すべてが本心ではない
時には偽りもこめられる
だから今は偽りの言葉に委ねよう
――――もう昔には戻れないから
かけがえのないあなたへ
拾弐話 かけがえのないあなたたちへ ―中編―
振動もなく、室温も適度に保たれている室内は快適といえる。
しかしそれとは対照的にアスカとレイには落ちつきが見られない。
二人の気持ちを知っていればそれは当然かもしれないが。
ユミからシンジの居場所を聞き、今はリニアを経由してそこに向かっている。
乗り込むまでは意気込みシンジを問い詰めようという気持ちでいっぱいだったが、いざ会う場面を思い浮かべると戸惑ってしまう。
あれだけ拒絶の態度をされていてまだ会いに行くのか。
彼も呆れてしまうだろうと。
それでも少女たちは会いたかった。
もう一度だけ、もう一度だけ会って話がしたい。
このまま終わりを迎えるのだけは耐えられなかった。
はぁとため息をついてアスカは隣に座っているレイを見る。
彼女はただじっと前を見据えていた。
少しの間をおいて、アスカの眼差しに気づき小首をかしげる。
「何?」
「何って言うか…随分と落ち着いているわね」
自分とは違い揺ぎ無い様子はとても羨ましい。
アスカはシンジに会うことに恐れを抱いていた。
また、拒絶の言葉を突き刺されあの痛みを再び味わうのではないかと。
「そんなことないわ…私は…怖い」
「レイ?」
「もう一度会いたいという気持ちに嘘はないけれど、拒絶されるのは嫌…いえ、拒絶されてもいいの……」
「何言ってるのよ!」
自分と同じように辛さに震えているレイの姿にアスカの心が痛む。
ああ、私は何をかってに思い込んでいたのだろうと。
だが、弱気を見せたまま『拒絶されてもいい』というのはいただけない。
自然と声を張り上げてしまう。
レイはそんなアスカから視線を外さず、じっと見つめる。
「私は碇君に拒絶されてもいい…だけど、私たちのことを初対面の人のように扱われることはもっと嫌なの。私は…私達を知っている碇君であって欲しいから……」
確かにそれは言える。
シンジはすでに自分たちのことをないものとして扱ってしまっていた。
出会った事などなく、ましてや話したこともない。
知らない存在としているのだ。
拒絶の証ということは容易に分かるが、だからといってはいそうですかと納得できるわけがない。
このままでいることはアスカにも耐えがたいことだ。
震えるレイをそっと抱きしめると、彼女はシンジに絶対に会うことを心に誓った。
リニアが第二新東京市に停車すると、すぐに二人は行動を起こした。
数分歩けばアメシストという店が見つかるとは言われたが、詳細な場所はわからない。
見つけるのに時間がかかるかなぁと思われたが道行く人に聞き、すぐに発見となった。
声をかけられた人たちはアスカとレイの存在に驚いていたのは余談である。
綺麗に掃除された店の前に立ち、ガラスから店の様子を覗う。
中ではシンジが食器を磨き、片付けをしていた。
幸いというか店の中には他に人が見られない。
アスカとレイは入口の前に一歩一歩確実に近づいていた。
だが、後一歩で入れるというところで立ち止まってしまう。
ここを抜ければシンジに会うことができる。
しかし、その後はどうなるかは分からない。
それが彼女たちを躊躇させていた。
(こんな気持ちじゃだめね)
ゆっくりと息を吸い込み、深呼吸を繰り返す。
パンと軽く頬を叩くと揺れ動く気持ちを静まらせ、彼女達は店内へと入っていった。
「いらっしゃいませ」
ドアが開く駆動音に反応してカウンターから声が届く。
客の顔を確認するとシンジの表情が一瞬驚きに彩られるが、すぐに営業で慣れた笑顔に変えた。
歩み寄って自分の目の前まで二人が来るが、表情は変わらない。
沈黙を保ったまま静かに時間は流れていく。
話したいことはあったはずなのに、いざ本人を目の前にすると言葉を紡ぎだすことはできなかった。
「ご注文は決まりましたか?」
「あ…えっとコーヒー…ってそうじゃなくて!」
違うのよ〜と一人騒いでいるアスカを見てシンジは少しだけ笑う。
彼とて本気で言ったわけではない。
平日のこの時間といえば二人ともまだ学校に通っているはず。
それをサボってまでここに来るということは、何かしらの用があってのことだ。
用というのも見当はついている。
