求めない結託 〜第十一章:許諾〜


<<第1章  <<第2章  <<第3章  <<第4章  <<第5章

<<第6章  <<第7章  <<第8章  <<第9章  <<第10章  *第11章*





「それじゃあまずは、誰の情報を知りたいのか教えてくれるかい」

「――中森警部」

「……中森……警部?」

 コナンの言葉に、望月は意表を突かれたように目を丸くする。

「中森警部と言うと……怪盗キッド専任の?」

「うん。その警部さん」

 言いながら頷くコナンを望月は困った様子で見返した。

「いや、それは……」

 独り言のように呟くと、少し考え込むように顔に手を当てる。
望月のその様子を見てコナンは厳しそうに眉をひそめた。

「……やっぱり難しそう?」

 尚も、少し考えている様子の望月に、コナンは遠慮がちに言う。
その質問に望月はコナンへ視線を戻すと、無言で首を横に振った。

「いや、そういうのではなくてね。
 ただ……コナン君なら知っていそうな気がするんだが、中森君は今ここでは働いていないんだ」

「うん。知ってる。今は警視庁捜査二課にいるんだよね」

「そうだ」

 望月は大きく頷きながらそう言った後、不思議そうにコナンを見る。

「……でもそれを分かっているなら、ここではなく警視庁へ頼みに行くべきだと思うんだがね」

「それだとダメなんだ」

「……ダメ?」

 言いながら首を左右に振るコナンに、望月はますます不可解そうに首を傾げる。
どういうことかと続けられた問いに、コナンは一度ゆっくり息を吐き出すと、望月をまっすぐに見た。

「中森警部がここで働いてた時、キッド以外の事件を担当してた期間があるんでしょう?
 ――その時に捜査してた事件の資料が見たいんだ」

 思いもよらないコナンの言葉に、望月は呆気に取られて声を失った。
まるで、訳あって今日ここに来た、ということを言い当てられた時のコナンのように、望月は声にならない声を出す。
それでも何とか取っかかりを掴もうと、望月は右のこめかみに片手を当てて考えるようにしばらく目を瞑った。

「…………ちなみに、コナンくんはそもそもどうやってそれを知ったんだい?
 中森くんがキッド以外の事件を扱っていたことは、時期を考えても誰かから訊くしかないだろう?
 仮に調べたとすれば、今回知りたいことも、ある程度は一緒に調べられたはずだし、
 それならわざわざここに来る必要はないだろうしね」

「あー……えーっと、ねぇ……」

 ようやく言われた望月の言葉にコナンは思わず苦笑いを返した。――中森と親しい怪盗キッド本人からです、とは到底言えまい。
とは言え、コナンとしても何故快斗がその事情を知っているのかは聞かされていないも事実で、正確な答えが言えるはずもない。
説明の仕方にしばらく悩んだ後、眉間にシワを寄せながら、コナンは人差し指で頬をかいた。

「……正直言うと、僕もあんまり詳しくは知らないんだけど、
 言えるのは、昔から中森警部と親交のある、知り合いのお兄さんから訊いたってことくらいかな」

「お兄さん……?」

 コナンの言葉に望月は意外そうに目を丸くする。その後、何か考えるように天井を見るが、すぐにコナンへと視線を戻した。

「念のためなんだが、君がこの件を調べていることを中森くんは知っているのかい?」

「うーん……」

 続いた望月の質問にコナンは悩む様子で小さく唸った。――調査を始めた頃に中森が風邪で倒れたのだ。知っているはずはない。
だが、コナンがここに来たことを含めて、中森へ伝えておくと言った快斗の発言から、事後報告は確実にするだろう。
快斗から聞く中森との関係を考えれば、それに対して、無茶をしたことへの咎めはあれど、調べたことへの反発の可能性は低いはずだ。
しかしながら、現時点で中森のあずかり知らぬところではないと言ってしまうと、さすがに心象は良くないだろう。
――だが、嘘を言うわけにも行かない。

