好きって何?
親愛の好き
恋愛の好き
どう違うの?
私には分からないもの。
かけがえのないあなたへ
第弐話 それぞれの人生
時が止まらないように人の歩みも止まらない。
一人の人物がいなくなったからと言って、時間は止まらないのだ。
シンジに関わった人物にもそれは言える。
心配してはいるが自分たちの人生がある。
いつまでも一人のことばかりに集中して入られない。
そして、しだいに少年のことは忘却の彼方へと追いやられていくのだった。
2017年
綾波レイはユイとゲンドウに引き取られ、一緒のマンションに住んでいた。
外見こそ変わったがレイは相変わらずレイのまま。
だが、それでも二人との生活により昔よりは性格が良くなった。
特にユイからの影響が大きいだろう。
あれこれと世話をやいてくれ、服装や女性のたしなみについて教わったりしていた。
アスカをはじめ、さまざま友人とも打ち解けていき人としての楽しみを分かりはじめている。
ただそんな満ち足りた生活の中、一つだけ欠けているような気がしていた。
夜も更け闇の静寂が支配をはじめる頃にレイは自分の部屋へと向かっていた。
あとはもう寝るだけ。
しかし、自分の部屋にたどり着く前にある部屋で足が止まってしまう。
ドアの前にはプレートが飾られていた。
『ikari sinji』
細い指がドアへと伸び、ゆっくりと開く。
目に映るのは綺麗にされた備品の数々。
そこには人の気配がまったくしていなかった。
あるものはミサトのマンションから持ち出されたシンジの所持品。
主を無くした数々はただ寂しげに佇んでいた。
いつか戻ることを信じてユイはこの部屋を用意している。
思いも空しくそれは叶っていないが。
ベットに近寄り、乗せられている毛布に体を包む。
静かに横たわり今はいない人物に思いを寄せる。
こうしていればシンジの存在を感じ取れるような気がした。
新しい毛布にはぬくもりがあるわけでもなく、ひんやりとした冷たさしか感じない。
それでもここにくるのはやめないでいる。
このことをユイに気づかれた時、
『レイちゃんはシンジのことが好きなのね〜』
などと言われからかわれた。
しかし、レイには分からない。
『シンジが好きかどうか』ということが。
友達との会話の中にそういった話が出てくるときもあったが加わることができなかった。
ユイに対する好き。
アスカに対する好き。
シンジに対する好き。
違いを分かることができない。
そのためにはあまりにも心が幼すぎたから。
でも、漠然とした感じだがシンジに対する好きは他の人と違うような気がしていた。
気になる存在。
結局その答えがわからないままレイは眠りへと落ちていった。
アスカはキョウコといっしょに住んでいる。
両名共に待ち望んだ親子の生活。
それはとても満たされていた。
キョウコにとって一つ気がかりなのはアスカがシンジの話題を避けること。
その名を聞いては顔を辛そうにする。
理由は分かっていた。
アスカも分かっている。
一方的な言いがかりで傷つけ、憎んだ。
その一方、好意も抱いていた。
セカンドチルドレンのアスカでもなく、大学を卒業したアスカでもなく、普通の女の子として自分を見てくれていた。
どこか自分と同じ感じをしていた少年。
だから憎んでしまった。
愛憎は表裏一体という。
余裕がなく、視野が狭すぎた自分がアスカは恥ずかしかった。
エヴァがなくても他にも道はあった。
それに比べてシンジはどうだろう?
秀でた才能があるわけでもなく、それこそ褒められることがエヴァの操縦。
両親の愛情を受けずに育ち、唯一の肉親であるゲンドウに振り向いてもらうためにエヴァに乗り続けた。
結局その気持ちさえも利用され、裏切られてしまう。
何もないのはシンジのほうだった。
だから…自分はどうしたいのだろう?