自分に言いたい事があってのことだろうと。
ネルフや学校においてシンジは二人に自分の心を伝えた。
だが、それにくらべて彼女たちはほとんど何も言うことができなかったのだ。
一方的に話した彼とは違い、二人には言いたい事がある。
―――たった一つの思いを。
話の内容まではシンジは見当がつかなかったが、ちょうどいい機会だと思った。
はぐらかして、避けていては一向に展開が進むことはない。
たとえ一時的に二人をこの場から帰したとしても、またいずれ来ることは容易に予想できる。
それならばこれを期に全てを話そう…シンジは心を決めた。
二人の少女から視線を外すと店の奥のほうへと振り向く。
「ノブタカさん、お店のほう任せていいですか?」
「なんだって〜〜」
品物の在庫をチェックしていたノブタカが不満げな声をだしながら近づいてくる。
なにを寝ぼけたことを言っていると言わんばかりだ。
「雇われもんのクセしてまたかぁ?」
「え〜と、ちょっと訳ありな事情ができて…」
またというのは前回の弁当を届けに言った時のことだろう。
そこはあえて無視して、シンジはアスカとレイのほうを見る。
つられるようにしてノブタカの視線も移動した。
少しの間じっと二人の顔を眺めて、彼はぽつりと呟く。
「なんだシンジ、有名人とのデートがその訳ありな事情なのか?」
やれやれとため息を漏らされる。
何の根拠があってそう言っているのか困るし、勘違いされるほうはたまったものではない。
「何を言ってるんですか……」
「はっはっは、冗談だ」
「…………」
「確かに何か訳ありみたいだな。そちらのお嬢さんたちの思いつめた表情を見ればそれくらい俺にだって分かる」
呆れるシンジをよそにノブタカは少女たちを見ながら笑う。
「事情は分からんが、そんな雰囲気でいられたんじゃ他の客に迷惑だからな。さっさと用事を済ましてこい」
半ば強引にシンジはカウンターから押し出される。
マスターお墨付きの暇ももらったことだしと彼は一瞬レイたちに視線を向けて、出口へと歩き出した。
シンジの意図に気づき二人はそれを慌てるように追う。
三人の姿が視界から消えたことを確認するとノブタカは椅子に腰をおろした。
じっとシンジたちの行った先を見つめる目には、先ほどまでのからかった様子は微塵も感じられない。
「しっかりやれよ、シンジ」
ぼそっと呟くようにして放たれた言葉にはどんな思いがあるのだろう。
ただ彼はじっと見続けるのだった。
が、すぐに表情を崩し、
「それでも長い休憩…いやサボりだな。サボっていることには変わらん。明日はこき使ってやることができる……」
にやっと笑い、これで明日は楽ができるなぁと内心ほくそえむ。
……表情も笑ってはいるが。
ただでは何事も済ませない、意外と細かいノブタカだった。
店の中では迷惑がかかり、街中では騒がしいとシンジは自然公園へと向かっていた。
以前ユミと話したあの場所だ。
その後をアスカたちが見失わないようにとついていく。
まるで子犬がはぐれないかのように。
三人並んで…正確には二人の少女がシンジの一歩後ろをついていく形だが、その状態に彼は既知感を覚える。
「懐かしい…かな?」
「えっ?」
我知らず声に出ていた呟きが聞こえアスカは疑問の声をあげるが、なんでもないとシンジは笑顔で答える。
それに対し、普段の彼女なら気になることは猛追するところだが、やけにあっさりと引き下がった。
ささやかな疑問と言うこともあるが、わざわざ今聞く必要はない。
話ならこれからいくらでもできるのだ。
そんな彼女を尻目にシンジは懐かしいと言った今の状態を思い出していた。
学校からネルフへと向かっていた時、三人は一緒に行動することが多い。
その時のことに対し既知感を覚えたのだろう。
一人納得しシンジは黙々と歩き続けた。
段々と視界に入ってくる公園は人があまりいるようではなく、静けさを保っている。
ベンチは空いており、誰かが近づいてくる様子は窺えない。
だが、シンジは一瞥すると噴水があるほうへと向かった。
噴水の傍には向かい合うようにベンチがあり、それに挟まれる形でテーブルが置いてある。
カップルや家族といった人に使いやすそうだ。
だからこそシンジはこちらのほうを選んだのだろう。
三人ということを考えれば普通に置いてある一つのベンチでは話しにくい。