「……まだ知らない、かな」

 散々悩んだ末にコナンは言いづらそうに答えた。

「まだ、というなら話す気はあると?」

「うん。ちゃんとその予定はあるんだ。
 ただ……その……今はちょっと……中森警部と連絡取れないから、正確に言うと何も出来てないんだ」

「……なるほど」

 望月はコナンの言葉に大きく頷きながら呟くように言うと、意味ありげな表情をコナンへ向けた。

「――ところでコナンくん。
 その言いようは、中森くんと連絡が取れない理由を知っていて、わざと連絡をしていないということかな?」

「え……!?」

 思わぬ質問にコナンは短く声を上げた。――どうやら、言葉を選びながら話すコナンの様子に、望月は何かを感じ取っていたらしい。
唖然として自分を見返すコナンに、望月は口元で小さく笑う。

「ニュアンスとしてね、何となくそう思っただけだ。
 ……ちなみに、連絡をしない理由もしくは連絡が出来ない理由を訊いても大丈夫かい?」

 驚いたまま何も言わないコナンの反応を肯定と取って、望月は話を続けた。

「それは……」

 コナンは望月の言葉に、開きかけた口を閉じる。
――正直なところ、中森の入院先がバレていることや、既に誘拐されている時点で、
犯人の関係先である警察へ多少話をしたところで何も変わらないだろう。
だが、全貌が一切分かってない現状では、下手に話すのも憚られた。

「……まだ……話して良いかの判断がつかないんだ。だから……今は話せない」

 言葉を選ぶように答えたコナンの発言に、望月は息をつきながらコナンを見返した。

「それじゃあ最後の質問だ。――具体的には何の情報を知りたいんだね?
 一口に中森くんがキッド以外の事件を担当していた時期と言っても、かなり長い。例えば期間の指定はないかね?」

「……期間の指定はむしろ出来ないかな。時期とか全く分からないから……。
 それに期間が絞れるかどうかも分からないんだ」

 コナンは難しそうに眉を寄せると顎に片手を当てた。

「……一つ分かっているとすれば――瀬野聡」

「セノは普通に瀬野だろうが、サトシはどんな字だい?」

「聡明の聡」

「瀬野……聡?」

 不思議そうに首を傾げて言う望月に、コナンは無言で首を縦に振った。
――瀬野聡。快斗に調査内容を話すため、訪れたブルーパロット、そこから出た際に追いかけてきた車の運転手の名前だ。
運転手を警察へ引き渡す前に、念のために確認した免許証に書いてあったものである。

「でも、そもそもその人が関わってる事件なのかすらも分からないんだ」

 犯人は少なくとも三人という見立てな上、
その内の誰か一人だけが中森に恨みを持っているのだとすれば、それが運転手であるという確証は全くない。

「大体の年齢は分かるかい?」

「確か今年……三十二歳だったはず」

「……割と若いね。――ちなみに事件の内容に心当たりは?」

 望月の言葉にコナンは首を横に振る。

「それが知りたくてここに調べに来たんだ。――詳細を解こうにも明確な情報が必要だったから」

「……そうか」

 恐らく膨大にあるであろう資料探しのとっかかりが欲しかったのだろう。望月は残念そうにため息をついた。
その反応を申し訳なさそうに見るコナンだったが、直後、何か思い出した様子で小さく声を上げた。

「……関係あるかどうかの確証がなくても良いなら、『車』かな」

「車?」

「人が絡む――例えばひき逃げとか当て逃げとか、車が原因の事故か事件。
 深い意味がない可能性も十分あるけど、関連性がありそうな内容はそれ位しか思いつかないかな」

 コナンは首を傾げながら半信半疑で話す。
そもそもの始まりは、中森の娘である青子がひき逃げに遭ったことだ。
中森が受け取った脅迫文にあった『過去の恩恵』は、明らかに中森への恨みを示すものだろう。
単純に中森への恨みなら、本人へ何らかの攻撃を仕掛ければ良い。
にもかかわらず、先に娘へ危害を加えたということは、そこに何らかの動機があってもおかしくない。

