。
「君、三井くん、だっけ」
 慣れない偽名にとっさに反応できず、一瞬きょとんとした後慌てて瑛士が春川に顔を向ける。 彼は瑛士に声をかけると、真正面からジロジロと少年の瞳を覗き込んだ。
「君、コンタクトレンズ?」
 心臓が大きな音を立てる。
「あ、……あの、はい。ド近眼なんですよね。ついでに連れも」
 そう言って遥か後方にいる恭士郎に振り返り指差すと、春川と五條が遠めにぽつんと立ちつくしている 恭士郎に注目した。今時中々お目にかかれぬ黒縁のビン底めがねだ。五條がクスリと笑いを零した。
「ダサいからコンタクトにしろって言ってるんですけど、ポリシーらしくて」
 冗談交じりにそう笑えば、春川もつられて笑いながら頷く。とりあえずはボロを出すこともなく 上手くかわせたらしい。ほっと安心しながらも、瑛士はなるべくその後も眼球を動かさないように努めた。 ちょっとした動作でコンタクトレンズがずれてしまうかもしれない。春川は次の話題に移りながらも、まだ瑛士の 瞳を気にしている。瑛士にはそれが分かる。彼は確信めいたものがあってそれを気にしているわけではない。ただ、 瞳を隠されることに敏感になってしまうのだ。気持ちは痛いほど理解できる。

「それでは皆さん揃ったご様子ですし、中央へ集まっていただけますか?」

 いつの間にか人が増え、ざわついていたパーティールームに、黒服の声が響く。
 壁際で五條らと談笑していた瑛士も、振り返って中央へと移動した。知らぬうちに増えていた人間のほとんどは、 何の特徴もない一般人ばかりで、そのほとんどが不安げに瞳を揺らせ、戸惑っている様子だ。おそらくはテストの合格者 たちだろう。親睦会と聞いてやってきたはものの、それだけであるはずがないと皆心のどこかで気付いている。
 その中の一人に、瑛士は目を見張った。
 可愛らしいピンクのワンピースを身にまとい、茶色の長い髪を耳の後ろで二つに括っている少女。 愛らしいという言葉がぴったりの彼女は、瑛士が気がつくよりも先にこちらに気がつき、呆然と言葉を失っていた。

――守屋詩織……!?

 彼女がこの団体の罠に引っかかっている事は万莉亜から聞いていたが、最終テストまで パスしていたとは初耳だ。興味もなかったし、まさか受かるとも思っていなかったので、予想だにしない 知った顔の登場に瑛士は戸惑った。
――……聞いてねぇぞ
 いくら万莉亜にしか興味が無いにしても、詩織は一応あの学園の生徒だ。保護すべき対象ではないのか。 今日のメンバーについては、念のためルイスが調べてあるはずだ。 が、守屋詩織については何も聞かされていない。まさか見捨てるつもりなのだろうか。
――ありうるな……
 リスクを背負うのを嫌う男だ。生徒一人切り捨てることにためらいなんてあるものか。
 しかし万莉亜はどうだろう。しつこいので話半分に聞いていたが、彼女は詩織を随分気にかけていた。 こんな場所に来て、怪しい集いに参加していると知ったらきっと心配する。

 そんな風に瑛士が混乱していると、意外にも詩織はふと表情を消し、それから視線を逸らした。
 おそらくは焦りを浮かべた瑛士を見て、何か察したのかも知れない。もしそうなら、頭のいい女だとほっと 胸を撫で下ろして瑛士も視線を逸らし恭士郎のほうへと歩き出す。
――参ったな……
 お喋りなシリルのおかげで詩織は瑛士が第四世代であることをすでに知っているはずだ。 今までは自分さえボロを出さなければいいと思っていたが、余計な心配をしなければいけなくなった。
――……ったく、どいつもこいつも
 馬鹿ばっかりだなと舌打ちをし、豪華な装飾をされた部屋の高い天井を見上げた。
 言っても分からないなら、もう進ませるしか道はないのかもしれない。どんな言葉にも耳を貸さないのなら、 いっそ落ちるところまで落ちて、その身をもって思い知ればいい。
 何一つ変わらないことを、それこそ、嫌というほどに。



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