そうなることを考慮してのことだ。
彼がベンチに腰掛けると、向かい合うようにして二人も同じ行動をとった。
静寂の中、風で木々が揺れる音がやけに大きく聞こえる。
まるで静けさを嫌い、早く会話をしろと言っているように思えた。
「話があるんだよね…何?」
その口調はこれからのことに興味を抱いてないように感じ取れる。
早く終わらせようといった感じか。
しかしそこはあえて無視してアスカは用件を話す。
「シンジ…どうして私たちを遠ざける真似をするのよ」
「遠ざける…? 別にそんなことした覚えはないけど」
「だったらなんで学校であんなこと言ったのよ!」
シンジはアスカが指す言葉を思い浮かべ、ああ、あれかと理解する。
「初対面みたいに言ったのはユミちゃんに迷惑がかかると思ったから。遠ざけることを言ったかどうかはわかんないけどさ、僕はただ本音を言っただけなんだよ」
「なっ…!」
「まさか嘘を言っているとでも思っていたの?」
嘲りをこめながら口元を歪める。
アスカはあまりに辛辣な言葉に押し黙ってしまった。
「アスカだって僕のことが嫌いなんだからああ言われて清々してるだろ。綾波も僕に対してなんとも思っていないんだから気にしてないだろうし」
「そんなことないわよ!」
「私は碇君のことが…!」
席から立ち上がり必死の形相で詰め寄る二人を傍目にシンジは肩をすくめる。
「まさか好きとか言わないよね?」
先に言おうとしていた言葉を言われて二人は一瞬ぐっと詰まるが、気を取り直して少年を見つめた。
「そうよ、私はシンジのことが好き」
「私も…ずっと碇君のことが好きだったの」
男としては涙を流して喜ぶ場面だといえる。
二人の美少女に告白されて何も感じなかったら、それはそれで相当淡白だ。
一方レイたちも一番伝えたかったことを伝えられ安心していた。
多少ムードに欠けた告白となってしまったが。
「それで…どうしたいの?」
「えっ?」
勇気を振り絞って言った側とは対称にシンジの表情にはまったく変わりがない。
あまつさえ、要点が分かり難い質問をしてくる。
「だからさ、好きだからってその後どうしたいわけ? 恋人になってほしいとか?」
「え、あ…う、うん」
アスカにしては珍しく、顔を赤らめて小さく頷く。
そこに彼は軽い驚きを覚えるが、表情に出すことはなかった。
「自分で聞いておいて悪いけど、僕は二人のことが好きじゃないから付き合おうとかそういう気はないんだ」
と、シンジは少しだけ済まなそうな顔をする。
アスカたちのほうもその反応は分かっていたようで、大人しく座り肩を落とすだけだった。
普通ならどうしてと詰め寄るところだが、好かれるだけの理由がないことを分かっているだけにそれはできない。
思い返せば嫌われるようなことをした思い出ばかり。
後悔だけが心に残っていた。
報われぬ思いとして空しく消えていったが。
しんと、話が止まり僅かな騒音だけが聞こえている。
永劫のように長く冷たい緊張感のなか、ふとシンジは口を開いた。
「それに僕はもう誰も好きになる気はないよ」
その言葉を聞いたとき、レイの中で一人の少女が思い浮かんだ。
現在、唯一シンジの傍にいられる少女を。
「彼女は碇君にとって特別なの…?」
「彼女?」
「檜山ユミ…彼女なら碇君は好きになることが出来るの?」
質問の意味にシンジは少し考え込むが、ああそうかとその真意を理解した。
誰も好きにならない、そう言ったのに彼はユミを傍に置いている。
それがレイにとって彼女を特別だと思い込ませることになったのだろう。
他人からはそう思われるんだと、シンジは誤解を解くことにする。
「ユミちゃんも同じだよ。僕は彼女を好きになることはない。人間的な好きはあるだろうけど、恋愛の好きになることはないよ」
その返答にレイは安心するが、同時に自分に対し嫌なものを感じた。
相手の不幸を喜ぶようで、たまらなく嫌に感じる。
再び押し黙ったままの二人を見て、シンジはそろそろ頃合かなと思い始めた。
『今』を終わらせるにはちょうどいいと。
「だいたい、なんで二人は好きだなんて言えるわけ?」
突拍子もない発言に今度はアスカとレイが困惑する。
二人の表情を見てシンジは言葉足りずだったかと言いなおすことにした。
「え〜と、つまりね、なんで二人は僕のことを好きだなんて思っているのかなって感じたんだ」