仮に先に娘へ危害を加えた理由があるとすれば、それこそ誘拐をして殺すという手段も取れたはずだ。
それをわざわざ不確実なひき逃げという選択を取ったことは、少々気になる点ではある。
だが、中森への精神的ダメージを与えたいだけの動機であるなら、ひき逃げをした理由にそこまでの意味はない。
その明確な意図が分からない以上、下手に関係があるとも言い難かった。

 答えたものの、しかめ面のまま釈然としない様子で考え込むコナンを見てから、望月は畠中へと視線を向けた。

「――畠中くん」

「はい」

「私の机の一番上の引き出しに地下資料室の鍵がある。悪いが取ってきてもらえるかな?」

「え……?」

 驚いた様子で望月を見返す畠中に、望月は無言で頷いた。

「大丈夫だ。構わない」

「わ……分かりました!」

 少し動揺しながら、畠中は足早に第二応接室を後にする。
それを見届けてから望月は、目を見張っているコナンの方を振り返った。

「申し訳ないが、資料室に同行させることは出来ん。ただ、可能な限り資料は探してみよう」

「……良いの?」

 動揺と遠慮が混ざったような口調で訊くコナンに、望月は優しく微笑みかける。

「誠実さが伝われば悪いようにはしないと最初に約束しただろう?」

「……でも、調べることへの肝心な理由は言えてないよ?」

「そうだね。――確かにそれに関しては、知りたくないといえば嘘になる。
 実はね、コナンくん。本来なら今晩、私は中森くんと飲む予定だった」

「へ……?」

 思わぬ言葉に、コナンは間の抜けた声を出した。

「だが、詳細を確認しようにも、連絡がつかなくてね。
 警視庁へ連絡をしたところ、一昨日から体調不良で登庁していないという。
 しかしおかしなことに、自宅へ電話をかけても誰も出ない。休日だから娘さんはいると思ったんだが――」

 キョトンとして自分を見るコナンを、望月は意味ありげに見る。

「君が何か理由があって中森くんへ連絡をしていないと知って、一定の納得が行った。
 それと同時に、コナンくんの発言内容にも信憑性が増したんだ。――少なくとも私の中ではね。それだけの話さ」

 そう言ってニッコリ笑う望月に、コナンは安心したような笑みを浮かべた。

「……ありがとう」

「ただね、コナンくん。事が落ち着いてからで構わない。可能であれば理由を教えてくれるかな」

 その言葉にコナンは望月を不思議そうに見てから、少し困ったように笑う。

「それは中森警部の了解が出たらかな」

「中森くんの了解?」

「うん。……正確に言うと実は僕、部外者なんだよね。ただの調査員みたいなもんだから」

 コナンの言葉に、望月は意図が掴めない様子で顔をしかめて首を傾げる。
その後、詳細を訊こうとした望月の元へ、鍵を取りに行っていた畠中が戻ってきた。

「――署長、鍵お持ちしました」

「ん? ああ、ありがとう」

 顔を見せた畠中に短く礼を言うと、望月は肩をすくめて扉の方へと歩き出す。
ちょうどドアの所まで来ると、その望月はコナンを振り返った。

「それじゃあコナンくん。悪いがしばらくそこで待っていてくれるかな」

「……うん」

 コナンの返事を確認してから望月は軽く会釈を返すと、そのまま後ろ手でドアを閉めた。

「畠中くん。悪いが少し手伝ってくれるかね。何せ資料が膨大にある」

「それは構いませんが……でも署長、良かったんですか?」

「ん?」

 望月は畠中から鍵を受け取りながら、資料室へと歩き出した。その横を歩く畠中は少し戸惑いがちな望月へ尋ねる。

「昔のとは言え、一応捜査資料ですよ? 機密情報じゃ……」

「そうだね。正直褒められたものではない」

 頷きながら言った望月は、話す内容とは裏腹に、愉快そうな笑みを浮かべる。それを見た畠中は望月の様子を訝しげに眺めた。

「……楽しそうですね?」

「そういうわけじゃないさ。――ただ少し興味深くてね」

「興味深いって……コナンくんがですか?」

 不思議そうに訊く畠中に、望月は意味深長に笑う。

「畠中くんは何も思わなかったかい?」

「……そりゃあ、小学一年生であれだけ落ち着いて、淡々と質問に答える様は大したものだと思いますけど、それでも子供ですよ?
 いくら署長と中森警部が親交があると言ったって、過去の捜査資料を見せたと知ったら、渋い顔をするんじゃないですか?」