謝りたいのか、気持ちを伝えたいのか…
それは会って見なければ分からない。
葛城ミサトは加持リョウジと結婚をした。
皆に祝福されて結婚式は壮大に挙げられる。
結婚した今は主婦になる…と普通は思うが、あのミサトがそうなることは無理であり、当然家事一切は加持がやっていた。
幸せで健康的、なおかつ文化的である生活を送るには仕方ない。
死活問題なのだ。
仕事も二人とも相変わらずネルフに関わる生活をしている。
ミサトは慣れない手付きでキーボードを操作し事務処理をし、加持は保安、諜報と忙しい。
その二人にとっても気がかりなのはシンジ。
加持は割り切ることができてもミサトには無理だ。
家族と称したにもかかわらず、肝心な時には助けることができない。
かと言ってエヴァのパイロットとしても接しきれていない。
自分の中途半端さがシンジを追い込んでしまった。
今シンジが戻ってきたとして自分はどうするのだろう。
それは自分さえも分からない。
青葉シゲルは伊吹マヤと結婚した。
日向マコトはミサトを結婚を気に諦め、仕事へと勤しんでいる。
元々真面目な性格な上、信頼を置ける人物なので職場での評判は高い。
影ながら好意を抱いている女性も少なからずいた。
冬月コウゾウは相変わらず副指令として補佐に回っている。
ユイが戻ってきた今、特に望むものはない。
マヤたちはシンジを戦場に送り出したことに罪悪感を持っているが、冬月はすでに割り切っている。
怖いとすれば、ゲンドウと共にシンジに対してしてきたがユイにばれてしまうことだけだ。
ゲンドウも今の生活には満足している。
ユイがいる…それだけでいい。
レイが加わったこともたいした問題とはしていなかった。
この男にとってはユイの存在が絶対であり、他のものは必要としていない。
妻のためにサードインパクトを起こす男なのだから。
今更シンジが戻ってきても邪魔なだけだった。
ユイはシンジに注げなかった愛情をレイへと向けている。
明るい未来を残すために、シンジに未来を残すためにエヴァへと関わったのに結局はシンジを苦しめる結果となった。
自分の描いた未来とは大きく違うことに落胆しながら、今はただシンジを待つばかりだった。
赤木ナオコ、リツコの両名はMAGIによるシンジの捜索に忙しい。
シンジを示すデータはまったく残っておらず、作れたものはせいぜい顔のモンタージュ。
これだけで探すのは困難を極めた。
世界中の各支部によって捜索されてはいるが、この2年間何の手がかりもない。
自然とため息も出てしまう。
尤もため息の原因は他にもあるのだが。
ゲンドウのことを諦めた今、ナオコがリツコに結婚の話ばかりをする。
孫の顔はいつ見れるだとか、もう32なんだからとかきりがない。
自分とあまり年が離れていない母親に悩まされていた。
皆が満たされた世界の中、ネルフの人々は一部を除きシンジのことを気にかけている。
戻ってきたところでどうするというわけではないのだが。
ある日、帰りを待つ人々にリツコの口から吉報がもたらされた。
『シンジが見つかった』
と。
それは幸せの始まりであり…不幸の始まりでもあった。
あとがきというなの戯言
O:うむ、20000HITだよ。
S:僕が名前ばかりで少しもでてこないけど?
O:まぁ〜いいじゃん。
S:いいわけないじゃないか〜
O:今回はみんな会話もなくただ淡々とその後のことしか書いていない。
S:手抜き?
O:違うわい!
S:…………
O:はっはっはっ、次はめいいっぱいシンジが出るって。
S:ほんと?
O:すごくね。しかも全員に対して毒吐きまくり。
S:え〜
O:omiが溜まりに溜まった鬱憤を吐きまくり。
終局での感想メールでさんざん鬼、悪魔呼ばわりされたから爆発です。
ネルフの大人は嫌いじゃないけど、これでめいいっぱい言いたいこというよ。
S:それ言うの僕じゃないか…
O:気にしちゃダメさ。さらば〜
S:あ、逃げた!
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