「なんでって、あんた……」
「出会ったときは別に普通だったよね。けど、戦いが終わりに近づくに連れて僕とアスカの関係は悪くなっていった。それこそアスカは僕がいなくなってしまえばいいって言うほどに。綾波だって、父さん以外ではじめて近づいたのが僕だから興味をを示しただけだろ? そんな状態だったのにどうして好きだなんてことになるのさ?」
くしくもそれはアスカが思っていたことと似ていた。
違うのはアスカは自分のことを好きになってはくれないと思っていることに対し、シンジはアスカたちが自分をのことを好きなのはおかしいと言うことだ。
確かにそうかもしれないと思うところもあるが、それは気持ちの全てではない。
シンジに伝えよう、だが、それよりも先にシンジは続けた。
「二人の好きって気持ちは僕に対する罪悪感から来ているんじゃないかな。傷つけた、見捨てた、だから償いがしたい。それを好きって気持ちと勘違いしているだけだよ」
「碇君…どうしてそういうこと言うの?」
「ふざけたこと言わないでよ!」
辛辣な言葉に二人は怒りを感じ、そして涙が出そうになる。
勇気をもって伝えた気持ちは断られ、あまつさえその気持ちも勘違いとまで言われてしまった。
厳しい視線を投げかけシンジを見つめるが、彼の表情はまったく変わらない。
「それに、今更って感じなんだよね」
「今更?」
「僕はね、昔は二人のことを好きだったんだよ。思えば、贅沢な話だけど初恋は二人に対してだったと思う」
昔を思い出しているのか、懐かしそうな顔をする。
二人にとっては久しぶりの昔のシンジを思わせる表情だった。
だが、それは一瞬のことだ。
すぐに表情はもとに戻った。
「だけど関係が険悪になってきてからはもう、好きだとか嫌いだとかそういう次元じゃなくなってきたからね。僕は自分の気持ちに区切りをつけるために諦めることにしたんだ。だから僕にとって二人の気持ちは今更って感じしかしないんだよ」
「そんな……」
時間のすれ違いが気持ちのすれ違いになり、伝えた思いを断つ。
気付くのが遅すぎたことに二人は後悔するが、それもまた今更だ。
時が経っても伝わると思っていた思いはもはや意味をなさず、静かに消えてゆく。
「もう、いいよね」
そう言ってシンジは席を立つが返答はない。
ショックの大きさから二人には応えることも出来ず、ただ呆然と座ることしか出来なかった。
その様子に少しだけシンジは戸惑いを覚えるがやがて、静かにその場から姿を消していった。
後に残されたのは悲しみにくれる少女たちの寂しげな姿だけ。
―――時は残酷にも刻み続ける。
昼時にしては遅すぎ、夕焼けが出るには早い時間。
シンジが歩く街中は人の姿がまばらだ。
雑音が少ない今は彼の思考の妨げとならず、先ほどの光景を思い出させる。
二人に伝えられた思いは決して不快なものではなく、むしろ嬉しかった。
それなのに彼はその思いを無下に断った。
受け入れてしまえば互いに幸福が得られるかもしれないのに。
そうしなかった理由はシンジの心に原因があった。
満ち足りたとまでいかなくても、不満が少ないこの世界では自分の存在は不協和音しか生みださない、そう思い込んでいる。
特にネルフの関係者に至ってはそれが切実な問題だろうと。
口ではどんなに言い繕っても、何かに亀裂が入ってしまう。
そこには昔のシンジを知っている、彼に何も出来なかったことに対する罪悪感があるからだ。
アスカは自らが向けた言葉に罪悪感を感じるように、レイもユイもミサトも他のメンバーたちも罪悪感を持つ。
それが全てではないとはいえ、シンジはそうであると思い込み譲らない。
頑な原因はそこに集約されていた。
ぼうっと考え事をしながら歩いていると、いつのまにかアメシストへとたどり着いていたことに気付く。
仕事に戻ろうかと思ったが、すぐに動こうとはせず店をじっと見つめた。
今は見慣れた店。
しかし、ここにいるのも限界だろうと思い始めていた。
ネルフには知られてしまっているし、自分の存在が何かと迷惑にかかるときが来るかも知れない。
寂しくはあるがそれも仕方ない、すっかり慣れてしまった思いが胸を支配した。
「なにやってんだよ、シンジ」
「…あ、ノブタカさん……」
「店の前にぼうっと突っ立っている暇があるなら仕事をしやがれってんだ」
「そうですね」
言われるがすぐシンジは店に入っていった。
その後姿を見ながらノブタカは僅かな違和感と何かを感じ取っていた。
店が終わるなり店内の掃除をはじめる。
シンジにとってはすっかり慣れてしまった作業だ。
「これで終わりっと」
テーブルを吹き終わり、肩をこきっと鳴らす。
次は夕食の準備でもしようか、と思った矢先、いつの間にかいたノブタカの姿に気付く。
「なにやってるんですか?」
手伝いもしないでという意味も込めているのだが、いつものような反応が見られないことにシンジは不思議に思う。
「ノブタカさん?」
「シンジ、ここから出て行こうかと考えてないか?」
いつもとはまた違う、真面目な顔をしているノブタカの言葉にシンジの眉が僅かに動く。
どうして分かったんだろうと内心はかなり焦っていた。
誤魔化してもいいのだが、この晩の雰囲気はそれをしてはならないような気がした。
いずれは別れの時が来る、それならば丁度いいだろうとシンジは素直に頷く。
「やっぱりな…」
「それにしてもよく分かりましたね」
「まぁ、なんとなくってやつだがな。最近はお前の様子がおかしかったし、妙に店を見ている時もあったしな」
かないませんね、とシンジは小さく笑う。
「本当に出て行く気か?」
「ええ、そろそろ頃合かなって思っていましたし」
「だったらユミにしっかり説明していけよ。あいつは、その…」
急に口を濁らせ、言い難そうになる。
シンジがじっと見ているとええいままよ、と決意を固めたように続けた。
「親としては気に食わんが、あいつはお前に惚れているからな。適当なことを言うのは許…」
ドサッ
何かが落ちたような物音が入口から聞こえ、二人が振り向くとそこにはユミの姿があった。
傍らには音の原因であろうバッグが落ちている。
話に集中しすぎていて彼女が帰ってきたことに気付いていなかったのだろう。
「ユミ…」
「ユミちゃん…」
彼女からの反応はなく、ただシンジのみを一点に見つめている。
顔色は見て取れるほど悪く、唇が震えていた。
「嘘…だよね」
囁くような小さな声。
力なくシンジに近づくと服をぐっと掴み先ほどより大きな声でまくし立てるようにする。
「…嘘だよね。出て行ったりしないよね?」
否定できないだけにシンジはすぐに答えを返すことが出来なかった。
それがさらにユミを揺るがし、涙をこぼすようになる。
「ねぇ…嘘だって言ってよ! 出て行かないって…言ってよぉ…」
叫ぶのも辛くなったのかやがて言葉が放たれることはなくなり、シンジの胸に顔を埋めると嗚咽を漏らし始めた。
(僕は……)
シンジの手はユミの背中の後ろを空しくさ迷う。
抱きしめてしまえば彼女の言葉を肯定し、このまま抱きしめなければそれは否定を表す。
結局、この夜は答えが出ないまま時間だけが空しく過ぎていった。
確かな、大きいわだかまりを残したまま。
あとがきというなの戯言
O:120000記念、と。
S:なんだか終わりが近づいている感じだ。
O:そうだろう、そうだろう。まさしくお決まりのごとく展開が荒れる。
S:どうなっても僕は知らないよ〜
O:ユミ×シンジと思いきや、早くも問題勃発。
アスカもレイもへこみっぱなしといい感じ〜〜〜
A:ほほぅ(怒)
R:そう、よかったわね(怒)
Y:出番が少ない上にこれですか(怒)
O:びくっ!
S:き、来ちゃった……
A:さ〜て、説明してもらわないとね〜確かこの話は前後編で終わるんじゃなかった?
R:前回のあとがきで確かにそう言っていたわ。
Y:証拠は上がっています。証人も全国各地にいるんですよ。
O:だ、だって仕方なかったんだい!書けば書くほどに容量が上がっていくから…
素人だからきっちり容量内に終わらせられないんだい〜〜〜(泣)
Ri:無様ね。
S:誰か違う人物がいたような…
O:そんなわけで次は後編、そしてエピローグと来て完結なのです。
今度はきっちり終わらせてもらうです、はい。
A:もち私とのハッピーエンドよね。
R:サルに用はないわ。私に決まっているの。
Y:やっぱり若い私が一番ですよ〜お・ば・さ・んは用済み♪
A・R・Y・:バチバチッ(火花散る)
O:ど、どうしましょ……(汗)
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