「おや? 畠中くんは知らないのかね、コナンくんのことを」

「――まさか! 初対面ですよ!?」

 おどけた調子で言われた言葉に、畠中は面食らったように首を素早く左右に振った。その様子を見て可笑しげに笑う。

「奇遇だね。私も初対面だ」

「え? ……あれ? でも――」

 思わぬ返事に畠中はますます目を丸くした。
だが、それには構わないで、望月は目の前の資料室の扉を開けて中へと入った後、呆然として通路に立ったままの畠中へ室内から声をかけた。

「畠中くん。資料室に着いたぞ。中へ入りなさい」

「あ、ああ……はい……!」

 言われて気づき、畠中は慌てた様子で資料室へ入ると扉を閉めて望月の方へと小走りにやってくる。

「……でも署長、署長も初対面なら何を知っているんですか?」

 不思議そうに訊く畠中に望月は小さく笑うと、畠中の右肩をポンと叩いた。

「君は警官としてまだまだだね。観察眼が足りていないようだ」

「え?」

「たまに顔を見せに、中森くんが来る職場で働いている同業者としては、知っておいて欲しいところなんだが――」

 要領を得ない望月の言葉に、畠中の顔は一層百面相と化した。それを見ながら、望月はスマホを取り出すと何かを調べ出す。

「――江戸川コナン、帝丹小学校。
 以前、下校直後に受けていたインタビューがテレビで流れていたこともあるだろう?」

 そう言うと、望月はスマホの画面を畠中へと向ける。画面に映っているのは写真付きのニュース記事だ。

「――キッドキラーくんだよ。中森くんとは普通に面識がある。
 キッドの犯行後に会うと話題に出すぐらいだ。少なくとも、渋い顔はせんだろう?」

 画面を見ながら、ようやく合点がいった様子で畠中は短く声を上げた。それを見て望月はスマホをスーツの内ポケットへと戻す。

「既に面識があり信用もされているのなら、
 わざわざ断られる可能性の高い警察へ資料探しに来ずとも、本人へ確認すれば良いこと。
 連絡先だって知っているだろうしね。
 ――要は、中森くんへ連絡出来ない理由が、今回調べたがっている事件に関係している確率が高い」

 言いながら望月は資料室の奥の方へと歩いて行く。それを見て慌てたように畠中は後を追った。
望月はある一角で足を止めると、棚に挿してあるバインダーの背表紙を確認しながらゆっくりと歩く。

「ということは……中森警部が何かの事件に巻き込まれていると?」

 驚いた様子で言う畠中に、望月は無言で頷く。その反応に畠中は首を横へ振った。

「いやいや! そうだとしたらおかしいでしょう!?
 いくらキッドキラーと呼ばれているとしても、現役刑事が巻き込まれる程の事件に子供が関わるなんて――」

「中森くんがキッド捜査から離れていたのは、ここの棚周辺にある八年間の資料だ」

「……え?」

 急に脈絡のない話に変わり、畠中は訳がわからず目を丸くする。

「中森くんがキッド捜査を離れていた時のことを、昔から中森くんと親しいお兄さんから聞いたと彼は言っていたね」

「そう……ですが、それが何か?」

「その彼じゃないのかな、コナンくんに協力を仰いだのは」

「……小学生にですか?」

 信じがたいと言った様子で目を見開く畠中に、望月も複雑そうに首を傾げる。

「まあ、そこは私もよく分からんが、本来は部外者と言っていたコナンくんの発言的にそうなんだろう」

「……仮にそうだとして、ならどうしてその『お兄さん』がそんな調査をしてるんでしょう?」

 不思議そうに訊いた畠中の言葉に、望月は考え込むように顎に手を当てる。

「……もしその『お兄さん』が年代的に考えて、娘さんの同級生の男の子だとすれば、
 中森くんが巻き込まれた事件の何らかの事情を知っていた可能性が高いだろうね」

「……ただの同級生が、そこまで複雑な事情を知り得るものですか?」

「――いや。その青年が小さい時から知っているようでね。
 中森くんとしては息子みたいなもんだと言っておったし、むしろ私よりも親しいんだろう。
 手品が得意だそうでな、マジシャン目線でキッドの犯行パターンを読めないかと、アドバイスを求めたこともあるらしい。
 多分その時にコナンくんと顔を合わせたんじゃないかな」

 そう言うと望月は、手近に挿してあるバインダーを複数冊手に取って畠中へと渡す。
その行動に首を傾げながらも畠中は両手で受け取るが、望月はさらにバインダーを五冊ほど手に取った。
それをそのまま何も言わず、近くのテーブルへと置きに行く。
そしてその後すぐに、先程抜いたバインダーの隣にあった別のバインダーを同じくテーブルへと持って行った。

 その動作にようやく合点が行った畠中は、先程手渡されたバインダーをその近くへと置き、
望月と同じく棚へ戻りバインダーをテーブルへと運ぶ。
その作業を黙々と繰り返し、最終的にはテーブルの上には七十冊程のバインダーが積まれていた。
望月は大きく息を吐き出すと、右手を左肩の上に置き、軽く左腕を回して、畠中を見やる。

「――仮に全ての推測が正しいとして、その青年が今コナンくんに同行していないということは、
 コナンくんと別れたその足で敵の本拠地へ向かった可能性がある。
 だが、コナンくんがここへ来たと言うことは、真相は分かっていない状況だ」

「でもそれって犯人が分かってないってことですよね? なら、本拠地に向かいようがないんじゃ?」

「いや、恐らく何処かで犯人に接触する機会があったんじゃないかと私は睨んでいる。
 コナンくんがそれを知っているかは分からんが、少なくともその青年は居場所が分かっているからこそ、別行動を――」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 淡々と話す望月の言葉に、畠中は焦った様子で口を挟んだ。

「仮にそうだとすれば、早く犯人を見つけて居場所を聞き出さないと大変なことになるんじゃ……!」

 慌てる畠中とは対照的に、望月は落ち着き払った様子でゆっくり頷いた後、テーブルに積まれたバインダーへ目をやった。

「そうだ。だからここから、あるかも分からない手がかりを捜さなければならん。
 まあ、全てが中森くんが絡んでいる事件というわけではないから、見かけよりはマシだが、途方もない作業だ。
 ――頑張れるかね?」

 その言葉に、畠中はテーブルのバインダー群へ目を落とす。その圧倒的な量に、一瞬尻込みするが、すぐに首を左右へ振った。

「やりましょう!」

「心強い返事だな」

 両手でガッツポーズをして気合いを入れる畠中を望月は笑って見ると、近くの椅子へ腰を下ろす。

「キーワードは『瀬野聡』 犯人の名前とは限らない。事件関係者の全員の名前も見るように。
 それから今年三十二歳となると、最少で二十四歳。関係者が全員四十歳以上の事件は外して良いだろう。
 後、事件絡みで恨みを持たれている可能性を考えると、あっさり解決した事件も外して良い。
 警察との確執が生まれそうな内容なら特に気をつけて、事件の前後で環境の変化が見られそうな事件は少し気にしてくれ」

「……犯人が現在も服役中の場合はどうしますか?」

 畠中の言葉に、望月は少し悩んだ様子で小さく唸った。

「その場合、今回の犯人は親族の可能性が高いが……。
 とりあえず付箋だけ付けて後回しにしよう。数を見るだけでかなりかかるだろうからな」

「分かりました」

 言いながら頷くと、畠中も椅子へと腰を下ろす。

「よし。それじゃあ始めよう」

「――はい!」



<<第1章  <<第2章  <<第3章  <<第4章  <<第5章

<<第6章  <<第7章  <<第8章  <<第9章  <<第10章  *第11章*

*作品トップページへ戻る* >>あとがき(ページ下部)へ




レンタルサーバー広告: